【尾藤克之のオススメ】経営とマネジメントの「キモ」は「EQ(心の知能指数)」にある

J-CAST会社ウォッチ / 2020年8月8日 10時0分

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もう「いい人材=いい大学」の時代じゃない!(写真はイメージ)

2000年以降、多くの会社で成果主義人事制度が導入されました。成果を明確にすることで組織活性化が期待されましたが、制度上の矛盾を露呈する結果に陥ります。

社員のマインドは疲弊し、将来のパスが見えにくく漠然とした不安が蔓延していきました。その後、成果主義は収束して成果主義の対軸理論としてEQがブームになります。

EQ理論提唱者のイェール大学のピーター・サロベイ博士(現学長)、ニューハンプシャー大学のジョン・メイヤー博士との共同研究で日本のEQ普及に尽力した人がいます。株式会社EQの高山直会長です。15年ほど前、EQJAPANという組織で、高山さんが代表取締役、筆者はソリューション部門と戦略部門を統括する責任者としてEQの普及につとめてきた時期があります。

「EQトレーニング」(高山直著)日本経済新聞出版社

「Emotional Intelligence」という理論

著者の高山直さんは、経営陣の一員として、採用や選抜、昇格の場面で見てきた現実に、常々疑問をもっていました。人の能力や可能性は無限であるのに、学校名や学歴で差別されるのはなぜだろう。公平公正に評価されないのはなぜだろうと。

「そんななか、出会っだのが、『Emotional Intelligence』という論文でした。EQ理論の提唱者のピーター・サロベイ博士とジョン・メイヤー博士が、初めてEQを世に問うた論文です。内容を目にしたとき強い衝撃を受けました。そこには、長い間、感じ続けてきた疑問に対する一つの明確な回答が示されていました」

高山さんは、そう話します。

・ビジネスで成功するためにはIQだけでなく、EQが必要である。
・リーダーとして成功する人の多くは高いEQを備えている。
・EQは学習や訓練によって伸ばすことのできる能力である。

当時は、「いい人材=いい大学」という人材観でした。これは、ひと言でいえば、学校差別とでもいうべき採用姿勢です。「この仕事がやりたい」と意欲を燃やし、目標に向けて努力する能力がある人材でも、門戸すら閉ざされているケースが少なくなかったのです。

高山さんは、

「企業の将来を決める人材採用を、IQという一つの偏った尺度だけで決めていいのだろうか。もっと広く、その人のもっている『人間的魅力』や『人間力』ともいうべき総合的な能力を見てあげることはできないのだろうか。それが可能なら採用する側にとっても採用される側にとっても幸せな結果になると考えていました」

と言います。

伸ばせる能力であることが支持される

結果的に、EQは大きなブームとなり、高山さんが経営するEQJapanの個別診断テスト受験者は30万人を超え、導入企業も3000社に達します。これは、EQのロジックがわかりやすかったことに加えて、伸ばせる能力であることが支持されたものと考えられます。

「ある事例を紹介します。商談に向かうためタクシーに乗りました。大きな商談で、『よし、やるぞ』と気持ちを高め、気合を入れて社を出ました。ところが、乗ったタクシーの運転手さんの話が暗いのです。『景気はどう、よくないでしょう』から始まり、『友達もリストラされた』『景気が悪いしノルマは厳しい』。訪問先に着くころには、高揚していた気持ちはすっかり沈んでいました。
その日のプレゼンは見事に大失敗。感情のエネルギーをすっかり運転手さんに奪われてしまい、短時問では感情を調整し高めることができなかったのです」

と高山さん。

こういったタイプの人はどこにでもいるものです。きっと一人や二人は思い当たる人がいるでしょう。

高山さんは

「一方では、元気を与えてくれる人もいます。気分が落ち込んでいても、会うとホッとし、話すほどに元気がわいてきます。いったい何か違うのでしょう。実は、一番の違いは使っている『言葉』にあります。『明るい言葉』は自分の気持ちを明るくし、周囲を明るくすることができます」
「風土改革の際に、難しいコンサルティングを導入しても運用ができません。それよりも、『明るい言葉を使う』『挨拶をきっちりする』『元気な言葉で会話をする』、このような単純でわかりやすい施策のほうが組織は活性化するものです。とても簡単な方法ですから、試してみてください」

と、オススメします。

なお、EQブームのあとに飛躍した理論が乱立しました。いまブームのアンガーマネジメントも、EQ理論がベースになったものです。人間関係の問題はすべてEQに帰結します。人が行動する際、影響を与えるのはEQ(感情)だからです。なお、筆者は、いまでもEQ理論の可能性を感じている一人です。EQ理論に関心のある方には良著となることでしょう。(尾藤克之)

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