トヨタ「特許開放」の狙いは? 本命は「HVの次」との見方も

J-CASTニュース / 2019年4月21日 17時0分

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トヨタ自動車公式サイトより。大量の特許をオープンにする

トヨタ自動車が、ハイブリッド車(HV)関連の特許を無償公開する。

モーターやパワーコントロールユニットといった中核技術の特許を含め、約2万3740件が対象。これまでの囲い込み戦略を転換し、特許技術のオープン化に踏み切る背景には、競合他社にHV参入を促して市場を活性化させ、その間に出遅れていた電気自動車(EV)で競争力を高める狙いもありそうだ。

「虎の子」をなぜオープンにするのか

「(HV技術の)過去の囲い込みを反省した。エコカーは普及してこそ意味がある。時期が来た」。トヨタの寺師茂樹副社長は2019年4月3日、名古屋市で開いた記者会見で、HV関連特許の無償開放を決めた理由についてこのように述べた。

特許の基本を押さえておくと、独自に開発した技術の特許を取ると、他社はその技術を使えない。特許を持たない企業は、特許技術を使った部品や製品を、特許を持つ企業から買うか、特許を持つ企業と特許を使っていいという契約を結んで使用料を払う。「知的財産」と呼ばれるように、技術が金になるわけだ。

ただ、技術を囲い込んで他社の使用を規制することは、その技術を使った製品の市場を広げるのを妨げる恐れもある。キャリアメールの送受信やウェブページ閲覧などができる世界初の携帯電話IP接続サービス「iモード」が日本以外では普及せず、「ガラパゴス化」した例がある。

そこで、トヨタが今回公開する特許だが、内訳は、モーター関連が約2590件、システム制御関連が約7550件、充電機器が約2200件など、HVに関するほぼ全ての特許が含まれる。2015年1月から無償提供している水素を燃料にする燃料電池の特許も含むが、パナソニックと協業するEV向け電池の関連技術は除く。

HVは、トヨタが1997年に世界初の量産車「プリウス」を投入して以来、その開発で世界をリードしてきた。これまで積み上げた「虎の子」とも言える膨大な特許をオープンにするのは、大きな方針転換となる。

トヨタの狙いは明快だ。

自社HVを「標準」にするとともに...

特許の開放により、これまでHVを手がけていなかった自動車メーカーの参入が進めば、中核部品である電池やモーターなどの生産数量が増えてコスト低減が進み、HVの普及が加速する。その結果、開発で先行するトヨタ本体だけでなく、部品を手掛けるグループ全体で販売拡大も可能になる。

欧州や中国など世界的に燃費規制が厳格化される中、自動車メーカー各社はEVやHVなどの電動車比率向上を目指している。だが、EVは航続距離やコストの問題など依然課題が多く、普及にはまだ時間がかかる。その中で、「HVが現実的な解」と見る向きは多い。

ここで問題になるのは、HV技術の覇権争いだ。HVの方式は現在、トヨタが採用する「ストロング型」と、燃費改善効果はストロング型より小さい「マイルド型」の2種類に分かれるが、最近はより簡易的で参入障壁が低い「マイルド型」を採用する自動車メーカーが増えている。今回の方針には、自社がリードする「ストロング型」をHVの標準にしたいとの狙いもある。

トヨタはHVで圧倒的な強さを誇る一方、EVの開発では出遅れてきた。だが、欧州や中国では、2040年までにガソリン車だけでなくHVも販売が規制される見通しで、トヨタの危機感は想像に難くない。今回の戦略転換には、この10年間はHVの市場拡大で乗り切り、その間にEV開発を急ピッチで進め、出遅れをカバーしたいとの思惑も透けて見える。

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