【日韓経済戦争】「安倍首相吐血!?」日本の新聞は地味なのに韓国紙は大ハシャギ この機に乗じ攻勢をかける文大統領に安倍首相が打った勝負手

J-CAST会社ウォッチ / 2020年8月5日 18時55分

写真

韓国で大々的に「健康不安」が報じられている安倍晋三首相

元徴用工裁判の被告、日本企業の資産の現金化をめぐり、日韓関係が一触即発の状況の中で、安倍晋三首相の「健康不安」問題が急浮上した。写真週刊誌「フラッシュ」が「安倍首相が執務室で吐血した」と報じたのだ。

菅義偉官房長官が「まったく問題はない」と即座に否定。日本メディアもベタ記事扱いだったが、韓国紙の紙面はまるで安倍首相が重病になったかのように大きく踊った。

それに乗じるかのように、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が強気の攻勢をかけている。いったいどうなるのか。韓国紙で読み解くと――。

「執務室で吐血した安倍首相」と決めつける朝鮮日報

「永田町を奔(はし)る安倍晋三首相『7月6日吐血情報』『改憲を... 私にはもう時間がない』」

というショッキングな見出しで報じたのは2020年8月4日発売の写真週刊誌「フラッシュ」だ。しかし、記事を読んでも冒頭に、

「〈安倍総理が、7月6日に首相執務室で吐血した――〉いま、永田町でこんな情報が奔(はし)っている」

とあるものの、あとは安倍首相の持病である潰瘍(かいよう)性大腸炎の説明や、新聞各紙の首相動静欄から引用した7月中の安倍首相の動きをあれこれ書いているだけで、首相周辺の人物の証言など具体的な情報には乏しい。

とはいえ、政界にショックを与えたのは確かだった。8月4日、菅義偉官房長官は記者団から「フラッシュ」の報道に関連して、「首相は最近、自宅に直帰することが多いが...」と聞かれると、笑みを浮かべながらこう答えた。

「私は連日お会いしていますが、総理は淡々と職務に専念しており、まったく問題ないと思っております」

官房長官が「健康不安」を真っ向から否定したため、日本の新聞各紙は朝日新聞(8月5日付)が「首相の健康不安説否定」、毎日新聞(同)が「安倍首相の体調『まったく問題ない』菅氏が強調」といった見出しで報じるなど、ほとんどがベタ記事の地味な扱いだった。

ところが、韓国紙は軒並みトップ級の扱いで大々的に報道した。最大の発行部数を誇る朝鮮日報(8月5日付)は「執務室で吐血した安倍首相」と、見出しからして「吐血した」と決めつけて、こう伝えた。

「日本の安倍晋三首相に健康異常説が取りざたされている。菅義偉官房長官は4日の定例記者会見で、『まったく問題ないと思っている』と答えた。しかし、時事通信は『永田町では新型コロナへの対応が長期化し、豪雨災害も重なったため『首相が疲れている』との観測が出ている』と報道していた。日本経済新聞も2日、安倍首相について『表情には疲れもにじむ』と伝えていた」

つまり、日本のメディアは「フラッシュ」が報道する以前から、安倍首相の体調が思わしくないようだという観測記事を流していたというのだ。

朝鮮日報はそのうえで、こう続ける。

「しかも、『フラッシュ』の報道は安倍首相の健康異常説を拡散させている。安倍首相が7月、官邸で吐血したと報道したものだ。菅官房長官はこの報道を否定しなかった。安倍首相は、6月の通常国会閉会以降、記者会見をほとんどせず、テレビカメラの前に立つことを避けていたため、健康に異常があるではないかという見方が取りざたされていた。安倍首相は第1次政権末期にも潰瘍性大腸炎が悪化し、電撃的に退陣した前歴がある。官邸事情に詳しい消息筋は『安倍首相が最近疲れを見せているのは官邸の全関係者が知っている。新型コロナ政策の相次ぐ失敗や、支持率急落が影響を及ぼした可能性がある』と語った」

