情報BOX:ロシア大統領選で圧勝したプーチン氏、次の6年の主な課題
ロイター / 2024年3月19日 12時50分
3月18日、ロシアのプーチン大統領はライバル不在の中、今回の大統領選で圧勝した。プーチン氏が向こう6年間の任期中に直面する主な課題をまとめた。写真は同日、モスクワの赤の広場で行われた式典で、スクリーンに映し出されたプーチン氏(2024年 ロイター/Maxim Shemetov)
Mark Trevelyan
[ロンドン 18日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領はライバル不在の中、今回の大統領選で圧勝した。プーチン氏が向こう6年間の任期中に直面する主な課題をまとめた。
<ウクライナ戦争>
課題:さらなる攻勢に踏み切るのか。また、いつ戦争をやめるのか
ロシアはウクライナのほぼ5分の1を掌握しているが、この状況は2022年終盤からほぼ変わっていない。プーチン氏は領土的な目標を明確にしていないが、側近のメドベージェフ前大統領は先月、ウクライナ南部オデーサ(オデッサ)や、最終的には首都キーウなどウクライナの大部分の併合を目指していると述べた。
プーチン氏が取り得る選択肢は以下の通りだ。
まず、時間が味方になると計算し、11月の米大統領選の結果を待ちながら、戦争を長引かせる可能性がある。ロシアは2月に要衝アブデーフカを制圧して9カ月ぶりに戦闘で大きな成果を上げており、プーチン氏はさらに攻勢をかけると述べている。ウクライナは、米議会で大規模な支援策の承認が滞っているため弾薬が不足。西側内部に不協和音が流れ、決意が揺らぐ兆しが出ていることから、ロシアは自信を深めている。
次に、2022年9月に命じた30万人の招集に加えて、新たな兵力増強に着手し、一段と攻勢を拡大する可能性がある。
第一波の兵力てこ入れは混乱を引き起こして不評を買い、何十万人ものロシア人が海外に逃亡する事態となった。ロシア政府は、再び招集する必要はないと繰り返し表明している。
さらに、プーチン氏は交渉により停戦を図る可能性もある。ロシアは、その場合にはウクライナがロシアの条件を飲む必要があると主張。ロシアが掌握した領土はロシアが支配するべきだとしているが、ウクライナ政府はこうした条件の受け入れを拒否している。ロイターは先月の、プーチン氏が現在の占領ラインに沿って戦闘を凍結する停戦案を米政府に提示し、米国は拒否したと伝えた。
<通商とエネルギー>
課題:通商のルートを変え、制裁の打撃を緩和できるか
ロシアは欧米による経済制裁とノルドストリーム・ガスパイプラインの爆発により、うま味のある欧州エネルギー市場の大半を失った。以下の3つの主要プロジェクトの進捗状況は、ロシアが通商の軸足を東方に移すことに成功したかどうかを見極める指標となる。
①ロシアがガス輸出ルートを変更するための、トルコでの新たなガス集配拠点建設
②年間500億立方メートルのロシア産ガスをモンゴル経由で中国に送るための新たなガスパイプライン「シベリアの力2」の建設
③北極海の海氷の融解によって可能となった、ノルウェー国境近くのムルマンスクとアラスカ近くのベーリング海峡を結ぶ北極海航路の拡張
<核兵器>
課題:米国と新たな安全保障の枠組みを構築するか、または新たな軍拡競争に突入するのか
米国との新戦略兵器削減条約(新START)は2026年2月に失効する。そうなればロシアと米国は核兵器を無制限に拡大することが可能になる。
プーチン氏は、ロシアは国防費投入の成果を最大化し、冷戦中にソ連を疲弊させたような軍拡競争を防ぐべきだと述べている。また、ロシアは「いくつかの新しい兵器システム」の開発を続けていると述べる一方、ロシアが核兵器を宇宙に配備する計画だとの米国の主張を否定した。
プーチン氏は核実験再開の可能性を示唆しているが、それは米国が先に実験を行った場合だけだとしている。また、米国と「戦略的な対話」をする用意はあるが、その際にはウクライナ問題を含むロシアの安全保障に影響する全ての課題を協議の対象とすべきだと主張している。
<国内経済>
課題:インフレ、労働力不足、人口減少への対応
ロシアの1月経済成長率は前年同月比4.6%だった。軍需生産の大幅な増加が成長に寄与したが、労働力不足と生産性の低さが課題だ。国防と安全保障が予算の約40%を占め、教育や医療など他の分野を圧迫している。
特に防衛産業が集中している地域では賃金が上昇しているが、プーチン氏は生活水準を大幅に改善するという2018年の公約を実現できておらず、実質所得は全体として過去10年間、足踏み状態が続いている。
当面の優先課題は7.6%に達しているインフレを抑え、財政ひっ迫を緩和することだ。プーチン氏は企業や富裕層への増税を示唆している。また平均寿命を延ばし、家族支援策で出生率を上げる方針を示しているが、長期減少傾向にある人口を上向かせるのに苦戦している。
<指導陣の刷新>
課題:高齢化する指導陣を若返りさせられるか
プーチン氏は新任期が終わるときに77歳になるが、それでも米大統領就任時のバイデン氏よりも若い。
プーチン氏周辺には今週74歳になるラブロフ外相など、プーチン氏より年長の有力者もいる。ショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長(ともに68)は、ウクライナ戦におけるロシアの軍事的失策を巡り一部の戦争推進論者から猛烈な批判を浴びているが、それでも更迭を免れている。プーチン氏は以前から指導陣の刷新に消極的で、能力よりも忠誠心を重視していると指摘されている。
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