政策調整は「経済・物価・金融情勢次第」、低い実質金利を強調=植田日銀総裁
ロイター / 2024年11月18日 11時45分
11月18日、日銀の植田和男総裁は、名古屋市で開いた金融経済懇談会で、金融緩和度合いの調整をどのタイミングで進めていくかは「あくまで先行きの経済・物価・金融情勢次第だ」と述べた。写真は10月31日、都内で撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Takahiko Wada
[名古屋市 18日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は18日、名古屋市で開いた金融経済懇談会で、金融緩和度合いの調整をどのタイミングで進めていくかは「あくまで先行きの経済・物価・金融情勢次第だ」と述べた。米国をはじめとする海外経済の展開や市場動向を含め、さまざまなリスク要因を十分注視し、日本経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響を見極めていく必要があると話した。
実質金利の低さを強調し、「金融緩和の度合いを少しずつ調整していくことは、息の長い成長を支え、物価安定目標を持続的・安定的に実現していくことに資する」と話した。
植田総裁は日銀の経済・物価の見通しが実現していけば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになると改めて述べた。その上で、毎回の金融政策決定会合では「その時点で利用可能なデータや情報などから、経済・物価の現状評価や見通しをアップデートしながら、政策判断を行っていく」と説明した。
実質金利については、物価情勢が好転するもとでも極めて低い名目金利の水準を維持していることで「2010年代と比べてもマイナス幅が拡大しており、金融緩和の度合いはむしろ強まっていると評価できる」と語った。
米国景気は「大幅な減速を避けつつインフレ率が2%に向けて低下していくソフトランディング・シナリオが実現する可能性は高まる方向にある」と指摘する一方で、「引き続き情勢を丁寧に確認していく必要はある」と述べた。
コロナ禍で積み上がった超過貯蓄の減少に加え、ここまでの急速な利上げの影響がタイムラグを伴って経済活動を押し下げる可能性にも引き続き注意が必要とする一方で「今後の景気展開や政策運営などを受けて、インフレが再燃する逆方向のリスクも否定はできない」と指摘。米国経済については、上下双方向のリスクを念頭に丁寧に点検していきたいと話した。
市場動向については、最近では米国経済に対する懸念の後退などから市場センチメントが改善しているが「各国の経済指標や地政学的リスクに関する報道等を受けて、市場が変動しやすい状況は継続している」とコメント。市場の変動が「日本の経済・物価に影響を及ぼすことがないかについても、引き続き注意していきたい」と話した。
<地元経済界からは「為替の安定念頭に政策運営を」の声>
植田総裁のあいさつ後、地元経済界の代表者からは「行き過ぎた円安は輸入価格の上昇を通じて原材料やエネルギー価格の高騰につながり、製造業の輸出にもマイナスの影響が及ぶ。為替の急激な変動は企業経営に大きな不確実性をもたらすため、引き続き為替の安定を念頭に置いた政策運営を期待する」との指摘が出た。
植田総裁は、参加者との質疑応答の中で、トランプ次期米政権の打ち出す政策が「現時点でどうなりそうか、確固としたものが得られているわけではない。全貌が判明するにはかなり長い期間がかかると思う」と話した。
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