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アングル:バイデン氏、「ハリス効果」でアジア系取り込みに弾み

ロイター / 2020年8月18日 10時16分

8月13日、米大統領選の民主党候補に指名されるバイデン前副大統領の陣営は、アジア系米国人の票の取り込み強化を画策する。写真は12日、デラウェア州ウィルミントンでバイデン氏の選挙イベントに出席したハリス氏(2020年 ロイター/Carlos Barria)

[13日 ロイター] - 米大統領選の民主党候補に指名されるバイデン前副大統領の陣営は、アジア系米国人の票の取り込み強化を画策する。副大統領候補に起用したハリス上院議員のインド系移民の娘という経歴が、米国のマイノリティー(少数派)で人口が最も急速に拡大している有権者層の心に響くと踏んでいる。

母親がインド出身、父親がジャマイカ出身のハリス氏は今週、歴史を作った。主要政党で大統領選に参加する初の黒人女性かつアジア系米国人となったのだ。バイデン氏は12日、副大統領候補としてハリス氏を紹介する際、「彼女の歴史は米国の歴史だ」と語った。

アジア系米国人は有権者層としてしばしば見過ごされてきた。人口は米国民全体の6%に満たない。しかし、その重要な激戦州でこうした人口は急速に拡大しており、アジア系米国民の投票率が大きく上がれば、11月の大統領選挙結果を左右するのに十分な可能性がある。

バイデン陣営でアジア系・太平洋諸島系米国人(いわゆる「AAPI」)への戦略を担う責任者、アミット・ジャニ氏によると、バイデン氏のハリス氏指名発表後、ソーシャルメディアやインターネット掲示板の書き込みがあっという間に膨らみ、何か関われないかと電話してくるアジア系米国人が相次いだ。「南アジアやインド系のコミュニティーでこんな興奮が起きたのは見たことがなかった」。

バイデン陣営はこれまでに、秋の大統領選直前広告用の資金2億8000万ドルの一部をAAPI系の動員につぎ込むと表明している。その中には特定の民族系のメディアでの広告枠買い取りも含まれる。

アジア系米国人といっても一枚岩には程遠く、民族構成は多様だが、ここ数十年の選挙では全般に民主党を支持している。ロイター/イプソスの投票日当日調査によると、2016年の大統領選ではヒラリー・クリントン候補のAAPI系からの全米の得票は2対1の割合でトランプ氏を上回った。

各種世論調査によると、フロリダ、ミシガン、ノースカロライナ、ジョージア、テキサスといった州では、いずれもこれまでの調査で支持結果が拮抗している州だが、AAPI系の人口増加率は12年から18年にかけて40%を上回った。AAPIデータなどがまとめたデータによると、この増加率は各州での総住民数の増え方の3倍以上だった。こうした州はどこも、アジア系米国人の中でインド系が最大グループを構成している。

また16年大統領選ではミシガン州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州の全体でトランプ氏の得票数は8万票に満たなかったが、この3州には計50万人以上のAAPI系が住む。

AAPIデータの創設者で、カリフォルニア大学リバーサイド校のカーシック・ラマクリシュナン教授は、いろいろな激戦州で「アジア系米国人の票が勝敗を分ける可能性がある」と述べた。

インド系米国人の票を得ようと、トランプ大統領は昨年、訪米中のモディ首相をテキサス州に招き、インド系住民を中心に約5万人が参加した歓迎集会を開催した。モディ氏はお礼に今年2月、インドを訪問したトランプ氏のために11万人が参加する集会を開いて見せた。

<経歴への期待>

アジア系米国人の権利擁護運動家によると、両親が移民だというハリス氏の経歴は民族の違いを問わず、すべてのアジア系米国人の胸に響く。AAPI系の3分の2は移民1世だからだ。

ハリス氏は12日、両親がそれぞれ世界のまったく違う場所からいかにチャンスを求めて渡米したか、正義を求める誓い、即ち公民権運動がいかに2人を結びつけたかを語った。

インド系米国人の選挙出馬を支援する団体、IMPACTの責任者ニール・マカイジャ氏によると、当時の運動は1965年の新移民法につながり、人種差別的な移民枠を終わらせ、インド系や他の移民に米国の門戸を開くことになった。

マカイジャ氏はハリス氏が、他の政治家が成し遂げたことのなかった方法で移民社会米国の一体化を体現すると話す。

アジア系米国人の出馬を支援するスーパーPACのAAPIビクトリー・ファンドで会長を務めるバルン・ニコレ氏は、トランプ氏が「中国ウイルス」や「カンフル-」といった人種差別的な言葉を使うことも含め、新型コロナ流行を中国のせいにしようとしていることで、アジア系米国人の有権者は社会から疎外されていると説明する。

アジア太平洋政策計画評議会によると、新型コロナ流行以来、アジア系米国人に対する憎悪犯罪(ヘイトクライム)件数は増え、3月19日から7月15日まででは2300件を超えた。

トランプ氏陣営の広報担当者は、同陣営は17年以来、移民たちがいかに社会主義や共産主義体制の国から逃れてきたかを語り合ったり話を聞いたりする多数のイベントを開催してきたと弁明した。

歴史的に見れば、共和党も民主党もアジア系米国人有権者への働きかけは少なかった。ビクトリー・ファンドのニコレ氏によると、アジア系有権者の投票率が低いことが、彼らに多くの資源を投下しなくてよいと選対陣営が判断する悪循環を作り出している。

さらにアジア系の人々の選挙への関与を難しくしている要因がある。AAPI系の主要な人口グループ内で、共通言語的なものがまったくないというハードルだ。「そのため選挙プランが多重に必要になる」とニコレ氏は話す。

バイデン陣営はAAPI系向けに多くのイベントを主催している。今月13日にはウィスコンシン州でAAPI系に向けて、15日にはインドの独立記念日に合わせたイベントといった具合だ。

バイデン陣営のジャニ氏によると、同陣営はこの秋には、それぞれ特定の民族系に照準を合わせた電話キャンペーン拠点を設置し、それぞれに適切な言語を話すスタッフを詰めさせて一斉に支持集めの電話をかける作戦という。

ハリス氏が副大統領候補になる一方で、大統領選当日に実施される各地の連邦議員選挙でも、過去最多のアジア系米国人が出馬に動いているという。

(Joseph Ax記者)

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