IEA、原油相場のスーパーサイクルに否定的見解 供給は潤沢
ロイター / 2021年3月18日 10時33分
国際エネルギー機関(IEA)は17日公表の月報で、世界経済の新型コロナウイルス禍からの回復を背景に原油相場が長期にわたり上昇する「スーパーサイクル」に入ったとの観測に否定的な見解を示した。写真は原油貯蔵タンク、米オクラホマ州で2020年4月撮影(2021年 ロイター/Drone Base)
[ロンドン 17日 ロイター] - 国際エネルギー機関(IEA)は17日公表の月報で、世界経済の新型コロナウイルス禍からの回復を背景に原油相場が長期にわたり上昇する「スーパーサイクル」に入ったとの観測に否定的な見解を示した。潤沢に供給があることを理由に挙げた。
また、同時に発表した中期予測で、コロナ禍による行動様式の変化は石油需要見通しを不可逆的に変えたと指摘し、ガソリン需要は既にピークを過ぎた可能性があるとの見方を示した。
月報は「石油の1バレル70ドル近辺までの急騰は、新たなスーパーサイクルや近い将来の供給不足に関する観測を醸成したが、われわれのデータと分析はその逆を示唆している」とした。
「第一に石油在庫は減少し続けているものの歴史的水準に比較するとなお潤沢にある。これに加え、OPECプラスの減産でかなりの余剰生産能力が生じた」とした。
石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」は今月、一部の国に若干の増産を認めながらも、協調減産を4月まで1カ月延長することで合意した。
IEAは、石油需要拡大の見通しとOPECプラスの減産継続は今年下期に在庫が急減する可能性を示しているが、現時点で原油の在庫や埋蔵量は十二分にあり、潤沢な供給量を維持できる見通しだとした。
IEAは同時に発表した向こう5年の市場予測で、石油需要の見通しはコロナ禍での勤務や旅行の様式変化や政府の低炭素化目標によって不可逆的に変わったと指摘。ガソリン需要はコロナ危機前の水準に二度と戻らないかもしれないとした。
途上国のガソリン消費の増加は先進国での燃料効率向上や電気自動車(EV)へのシフトによる消費抑制によって相殺される見込みだとした。さらに、在宅勤務の広がりでガソリン消費が当面抑制される可能性が高いことを理由に、ガソリン需要は2019年にピークを打った可能性があるとした。
「消費は2022年に力強く増え続け、コロナ前の水準に迫るだろう。しかし、ガソリン需要はその後、数年にわたり停滞する公算が大きい」と指摘。
25年の石油需要予測は昨年の予測から日量250万バレル引き下げた。ただ、需要のピークはこれからで、23年までに19年の水準を回復するとの見方は維持した。
「コロナによる行動様式の急激な変化と各国政府の低炭素社会に向けた取り組みの加速で向こう6年の石油需要の見通しが大きく引き下げられた」と説明した。
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