「出戻り就職」女性に根強い復帰希望! メリット、デメリットを専門家に聞いた

J-CAST会社ウォッチ / 2019年9月27日 11時45分

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「出戻り」でも堂々と働きたい(写真はイメージ)

一度退職した会社に復帰する「出戻り就職」をする女性が増えている。主婦に特化した人材サービス「しゅふJOB」の調査機関「しゅふJOB総研」の調査では、9割近くの女性が「復帰できる制度をつくってほしい」と望んでいる。

人材難の今日、「出戻り就職」は会社側にとってもメリットがあるという。出戻る側、受け入れる側、どんなことに気を付けたらいいか。専門家に聞いた。

外資系にはよくある「アルムナイ制度」とは?

一度自社を退職した人間を再度社員として迎え入れるシステムとして、「アルムナイ制度」が、最近広がっている。アルムナイ(alumni)とは、卒業生・同窓生を指す英単語で、企業では離職者のOB・OG会を指す言葉として使われる。

大学の同窓会のコミュニティーのように、アルムナイネットワークをつくり、SNSなどでつながったり、交流会を頻繁に開いたりして、企業と離職者がたえず情報交換を行って関係を継続する。

企業側のメリットは多くある。人材が欲しいときにすぐに即戦力になる離職者を再雇用できる。離職者は入社時教育の手間が少なく、なじむのが早いし、成果を計算しやすい。また、離職者の将来の復帰を見込むことによって、採用戦略の幅が広がる。さらに、退職後も関係が続くことでケンカ別れのリスクを防止できる。そして、アルムナイネットワーク自身が顧客になる。

アルムナイは日本ではまだ導入する企業は少ないが、欧米の企業、特にコンサルティング業界では一般的だ。日本でも外資系コンサルティングのアクセンチュアが、会社のホームページに「アクセンチュア・アルムナイ・ネットワーク」サイトを設けており、世界中で15万人のOB・OGが登録。パーティーなど年間約150のイベントを行ってつながっているという。

こうした「出戻り就職」について、主婦に特化した人材サービス「しゅふJOB」の調査機関「しゅふJOB総研」が2019年8月26日、「一度退職した会社に戻るのは、あり?なし?」という意識調査を発表した。

「仕事が好きだったのに辞めた」女性6割が出戻り希望

すると、「一度退職した会社に復帰したいと思ったことがある」と答えた人は、56.2%いた(「ない」が43.8%)。また、「ある」と答えた人のなかで23.4%の人が実際に復帰していた。つまり、全体の13.2%の人が「出戻り就職」をしていたことになる。

「復帰したい」と思った理由のなかで一番多かったのが(複数回答)、「辞めてから元の会社の良さがわかった」(39.2%)で、次に「育児で退職したが、子供の手が離れた」(26.1%)、「元の会社から復帰要請があった」(19.9%)、「他に就職先が見つからなかった」(13.9%)などと続く。

また、アルムナイ制度のように「一度退職した会社に元社員が復帰できる制度」の賛否を聞くと、「賛成」が89.4%、「反対」が10.6%と、9割近くの人が「つくってほしい」と答えた。

また、フリーコメントで「復帰したい」と思った理由を聞くと、こんな声があがった。

「仕事は好きだったが人間関係で辞めた。原因の人間も辞めたのなら復職したい(40代:派遣社員)
「社内結婚だったので退職せざるをえなかった。本当はもともと辞めたくなかった(40代:パート)
「景気が悪くなり、パート全員が解雇になった。景気が良くなってまた採用してくれるなら行きたい」(50代:パート)
「自分のスキルが上がり、再度貢献したい」(60代:パート)
「出産しても育休をとり復職する気でいたが、夫の強い反対で断念したので未練が大いにある。今は別の仕事をしてチャンスを待っている」(50代:パート)

また、実際に「出戻り就職」した人からこんな体験談があった。

「定年退職した会社に派遣で就業しています。スキルがあり、周りの方や環境が慣れているのでお互い楽だ。仕事慣れしているので、とても良くしてくれて楽しく仕事をしている」(60代:派遣社員)
「一度退職した会社から復帰の話を頂き、恥ずかしいと思いながら正社員になれるので復帰した。人事担当をしており、会社からみても特に人間性が分かっている従業員が戻ってくるのは、ハラスメントなどのリスク管理を考えれば、進めたい採用方法だと感じる」(30代:正社員)

一方、反対派には、

「辞めたいと思って辞めた人が復帰するなんてありえない。なぜ戻ってきたという職場の陰口、揶揄に耐えられるの?」(40代:パート)
「浦島太郎状態でお荷物になる人もいる。そういう人も一律に元の待遇を与えるのなら納得できない」(40代:公務員)

といった声が目立った。

退職は「会社との永遠の別れ」ではない

J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部では、今回の調査についてしゅふJOB総研の川上敬太郎所長に聞いた。

――約6割の女性が「元の職場に戻りたい」と答え、実際に全体の13%強、約7人に1人が「出戻り就職」をしています。この数は多いのでしょうか、少ないのでしょうか。

川上敬太郎さん「前職のことが嫌になって辞めた場合は、戻りたいという気持ちにはならないから、半数以上が嫌で辞めたわけではなく、夫の転勤や出産など、何らかの致し方ない理由で退職せざるを得なかったと思います。仕事と家庭を両立したいと考える『働く主婦層』に特化した調査とはいえ、この数字は多いと感じました。従来、元いた会社に復帰することが一般的でなかったことを考えると、逆にこれまでにも復帰した経験がある人は、実は意外といるという風にとらえています」

――アルムナイ制度のように、元社員が復帰できる制度をつくってくれという人が9割近くもいました。企業がこの制度を導入する場合、どんな点に気を付けたらいいでしょうか。

川上さん「メリットの多い制度ですが、導入する際の注意点がいくつかあると思います。特に重要なのは復帰後の職場がスムーズに運営される体制づくりだと考えます。次の3つがポイントになるのではないでしょうか。まず、アルムナイを積極的に受け入れる方針を社内外に周知すること。次に、元社員の復帰を前提とした就業規則や賃金規定を整備しなおすこと。最後に重要なのは、復帰社員と既存社員とのコミュニケーションケアをしっかりすることです」

――かつては、中途退職を会社への「裏切り行為」のようにとらえる風潮もありましたね。

川上さん「そのとおりです。しかし、退職を『会社との永遠の別れ』ととらえる考え方は時代にそぐわないと考えます。日本の雇用慣行は長い間、新卒採用⇒年功序列賃金⇒終身雇用という流れでした。社会に出て最初に入社した会社で、最後まで勤め上げることを基本とする考え方です。その前提に立つと、退職は異常事態であり、終身で面倒を見る代わりに新卒から手塩にかけて育ててきた会社としては、裏切り行為のようにとらえるでしょう。その背景には、社員を自社だけの財産とみる考え方があります」
「しかし、アルムナイ制度や出戻り就職が一般的になれば、社員を社会の財産としてとらえ、その能力をシェアする考え方に変わっていくでしょう。いま自社に所属している社員は、いずれ他社に所属するかもしれず、また自社に戻ってくるかもしれない。となれば、一度退職しても永遠の別れという感覚ではなくなると思います。 経団連会長が終身雇用を続けるのは難しいと発言したように、会社と社員の関係は過渡期にあります。出戻り就職は、これからどんどん浸透していくのではないかと考えます」

なお調査は2019年5月22日~5月31日、インターネットを通じて「しゅふJOBパート」などに登録する主婦・主夫層744人に聞いた。

(福田和郎)

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