長谷川洋三の産業ウオッチオリックス会長の評価:金融危機に米政府は敏速に対応した
J-CASTニュース / 2008年10月2日 11時16分
「米国の金融危機をきっかけに日本の金融大手が米国の金融機関に出資や提携に動いていることは日本の国際化にプラスにはなるだろうが、日本の役割を過大評価することも考え物だ。第一今回米国がとった公的資金投入の決断は90年代における日本の公的資金投入を参考にしたわけではないのだから」
中国の温家宝首相を迎えて2008年9月27、28の両日、中国・天津で開かれた世界経済フォーラムに出席したオリックスの宮内義彦会長は、米金融危機における日本の役割を尋ねた私にこう答えた。
米金融危機では三菱UFJフィナンシャル・グループが米モルガン・スタンレー、三井住友フィナンシャルグループが米ゴールドマン・サックスにそれぞれ出資し、野村ホールディングスが米リーマン・ブラザーズのアジア・欧州部門を買収するなど、日本の金融機関が危機に立った米金融機関の資金供給の担い手としての役割が注目されているが、だからといって日本が国際舞台でにわかに浮上したと持ち上げることは戒めた。しかし宮内会長は27日の総会では「日本政府が金融危機に行動を取るのに数年もかかり、その結果経済低迷が10年以上も続くことになったのに対し、今回米国は非常に敏速に対応した」と評価した。
フォーラムでは米金融大手シティグループのウィリアム・ローズ上席副会長が「今回の米国の金融危機は大恐慌以来の危機であり、世界で統一的な国際会計基準の設立が必要だ」と述べるなど、米金融危機に関心が集中した。これに対し中国の温首相は「中国は力強く安定した、比較的早い成長を続ける。輸出の伸び悩みには内需の拡大で対応する」と述べるなど、先行きに自信を示す発言が目立った。中国の銀行規制委員会のリュー総裁は「中国経済は成長率が鈍化しても国内のインフラ需要が旺盛であるなど余裕がある。しかし米国における各世帯の借り入れはあまりにも膨大であり、7000億ドルの投入でもファーストフード的な効果しかないのではないか。中国のスローフードが必要なのではないか」と発言すると、会場から拍手が起きた。いまや「世界経済は米国より中国を必要としている」という発言がまかり通る雰囲気だった。
【長谷川洋三プロフィール】
経済ジャーナリスト。BSジャパン解説委員。
元日本経済新聞社編集委員、帝京大学教授。BSジャパンテレビ「直撃!トップの決断」、ラジオ日経「夢企業探訪」「ウォッチ・ザ・カンパニー」のメインキャスター。著書に「ウェルチの哲学「日本復活」」、「カルロス・ゴーンが語る「5つの革命」」(いずれも講談社+α文庫)、「レクサス トヨタの挑戦」(日本経済新聞社)など多数。
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