迷走する日産「株価連動報酬」の正体 「不正の温床」との指摘もあるが...

J-CASTニュース / 2019年9月8日 16時30分

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キッカケは、この人だったけど…(カルロス・ゴーン前会長、2014年撮影)

日産自動車が迷走している。カルロス・ゴーン前会長の役員報酬の過少記載事件をキッカケに、仏ルノーとの経営統合、急激な業績悪化に加え、今度は西川(さいかわ)広人社長らが株価連動報酬(SAR)を不正に受け取っていたとされる疑惑が持ち上がった。

2019年9月5日の報道によると、西川社長は受け取っていた報酬がかさ上げされていたことを認めたうえで、意図的な不正を否定。SARを廃止する方向という。「不正の温床」のようにいわれる「SAR」とは、いったい何なのか――。

株価連動報酬、政府が導入に旗振り

株価連動報酬(インセンティブ報酬)を導入している日本の上場企業は、ここ数年増えてはいるものの、国際的には少なく、政府も「後押し」する。

たとえば、売上高1兆円以上の企業のCEOの報酬は、米国では基本報酬(固定)が10%で、19%が年次インセンティブ、71%が中長期インセンティブだが、日本の場合は48%を基本報酬で賄い、31%が年次インセンティブ、中長期インセンティブは21%に過ぎない(「『攻めの経営』を促す役員報酬~企業の持続的成長のインセンティブプランの導入の手引き~」2019年3月時点版 経済産業省)。

日産が導入しているSAR、「ストック・アプリシエーション・ライト」は業績連動報酬の一種で、賞与のような年次インセンティブと違い、複数年度の評価に基づく中長期インセンティブにあたる。

一定の期間を定めて、株価があらかじめ決めた価格を上回った場合に、その後売却したとした場合の差額部分(売却益相当額)を報酬としてもらえる仕組み。株式そのものや株式を購入できる権利(ストックオプション)を与える仕組みと違って、現金で受け取れるのが特徴だ。

「しかるべき金額を会社に返納すべきものだと思っている」

日産自動車の西川広人社長をめぐる株価連動報酬(SAR)の不正受け取り疑惑は、「文藝春秋 7月号」(6月10日発売)が、カルロス・ゴーン前会長の側近で、日産ではゴーン前会長、西川社長に次ぐナンバー3とされたグレッグ・ケリー前取締役(金融商品取引法の有価証券報告書の虚偽記載の罪で起訴)のインタビューを掲載。その中で、西川社長がSARについて、報酬額が決まる行使日をずらして4000万円を超える額を不正に受け取った疑いがある、と報じていた。

これに対して西川社長は9月5日、かさ上げされた金額を受け取っていたことを認めたうえで、「株価連動型報酬については、グレッグ・ケリー被告の事務局に任せていた」と説明。「社内で適切に処理されていたと認識していた」と、意図的な不正を否定した。かさ上げされた分の報酬について、「しかるべき金額を会社に返納すべきものだと思っている。私もそのつもりでいる」としている。

さらに7日付の朝日新聞は、日産がSARの廃止を検討していると報じた。社内調査の結果が報告される9日の取締役会で、制度の廃止についても議論される見通しという。

ゴーン前会長は「不記載」が問題に

日産混乱のキッカケは、昨年のゴーン前会長の役員報酬の有価証券報告書の虚偽記載事件だ。50億円ともされる役員報酬のうちの約40億円分が株価連動報酬を受け取る権利として付与されながら、記載していなかった。

役員報酬は株主総会で役員全員分の総額を決議して、その配分は取締役会に委任するのが一般的。2018年11月21日付の日本経済新聞によると、「日産は2008年の総会で、総額で29億9000万円以内と決議した。この決議には期限の定めがない。配分について日産は有価証券報告書の中で、企業報酬コンサルタントによる多国籍企業の役員報酬の調査を基に決めていると説明している」としていた。

さらにSARについては、「毎年600万株相当分を上限として、株価が設定価格を上回っていれば、その差額を受け取れるとの算定方法を示した。詳細については取締役会に一任する」としている。

業績連動や株価に連動する役員報酬は、「自社株を大量に保有する経営者であれば、中長期的に企業価値が下がるような施策は取りにくい」ことが、前提になっている。

その一方で、「取締役の誰にいくら付与するかといった配分に定めがない」ため、経営者が自らその報酬を決められる危うさがある。日経はそのことが「ゴーン氏が実質的に差配できるようになっていた」と指摘していた。

西川社長は「余分に受け取った金額を返還する」としているが、そうであれば、「まったく知らなかった」では通用しないのではないか。9日の取締役会後、西川社長がどのような説明をするのか、注目したい。

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