注目の「クローバック」制度って何? 日本企業でも導入相次ぐ

J-CASTニュース / 2020年4月6日 7時0分

写真

報酬「持ち逃げ」防ぐこと目指す(イメージ)

過去の巨額投資による損失が発生したり、不正会計などが発覚した場合に役員報酬を返還する「クローバック制度」を導入する企業が増えている。

役員報酬引き上げ、とりわけ業績連動報酬の増加に対応し、「トップの暴走」を防ぐ措置といえ、ガバナンス(企業統治)への視線が厳しさを増す中、今後も投資家から同制度を求める声が強まりそうだ。

武田薬品工業での導入で話題

クローバックとは、「çlawback=回収」を意味する。日本で世間に認知されるようになったきっかけといえるのが武田薬品工業。2019年6月の株主総会で、同制度を導入する株主提案があった。結果は否決だったが、この提案は出席株主の3分の2以上の賛成が必要な定款変更(特別決議)だったために成立しなかったが、賛成52%と、過半数を占めていた。

これを受け、武田は検討を進め、2020年4月1日、クローバック制度を同日付で創設したと発表した。定款変更を伴わない社内制度として導入するもので、不正などが発生した年を含め4年分の報酬を返還するよう要求できるとした。

武田が注目されたのは、2019年1月に、アイルランドの製薬大手「シャイアー」を、日本企業のM&A(企業の買収・合併)として過去最大の6兆2000億円で買収したことがきっかけだ。クリストフ・ウェバー社長兼CEOが進める買収戦略があまりに巨額であることから、先行き赤字が続きかねないと懸念する元社員らが「武田薬品の将来を考える会」を作り、株主総会で買収反対論を展開。その一環としてクローバック条項を定款に加えるよう提案したという流れだ。

海外ではリーマン機に注目

この提案について、米大手助言会社「インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)」や同「グラスルイス」が賛成を推奨したことから過半数の賛成を集めることになった。武田は株主の半分は海外投資家(2019年3月時点)というグローバル企業であり、また、同じ総会ではウェバー社長の取締役再任について、ISSが「自己資本利益率(ROE)が低い」ことを理由に反対を推奨したこともあって、賛成は84.3%にとどまり、前年より7ポイントも下がった。こうした株主の圧力が、武田をクローバック制度導入に追い込んだといえる。

世界でクローバックが注目されるようになったきっかけは2008年のリーマン・ショック。投資銀行の多くが巨額の損失を計上したにもかかわらず、高額報酬を得ていたトップが業績悪化の責任を取らず、報酬を「持ち逃げ」する格好になり、問題視された。その反省としてクローバック条項の導入が進み、米アップル、ジョンソン&ジョンソン、エクソンモービル、ユニリーバといったグローバル企業が同制度を導入。実際に、米大手銀行ウェルズ・ファーゴの不正営業問題ではジョン・スタンプ元CEO(最高経営責任者)らに同制度が発動された。

経営者の報酬が巨額となる中で...

日本も、欧米の背中を追う形で経営者の報酬が何億円というのも珍しくなくなり、特に、業績連動の変動部分が増えてきている。これに歩調を合わせて報酬への監視も徐々に強まり、日本取締役協会の「経営者報酬ガイドライン」(2016年改定)は「大幅な会計修正や巨額損失が発生した際には、報酬におけるリスク管理として、以下のような仕組みを担保する」として「クローバック条項の設定」を盛り込んだ。

こうした流れを受け、野村ホールディングス(HD)、アサヒグループHD、ヤマハ、みずほフィナンシャル・グループ(FG)などが導入している。

今回、武田が同制度を導入、それも株主の圧力に押されてのことだったことは、日本企業の役員報酬へのチェックが強まっていることを象徴していると言えそうだ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング