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アングル:融和方向に転じた中国外交、習氏が直面する国内経済

ロイター / 2023年10月18日 18時48分

 10月17日、習近平国家主席がここ数年で最も深刻な国内経済問題への取り組みを迫られる中、中国の外交が融和的な方向へ変わりつつある。写真は18日、北京で行われた「一帯一路」の国際会議で演説する習氏の映像を見る人々(2023年 ロイター/Tingshu Wang)

James Pomfret Michael Martina

[香港/ワシントン 17日 ロイター] - 習近平国家主席がここ数年で最も深刻な国内経済問題への取り組みを迫られる中、中国の外交が融和的な方向へ変わりつつある。

緊迫化する中東情勢への対応に専念したい米国とすれば、こうした中国の姿勢は大歓迎だ。ただ複数の専門家の話では、中国の軟化は長期的な外交政策転換のシグナルとは言えず、すぐに従来のさまざまな国際的あつれきが復活する公算が大きい。

ロジウム・グループのアナリスト、ノア・バーキン氏は、中国は当面の間、商業分野で何も異変はないと世界を安心させたいと考えていると指摘。「中国指導部は外国人投資家に対して、米国やアジアと欧州におけるその同盟国との関係が一方的に悪化することはないと保証することに熱心だ」と述べた。

中国は先週、機密情報を外国に提供した疑いで3年以上も拘束していたオーストラリア人記者チェン・レイ氏を解放して同国との関係改善をさらに促進し、アルバニージー首相の訪中に道が開かれようとしている。

米中についても、近く北京で開催される防衛問題のフォーラムに米軍当局者が招待されて軍事交流面で雪解けの兆しが見えたほか、先週中国を訪れた米民主党上院トップのシューマー院内総務ら超党派議員団と、習氏が親しげに会話する場面があった。

さらに今週の巨大経済圏構想「一帯一路」の国際会議で、中国はスリランカ向け42億ドルの債務について再編に合意。デフォルト(債務不履行)に陥ったザンビアの債務再編を巡る覚書締結にも動いた。

中国外務省の報道官は、中国と米国は両国関係を健全で安定的に発展させる道筋に戻すことができると期待していると発言し、発展途上国との協力も中国が大いに重視している問題だと付け加えた。

<微笑みの裏側>

中国外交が変化した裏で、国内では習氏にさまざまな重圧がのしかかっている。例えば資金流出によって一段と深刻化してきた経済の落ち込みや、不動産危機、若者の高い失業率が挙げられる。

ジェームズタウン財団のウィリー・ラム上席研究員は「習氏は西側諸国に愛敬を振りまき、多国籍企業が中国から撤退するペースを緩め、世界のサプライチェーン(供給網)から中国が切り離されるのを防ごうとしている」と説明した。

南シナ海におけるフィリピンとの領有権争いでは一歩も引かない態度を見せている中国だが、途上国全般との政治、貿易面での結びつきは強化したがっている。それは経済的な理由だけでなく、習氏が推進するグローバルサウスを含めた「多極化世界」の構築につながるからだ。

一帯一路は借金を押しつけた一部の国を返済不能にさせる「債務のワナ」だという批判にも反論する意欲まんまんで、スリランカやザンビア向けの債務で譲歩したのは中国の主張を後押しする要素になるかもしれない。

北京にある「中国およびグローバル化研究センター」の幹部は「一帯一路の目的は常に途上国支援にある」と訴え、第二次大戦後に米国が欧州復興のために打ち出した「マーシャルプラン」に比すべきだと付け加えた。

一方、中国では外相だった秦剛氏が突然解任され、その後李尚福国防相も1カ月余り動静が不明になっていることで、米国に対して外交や安全保障の面で積極的な手を打ちにくい面もある。

こうした中で11月に米国で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた習氏とバイデン米大統領の会談が実現するなどして、米中関係が安定すれば中国は一息つける。

もっとも、来年には米大統領選を控える。トランプ前大統領の挑戦を受ける可能性があるバイデン氏としては、特に半導体輸出や貿易関税を含めて中国が核心的問題とみなす領域で譲歩できる余地は乏しい。

来年1月の台湾総統選を前に、中国が台湾周辺で新たな軍事演習を実施すれば、西側との摩擦が再燃してもおかしくない。

アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の上席研究員で米中関係を専門としているザック・クーパー氏は「両国関係において根本的な緊張は残ったままで、今の状況はあくまで一時的な改善に過ぎず、ごく近いうちにもう一度悪化しそうだ」と予想している。

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