次期首相、菅氏の「集金力」を徹底分析 連年1億円超集めるも高い「匿名性」、過去には「スキャンダル」も

J-CASTニュース / 2020年9月15日 10時30分

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次の首相に就任する菅義偉氏の「集金力」は?(2020年9月2日、東京都千代田区)

次の首相となる自民党の菅義偉・新総裁は政治活動を支える「カネ」をどう集めているのか。菅氏が代表を務める政治団体の政治資金収支報告書を調べてみた。

菅氏が代表の団体は、資金管理団体の「横浜政経懇話会」(総務省届出)と政党支部の「自民党神奈川県第2選挙区支部」(神奈川県選挙管理委員会届出)の2つ。公開されている最新の2018年分の政治資金収支報告書を見ると、横浜政経懇話会は約3983万円、自民党支部は約7360万円を、それぞれ集めた。

パーティー収入が全収入の7割も、購入者名は...

2団体の収入は計約1億1343万円。資金管理団体と政党支部を合算した金額では全国会議員でトップ20位以内に入るほどの、政界でも屈指の集金力を誇る。

18年の収入の73%を占めたのが、政治資金パーティーによる収入だ。横浜政経懇話会では18年に「新しい国創りセミナー」と題したパーティーを、東京・千代田区のキャピトルホテル東急で6回開催し、3968万円を集めた。自民党支部では「経済人春の集い」と題したパーティーや朝食会などを横浜市の横浜ベイシェラトンホテル&タワーズなどで5回開き、計約4325万円を集めた。諸経費を差し引いても、計約6917万円の利益を上げたことになる。

ただ、パーティー券の購入者は、どちらの政治団体の政治資金収支報告書にも載っておらず、誰が参加したのか不明だ。匿名性の高さは18年に限らず、現在公開されている16年分と17年分も遡って見たが、やはり記載されていない。

政治資金規正法では、1個人または1法人で20万円を超えるパーティー券を購入した場合、氏名と住所、金額を記載する必要がある。一般的に、1つの企業・団体から複数名がパーティーに参加する事例は多いが、菅氏の団体が主催したパーティーの参加者は全て購入額が20万円以下ということになる。

閣僚を2回経験した自民党議員の秘書はこう明かす。

「パーティー券の相場は、自民党なら1枚2万~3万円程度です。支援していただいている企業から何枚もまとめて買っていただきますが、たいていはぎりぎり1社20万円以内に収まるように買ってもらい、20万円を超える場合は関連会社の名義にしたり、個人の名義で買ってもらったりしています。どこの企業も、収支報告書に名前が出るのは嫌がりますからね」

寄付者の中にあの「シウマイ」の会社も...

菅氏の場合、誰から寄付されたかがわかるのは、個人献金計296万円と企業・団体献金計約1194万円分だ。全収入の13%に過ぎない。

寄付者は主に、菅氏の選挙区の横浜市西区、南区、港南区の企業や企業役員だ。業種別では最も多かったのが建設・建築関係の企業や企業役員で、計約370万円に上る。次いで製造業の企業などからの寄付が計約170万円あった。

この中には、「シウマイ」で知られる「崎陽軒」(計40万円)や、横浜駅東口にある超高層ビル「スカイビル」の運営会社(計12万円)などが含まれる。

菅氏の「集金力」の経年変化も調べてみた。

自民党の場合、選挙がある年は、通常の政党交付金に加えて選挙に使うための「モチ代」が党本部から配られるため、収入が多くなる。17年は10月22日に衆院選の投票があったが、衆院解散の翌日の9月29日に菅氏の自民党支部にも1500万円の交付金が入金されている。

そこで、それ以外の年について、収入額の変化を比べてみた。すると、野党だった2011年は計約9546万円だったのが、15年には計約1億328万円、16年は計約1億891万円と「成長」している傾向がうかがえた。収入増の要因の1つが、政治資金パーティーの収入増だ。

菅氏の政治団体は1回の収入が1000万円を超える「特定パーティー」を野党時代の2011年に2回、12年も自民党の政権再交代前に3回開催していたが、官房長官就任後は特定パーティーの開催はしていない。「大臣規範」で閣僚就任中の大規模なパーティーの自粛をうたっているためとみられる。

ただ、菅氏は官房長官就任以降、1回のパーティーの収入を900万円台以下に「小口化」したようだ。16年は1回900万円台のパーティーを6回開催。17年は4回、18年は5回開いていた。パーティー自体は小規模化したものの、年に何度も開いてコンスタントに500万~900万円規模を集めることで、結果的に近年は年7000万~8000万円台の収入を得ている。長期政権を支える官房長官としての知名度が、パーティーでの集客力につながったと言えそうだ。

2000年代に「スキャダル」2回、「慎重になった」?

先出の自民党議員秘書は、1回のパーティーを900万円台以下にすることは、別のメリットもあると証言する。

「(1回1000万円以上の)特定パーティーだと収支報告書に購入者の総数の追記が必要となります。購入者数を記載すると、会場費として支払った経費などから色々と調べられて、過少申告がばれてしまう恐れがあります。菅さんについてはわかりませんが、うちの議員が大臣の時は900万円台以下になるよう、書いていました」

7年8カ月にわたって官房長官の要職にあった菅氏。この間、閣僚をめぐって「政治とカネ」をめぐるスキャンダルは噴出し続けたが、菅氏自身は無縁に等しかった。ただ、2000年代後半に2度に渡って政治資金に関する不祥事を報じられたことがある。

1回目は菅氏が第1次安倍政権の総務相だった2007年8月。菅氏の自民党支部が菅氏所有の横浜市南区のビルに事務所を置く代わりに、月約36万円の賃料を菅氏に支払っていた、と報じられた件だ。当時の農林水産相が家賃のかからない実家に後援会の事務所を置き、賃料を「還流」させていた疑惑が発覚した後の報道だ。総務相は政治資金規正法を所管する大臣。菅氏は当時、「政治団体が家賃を支払わなければ『無償供与』になってしまう」として逆に不適切だと主張。電話代など家賃以外の支出の領収書も公開し、違法性はないと強調していた。

2回目は翌08年、東証2部上場の不動産・建設会社「スルガコーポレーション」(横浜市)から菅氏の自民党支部が2001~07年に計104万の献金を受けていた問題だ。スルガ社をめぐっては、スルガ社がビルの立ち退き交渉を依頼した山口組系の企業の社長が、弁護士資格がないのに報酬を得て立ち退き交渉をしていたとして、弁護士法違反の容疑で逮捕された。菅氏の事務所は当時、「東証2部上場企業で、まさかそんな事件にかかわるとは思わなかった」とコメントし、全額を返金している。

菅氏が官房長官の時に長く「番記者」を担当した全国紙の記者はこう話す。

「この2件を報じられたのは相当ダメージだったようです。『次に政治とカネの問題が出たら、閣僚の目はない』とばかりに、寄付をもらい、政治資金収支報告書に記さないといけない場合は、(寄付者に)問題がないか、相当慎重になったそうです」

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