豪州の政治家や報道機関、フェイスブックのニュース閲覧制限に反発

　米フェイスブックがオーストラリアでニュース記事の共有や閲覧を全面的にできなくしたことについて、報道機関や政治家、人権団体から批判の声が上がった。写真右はフライデンバーグ豪財務相。１８日キャンベラで撮影（２０２１年　ロイター/Mick Tsikas）

［シドニー　１８日　ロイター］ - 米フェイスブックがオーストラリアでニュース記事の共有や閲覧を全面的にできなくしたことについて、報道機関や政治家、人権団体から批判の声が上がった。

新型コロナウイルスのパンデミック（世界的大流行）や夏の森林火災が深刻化した際にもフェイスブックが保健および気象当局が提供するコンテンツの閲覧や共有を制限したことを引き合いに出して同社の対応を問題視する向きが多い。

フェイスブックは同社とアルファベット傘下のグーグルに対し豪メディアへの記事使用料支払いを義務付ける豪政府の法案に強く反発している。

フライデンバーグ豪財務相はテレビ中継された記者会見で「フェイスブックは間違っている。不必要で高圧的な行為で、オーストラリアでの評判を傷つけることになる」と強調した。

同法案を巡り週末に同社のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者（ＣＥＯ）と電話で協議したが、ニュースコンテンツの閲覧遮断について何も警告していなかったと不満をもらした。

ただ、１８日午前に再び協議したのは「建設的」だったとし、新法がどのように機能するかの「異なる解釈」について議論したと明らかにした。

＜空白のページ＞

フェイスブックが行った変更により、メディアのページは空白となり国内ニュースをシェアする個人の投稿も削除された。

豪メディア大手ナイン・エンターテインメント傘下のシドニー・モーニング・ヘラルド紙のリサ・デイビース編集長はツイッターに「偽情報、危険な急進主義、陰謀論がフェイスブック上にあふれる確率を飛躍的に高めた」と批判した。

豪州で首都圏の新聞を独占するナインとニューズ・コープ、自然災害の発生時に中心的な情報源となる公共放送局オーストラリア放送協会（ＡＢＣ）のコンテンツはフェイスブックのページから消え、コロナに関する信頼できる情報源であるクイーンズランド、南オーストラリア両州の保健当局のページもコンテンツが削除された。

森林火災や洪水など自然災害に関する警告を出している豪気象局のページもコンテンツが消えた。

＜一部のサイトでは復旧＞

ただ、正午過ぎには、政府関連サイトの多くが復旧した。一方、複数の慈善団体のサイトや、ニューヨーク・タイムズ、ＢＢＣニュース、ウォール・ストリート・ジャーナルなど主要国際メディアのサイトでは引き続きコンテンツが閲覧できない。

フェイスブックの豪州担当者はコメントの要請に応じていない。同社はその後、声明で政府のページは影響を受けないが「ニュースコンテンツの定義について明確な指針が法案に示されていないため、幅広い定義を採用した」と説明した。

フェイスブックの豪州サイトは一時ダウンしていたが、復旧した。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは声明で「これは警戒すべき危険な展開だ」と指摘。「真夜中に国土全体で重要な情報へのアクセスを遮断するのは不道徳だ」と批判した。

フレッチャー豪通信相は編集方針があり、事実確認プロセスを有し、プロのジャーナリストを雇用するメディアのコンテンツを見せないというメッセージをフェイスブックは市民に送ったと述べた。

ハント保健相は同社の対応を「主権国家への攻撃」と「巨大テクノロジー（企業）による市場権力の完全な乱用」と非難した。

＊豪閣僚の発言などを追加しました