【日韓経済戦争】そして「日本外し」が始まり、最後に笑うのは中国・台湾か 韓国紙で読み解く

J-CAST会社ウォッチ / 2019年8月10日 18時0分

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習近平国家主席

「日韓経済戦争」が泥沼に陥るなか、韓国では政財界をあげて日本依存から脱却する動きが加速している。

そんななか、虎視眈々と日韓の疲弊につけこもうとしている国があるという。中国と台湾だ。危機感を募らせている韓国紙から読み解くと――。

知事の「国産化アイデア募集」に「単細胞すぎる」の批判

日本政府の輸出規制の対象は、「ディスプレー用樹脂材料(フッ化ポリイミド)」「エッチングガス(フッ化水素)」「感光材(レジスト)」の3品目だ。いずれも韓国の基幹産業である半導体の材料となる重要素材だ。しかも、3品目とも世界シェアに占める日本メーカーの割合が非常に高く、韓国企業は日本に依存せざるを得ない。安倍政権は、その最大の弱点を痛撃したわけだ。

文在寅(ムン・ジェイン)政権は2019年8月5日、主要な部品・素材の国産化へ向け研究開発投資に7年間で7兆8000億ウォン(約6800億円)をあてると発表した。日本政府が「ホワイト国(グループA)」から韓国を除外したことへの対応策で、日本への依存度が高い100品目を戦略品目に指定した。特に日本が輸出規制の対象にした半導体材料3品目を含む20品目は「1年以内に脱日本依存を達成する」と明言、残りの80品目も「5年以内に供給を安定化させる」と宣言した。

この「何が何でも日本を見返してやる」という文在寅大統領の悲壮な決意に、地方自治体からもエールの動きが起こっている。中央日報(8月6日付)「半導体国産化アイデア公募、『反日戦争』地方自治体に論争も加熱」は、こんな動きを伝えている。

「今月(8月)初め、京畿道(キョンギド)のイ・ジェミョン知事が『半導体材料装備国産化アイデア』公募を出した。1等には賞金500万ウォン(約44万円)が懸けられている政策だ」

しかし、イ・ジェミョン知事は文在寅政権を支える与党・共に民主党の幹部である。さっそく野党各党から次のような皮肉のツッコミが入った。

韓国党は、「イ・ジェミョン知事特有の『頭に思い浮かんだことを何も考えずにやる』やり方が道政に反映されたようだ。このように単純にすべての問題が解決されるなら、いっそノーベル賞受賞も国民公募展を通じて挑戦してみてはどうか」(チャン・ヌンイン常勤副報道官)と論評したほか、イ・ジュンソク・正しい未来党最高委員はフェイスブックに「(政府が)これ以上実効的な対策がないようだ」と書いた。

確かに、半導体の部品・素材開発には長期の研究期間が必要で、いつ実現するかは不透明だ。「日本依存」を脱却することはできるのか。その見通しについて、ハンギョレ(8月6日付)「輸出規制関連の韓国のベンチャー企業78%、『材料・部品の国産化4年以内に可能』」はこう伝えている。

「ベンチャー企業協会が7月17~25日、日本輸出規制3大品目関連14社やホワイト国関連48社、今後貿易規制の影響を受ける243社など、計335社のベンチャー企業を対象にアンケート調査を実施した。それによると、回答企業の80~90%が日本輸出規制で『否定的な影響を受けている』と答えるなど、困難を強いられていることが明らかになった」

ただし、国産化の見通しについては、

「3大品目と関連した企業の多数は『時間はかかるが、3大品目を含めた材料・部品の国産化が可能である』と回答し、肯定的な見通しを示した。回答企業の42.9%は、3大品目について、『3~4年以内に国産化が可能である』としており、『1~2年以内に可能である』という回答も35.7%だった。ベンチャー企業が自ら材料部品の国産化の可能性を高く評価した」

と、1~4年の時間はかかるものの「国産化」に自信を見せていた。

調査では、ベンチャー企業のほとんどが「政府の支援が必要だ」と答えているが、中央日報(8月8日付)の「公取委『日本の規制に対抗する共同研究開発、談合から除外』」は、驚きの「支援」の動きを伝えている。

「左翼」文在寅政権で、公取委が「談合」を認める!?