発行部数2位の中央日報(8月5日付)も「安倍首相、官邸で吐血? 日本週刊誌が火をつけた健康異常説」という見出しで、こう報じた。

「安倍首相の健康異常説が駆け巡っていることを受け、日本政府が『首相の健康には問題がない』という立場を明らかにした。(しかし)安倍首相は国会閉会翌日である6月18日以降記者会見を開かず、1か月以上引きこもったため、『体調が悪いのではないか』といううわさが立っていた。日本の新聞に毎日公開される『総理の一日』では退勤後直ちに私邸に戻ることが多く、このような疑問を拡大した」

そして、中央日報も安倍首相の持病の説明を長々と記述して、「持病の悪化」を強く打ち出している。

外務省内の「韓国通」をすべて更迭した安倍首相

ところで、「安倍首相吐血説」が急浮上した8月4日は、元徴用工裁判をめぐり、被告日本企業(日本製鉄)の差し押さえられた資産の現金化の手続きが可能になる初日だった。もし、現金化の手続きが始まると、日本政府の報復が必至となり、日韓関係のさらなる悪化がさけられない。

そんななか、安倍首相の「健康不安」を見透かしたのかどうかは不明だが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は一気に強気に出た。日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了というカードを切ったのだ。

文政権寄りといわれる左派系紙ハンギョレ(8月5日付)「韓国外交部『GSOMIAいつでも終了可能』最高裁判決履行のための外交協議に 不誠実な日本を圧迫するための言及」が、こう伝える。

「キム・インチョル外交部報道官は8月4日、『GSOMIAは日本に束縛されることなく、韓国政府がいつでも終了可能であり、協定を1年ごとに延長するという概念は現在適用されていない』と述べた。元徴用工賠償判決と関連した外交協議に誠意を見せない日本政府を圧迫するための言及と解釈される」

つまり、元徴用工裁判で日本側が誠意を見せない限り、8月23日をもってGSOMIAの終了を正式に日本側に通告するというのだ。

一方、こうした文政権の「恫喝」じみた圧力は、安倍首相に対して非常に危険だと警告するのは保守系の朝鮮日報だ。安倍首相は最近、政権内の「韓国通」の人脈をすべて排除しており、韓国に対して強硬路線に打って出る可能性が非常に高いというのだ。

朝鮮日報(8月3日付)「安倍首相、『現金化』衝突控え韓国通を次々に交代」が、こう伝える。

「安倍内閣が、外務省で韓日関係を専門に担当してきた『コリア・スクール』(編集部注:日韓関係を専門とする外交官の通称)の外交官を相次いで交代させている。この動きから、韓国で差し押さえられた日本企業の資産が現金化された場合は強硬対応に出るとの分析が出ている」

具体的には、更迭された「コリア・スクール」のメンバーは次のとおりだ。

「日本政府は7月、代表的な韓国通の金杉憲治・外務審議官と元駐韓総括公使の鈴木秀生・国際協力局長を10か月で更迭した。韓日関係を担当してきた長尾成敏・北東アジア第1課長も交代となった。後任にはテロ対策室長兼日本企業海外安全対策特別専門官の小野健氏が任命された」

長尾成敏氏は長年、韓国関連の業務を担当し、駐韓日本大使館でも勤務。外務省内でも韓国について比較的穏健な対応を主張してきた。一方、新任の小野健氏は韓国関連業務の経験がまったくない。小野氏の直属の上司である滝崎成樹・外務省アジア大洋州局長も韓国関連の業務に縁がなかった。

朝鮮日報はこう続ける。

「これにより、韓日関係が最悪の状況にあるなか、日本の外務省の韓国担当局長・課長がすべて『韓国業務未経験者』で占められることになった。これには、日本でも懸念の声が上がっている。東京の外交消息筋は『日本企業の資産が現金化される可能性が高まるなか、韓国と再び衝突した場合には強硬対応する、というメッセージと考えられる』と話した。別の消息筋も『安倍内閣には韓国に配慮するという考えが全くない、ということを示す人事』との見方を示した」

特に次官候補とまでいわれた金杉憲治氏が1年足らずで退任になったことは「前例がないこと」と、外務省内外に大きな衝撃を与えたという。朝鮮日報は、日本メディア界幹部のこんな嘆息のコメントで記事を結んでいる。

「これで安倍首相の周辺で、韓国のことに神経を使う人物は一人もいなくなったわけだ」

(福田和郎)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング