これはもう医療崩壊だ! ボーナス「引き下げ」「ゼロ」で看護師が大量退職の危機

J-CAST会社ウォッチ / 2020年7月19日 14時45分

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今夏のボーナスゼロ!「もう生きていけない」……

これは、もう医療崩壊のはじまりではないのか――。2020年7月13日現在、全国の395の医療機関のうち、約3割にあたる122の医療機関が看護師などの今夏のボーナスを、2019年より「引き下げた」と回答していたことがわかった。日本医療労働組合連合会(医労連)が公表した。

新型コロナウイルスの感染第2波が懸念されるなか、これまで感染の危険を感じながらも感染拡大を防止し、感染患者の命を救うために昼夜を問わず、使命感で働いてきた看護師が報われないでいる。

看護師のモチベーションが下がるのは当たり前

新型コロナウイルスの影響で病院経営が悪化したことを理由に、多くの病院で看護師などの今夏のボーナスが、昨年より引き下げられている。医労連が加盟する567の医療機関(病院や診療所など)を対象に今夏のボーナスについて調査したところ、7月13日時点で回答した395の病院のうち、約3割にあたる122でボーナスの金額が昨年より引き下げられていた。

その中で、今夏のボーナスが支給されない、「ゼロ回答」の病院は、東京女子医科大学病院(東京都新宿区)だけ(7月15日時点)。経営側は、「4、5月で30億円近い赤字となり、上半期賞与を支給する要素はまったくない」と回答。昨夏、平均60万円あったボーナスが、一気にゼロになった。それによる、看護師らの大量退職が騒動になっている。

東京女子医大病院に限らず、ボーナスの「カット」や「ゼロ」で、これまでガマンして頑張ってきた看護師たちの、張り詰めていた「心の糸」がプツンと切れるのは無理もない。

東京都の感染者数は、政府の緊急事態宣言や「東京アラート」の解除後も、連日3ケタのペースで増え、加速度がついている気配すらある。それでなくとも人手不足の医療現場でコロナによって通常よりも業務が加重になるうえ、もはや「気持ち」だけで働いている看護師のモチベーションションが一気に下がるのは当たり前だ。医労連も「病院によっては、退職が増える可能性は否定できません」と指摘している。

ちなみに、今夏のボーナスの支給額が昨年と「同じ」と答えた病院は190。「上回った」病院は42だった。

わたしたちの声を聞いて!

今夏のボーナスが全額カットされた東京女子医大労働組合のウェブサイトには6月から、看護師らの悲痛な声が届けられている。

「上半期賞与がないことを知り、どうしようもなく(労働組合に)相談させていただきました。入職3年目のまだまだ月給も少なく、一時帰休のため5月分の給与は6割。昇給も上半期賞与もない状態で、家賃光熱費だけで個人的な収入は赤字です...。奨学金の返金もできません...。食費も確保できません。生きていけません」(20代女性)
「コロナ対応で感染リスクを負いながら働いていました。それなのに夏季賞与なしだと辞めたくなります。ここまで職員を大切にしないのかと驚きました。ここで長く働こうとは思えないです」(看護師の20代女性)
「賞与なし? 笑わせないでほしい。もうここでまともに働く価値なし。他にもう少しまともな施設はあると思う」(医療技術職の20代男性)
「説明なしにいきなりボーナス全額カットなんて詐欺もいいところ。教職員はボランティアですか? こんな教職員軽視のブラック病院に就職してしまったことを後悔しています。」(看護師の20代女性)
「辞めたければしょうがない。看護師なんて補充すればいいという考えに本当に驚いています。ここで働いてくれる職員がいるから病院が成り立っているのに、私たちが必死でやってきたことに感謝すら感じてくれないんだな、と涙が出ます。私の職場の看護師はモチベーションが保てず、離職希望者が多いです。これでは患者の安全も守れないでしょう」(看護師の30代女性)

7月13日付のテレビや新聞の報道によると、東京女子医大病院で退職を希望している看護師は400人を超えているという。

患者減やコロナ対策費で赤字経営に

ただ、病院経営も深刻な事態に陥っている。医労連によると、病院がボーナスを減らす理由は、コロナ禍による外来患者や入院患者が減ったこと、またコロナの感染予防対策のためにかかった諸経費や人件費が膨らんだことがある。そのため、ボーナスカットの影響は、東京都や大阪府などの感染患者が多い都市部の病院ほど影響が大きいようだ。

医労連の調査では、病院の厳しい状況も明らかにされている。

沖縄県のB病院では、昨年10月の消費増税と新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、経営が急速に悪化。「現状のままだと半年間で7.8億円の赤字となり、かつて経験したことのない経営危機に直面する」。今夏のボーナスは0.8か月(昨夏は1.2か月分)の支給となった。

また、神奈川県のC病院では、4月、5月単月の「2か月で経常利益が1億7000万円を超える赤字は経験したことがない」事態に陥っている。正職員のボーナスは「1.0か月プラス3万円」(昨夏は1.38か月プラス3万円)の回答があったという。

東京都内にあるN病院は、3月単月で経常利益で4400万円の赤字を計上。夏のボーナスは、引当金を取り崩し、残余資金での支給となることで1.38か月分(昨夏は2.225か月分)、平均25万円程度の減額となった。

病院経営者への「圧力」も強まる。船橋二和病院(千葉県船橋市)では労働組合の一つが7月10日に夏のボーナスカットに抗議してストライキを行う事態になった。白衣姿の医師や看護師らが、「スト決行中」のゼッケンを背負い、「ストライキ決行中」との横断幕を掲げて、病院の玄関横に立った。

参考サイト:「医師らのストにエール 『コロナ減収でボーナスカット』に『国は支援を』」(J-CASTニュース 7月13日付)

今夏のボーナスは支給できても、コロナ禍の影響でこのまま経営悪化が長引けば、「今冬のボーナスをカットする病院はさらに増えるかもしれません。退職希望者も続出する可能性も高まります」と、医労連は危機感を募らせる。「国からの財政支援を、補償をお願いしたいです」と話す。

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