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焦点:尾を引く米地銀危機、金融環境の大幅な引き締まり進む

ロイター / 2023年9月19日 17時37分

 9月18日、ケイデンス・バンクのダン・ロリンス最高経営責任者(CEO)が「3月の狂気」と呼んだ、米地銀業界を今年序盤に襲った大嵐は半年たって収まった。米首都ワシントンで2013年撮影(2023年 ロイター/Jonathan Ernst)

Paritosh Bansal

[18日 ロイター] - ケイデンス・バンクのダン・ロリンス最高経営責任者(CEO)が「3月の狂気」と呼んだ、米地銀業界を今年序盤に襲った大嵐は半年たって収まった。しかし業界はいまもおびえ続け、危機がもたらした影響への対応を迫られている。

ロリンス氏は、危機以降の流れとして各地銀が、預金をしない顧客への融資には消極的になっていると話す。「われわれは今後も資金調達を巡る戦いが続くと承知している」という。

こうした声はロリンス氏だけでなく、ロイターが取材した複数の地銀幹部やエコノミストからも聞かれ、地銀危機が業界と実体経済になお影を落としている様子がうかがえる。

危機によって、米連邦準備理事会(FRB)がそれまでに行ってきた利上げの効果以上に、金融環境は引き締まった公算が大きい。そのマイナスの度合いは一部で懸念されたほど大きくないかもしれないが、リスクが消えたわけではない。

つまりインフレを抑えつつも景気の大幅な下振れを避けようと慎重に金融政策を運営しているFRBにとっては、引き締めが過剰になる恐れが強まりつつあるということだ。

ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は、地銀危機の直接的な影響は限定的だったおかげで、米経済は今のところ大方が不安に思ったよりも底堅く推移していると指摘した。ただ4月時点で地銀危機は50―75ベーシスポイント(bp)相当の利上げに匹敵する経済下押し効果があるとの想定を示しており、しかも足元で顕現化した下押し効果は約10―20bpにとどまっている点から、逆風はまだ吹き始めたばかりだと警告した。

アポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミスト、トーステン・スロク氏も、地銀危機がFRBの引き締め効果を増幅させたものの、それが全面的に表面化するまでには時間差を伴うとみている。

シリコンバレー銀行破綻で米銀行システムへの信頼が揺らぎ、多くの預金が地銀からより安全とみなされた大手銀行に移動。KBW地銀指数は、夏場に持ち直したがなお3月初め以降で約20%安の水準にある。

こうした中で中小銀行は預金獲得のため相対的に高い金利を設定し、利ざやを維持する必要から貸出金利も引き上げざるを得なくなっている。

銀行関係者の話では、金利上昇を通じて銀行には預金が集まり、資金流出に歯止めがかかったのは確かだ。ただし大手行に向かった顧客の全てが戻ってきたわけでもないという。

<一時的な効果>

各行はここ数カ月、預金以外での資金調達も活発化させている。今月の銀行ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)の利用額は1080億ドルに増加。ケイデンスのロリンス氏と、グレイシア・バンコープのランディ・チェスラーCEOは、連邦住宅貸付銀行(FHLB)などに比べて借り入れ条件や金利が魅力的なので、BTFPで調達したと述べた。

ムーディーズのザンディ氏は、BTFPとFHLBの融資は実質的な金融緩和効果を有するが、BTFPはあくまで一時的で、効力がはく落した後は資金調達環境が一層厳しく恐れがあるとの見方を示した。

<取引を選別>

地銀危機によって各行は取引の選別姿勢を強め、単純な融資関係だけの相手より預金口座を使ってくれる先との取引を優先するようになっている。

ウエスバンコのジェフ・ジャクソンCEOは特に商業融資について「融資のみの取引は打ち切っている。全ての取引において、預金か何らかの付随的なビジネスを(顧客に)求めている」と説明した。

そうした中で、バンクユナイテッドのラジ・シンCEOは、以前なら十数行が参加しようと競っていた大規模な協調融資でも、今はせいぜいその半分の銀行しか関心を示さなくなったと述べた。

結果的に商工業ローンや商業不動産ローンのコストは上昇。シン氏によると、担保付翌日物調達金利(SOFR)のような指標金利に対する上乗せ幅は、従来200bp前後だった案件ならば現在は300bpに拡大している。

シン氏は、地銀危機で融資の伸びは鈍るか、少なくとも借り入れコストが割高化したのは間違いないと指摘した。

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