「韓国公正取引委員会は、企業が日本の輸出規制に対抗し、新技術の共同研究開発を推進する際、公正取引法上の談合の適用除外を申請した場合には積極的に検討すると表明した。一定の要件を満たせば共同行為(談合)を認める『共同行為認可制度』を使い、企業を談合容疑で制裁しない方針を示したものだ」
「公取委は今後、日本の輸出規制への対応という見地から部品・素材メーカーが共同開発を増やす可能性があるとみている。公取委のアン・ビョンフン・カルテル総括課長は『(政府の)産業通商資源部を通じ、共同行為認可制度に対する業界の意見も取りまとめ、制度改善に反映していく』と説明した」

その「談合」を認める一定の要件とは、産業合理化、研究開発、不況の克服、産業構造の調整、取引条件の合理化、中小企業の競争力向上などだが、1987年の制度開始以来、一度も認められた例がない。特に、文在寅政権は保守勢力から「左翼」と呼ばれ、「財閥改革」「公正経済」を旗印に、大企業の経営に介入し、企業捜査・調査・捜索を頻繁に行なってきた。いわば「大企業敵視」が政策の一丁目一番地だ。それが積極的に「談合」を認めるとは、180度の政策転換である。

3000人の技術者を募集、1兆円の研究費を投じる台湾企業

そんな日韓の膠着状態に漁夫の利を狙う国がある。朝鮮日報(8月5日付)「韓日対立、中台企業に利益」は中国と台湾企業の動きをこう伝える。

「中国が韓日の対立激化のすき間に食い込み始めた。中国ディスプレー最大手の京東方科技集団は8月4日、アップルにiPhone用有機発光ダイオード(OLED)パネルの納品を目指すことを明らかにした。これまでOLEDパネルは全量をサムスンディスプレーが供給してきた。しかし、韓日対立でOLEDパネルの正常な生産ができなくなりかねず、アップルが京東方科技集団を調達先に加える可能性が高まった格好だ」
「中国の半導体メーカーも急な動きを見せている。福建晋華集成電路は最近、サムスン電子とSKハイニックスで10年以上勤務歴があるエンジニアを採用するという募集を出した。世界最大の半導体受託生産メーカーである台湾の台湾積体電路製造は7月26日、半導体設備、工程エンジニア、研究開発人材を年内に約3000人規模で採用することを明らかにした。会社設立以来最大規模の新規採用だ。また、年内に110億ドル(約1兆1700億円)を投資し、超微細製造プロセスの開発に取り組む予定だ」

それもこれも、日韓経済戦争で疲弊する両国の半導体関連企業に取って代わろうとする動きだという。半導体関連ばかりではない。

「電気自動車(EV)用バッテリー・素材産業でも、中国が韓日対立で利益を得るとの見方がある。EV用バッテリーで世界最大手の寧徳時代新能源科技はライバルの(韓日)企業とさらに差をつける可能性が高い。既にドイツのBMW、フォルクスワーゲンなどに納品し、技術力と量産能力を認められ、ドイツに世界最大のEV用バッテリー工場を建設した。半導体とは異なり、バッテリーは事実上格差がない状況だ。(韓日のように)素材の需給に問題が生じれば、自動車メーカーは中国のバッテリーメーカーと取引を行う」

そして、韓国の半導体企業で日本メーカー外しの動きはもう始まっている。

「中国ではフッ化水素を専門とする凱聖フッ化学、浜化集団などが注目を浴びている。日本製のフッ化水素に代わる有力候補に数えられ、すでにサムスン電子、SKハイニックスなどは韓国国内のメーカーだけでなく中国企業の素材のテストも進めている。日本の経済誌・日経アジアンレビューは「韓国と日本が『ルーズルーズ』(編集部注:ウィンウィンの逆で双方が損をする)の貿易戦争を繰り広げている」とし、「両国経済界にまったく望まない結果をもたらすことになる」と指摘した。中国が唯一の勝者になるという意味だ」

(福田和郎)

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