地元の魅力「ありふれた光景」で伝えたい SNSで連日話題の写真家が、カメラを通して見つけたもの

J-CASTニュース / 2021年3月6日 10時0分

写真

「アニメのワンシーンのような風景写真」で注目集める福井の写真家・Akine Cocoさん。この「標識」の写真を含むツイートは40万いいねを記録した

コロナ禍の今、SNS上で注目を集めている写真家がいる。

福井県で活動するAkine Cocoさんだ。「アニメのワンシーンのような風景」というテーマで、連日SNS上に写真を掲載。ツイッターのフォロワー数は19万人を超え、2021年2月20日には写真集『アニメのワンシーンのように。』(芸術新聞社)の出版も果たした(フォロワー数は3月6日時点)。

生まれてからずっと福井で暮らしてきたというAkineさん。だが、長引くコロナ禍で「都会へ写真を撮りに行きたいと思っても、行けない」と葛藤を口にする。地元で写真を撮り続ける中、見出したものとは。J-CASTニュースは2月18日、オンライン取材で胸の内に迫った。

埃を被ったカメラ...ある日見た「夕日」が転機に

「何気ない場所も愛おしく感じる」(21年2月23日)
「大切なものはすぐそばにあった。」(21年1月26日)

Akineさんの写真は、こうした短文とともにSNS上に投稿される。四季折々の風景を柔らかなタッチで描写した作風が特徴だ。ひとたびツイッターに写真が投稿されれば、あっという間に多くのリツイートや「いいね」を集める。日本だけでなく、海外ユーザーからの反応も少なくない。

実はAkineさん、普段は会社員として働き、休日など空いた時間に写真を撮っているアマチュアのカメラマンだ。4年ほど前に「旅行に行ってスマホで写真を撮っているだけでは寂しい」と思い、ミラーレスの一眼レフカメラを購入。それでも「しばらくは埃を被っていた」というほど使用頻度は低く、本格的に写真撮影をはじめたのは19年6月だった。同年8月には、撮った写真を投稿する目的でツイッターアカウントを開設。ただ、「はじめは特にコンセプトなどを設けて活動していなかった」という。

転機となったのは20年の春だ。

「帰り道に見たきれいな夕日を写真に収めたら、まるで新海誠作品(『君の名は。』『天気の子』など)のようだった。自分がアニメ好きだったこともあり、ここから『アニメのワンシーン』のような風景写真を追求していきたいと思いました」

「『バズる』ことはもちろん嬉しいです。でも...」

自身のスタイルを見つけて以降、Akineさんは「夏の田舎道」や「夕暮れ時の街並み」など、「何気ないまちの景色」を捉えた写真を積極的に投稿するようになる。中でも「一番思い入れがある」と語ったのが、20年6月2日に投稿した「標識」を写した一枚(記事トップの写真)。古びた赤い標識と、鮮やかな夏の青空とのコントラストが印象的だ。

今回発売された写真集の表紙に起用されているこの写真について、Akineさんは「基本的に『定番の撮影スポット』には行かず、ありふれた、何気ない風景を撮りたいと思って活動をしています。この写真も『何気ない』けれど、どこか惹かれるところがありますね」と話す。

この「標識」の写真を含む6月2日の投稿は、自身最高の8万5000件のリツイート、40万件のいいねを記録。ツイッター上で名が知れ渡るきっかけとなった。ただ、一度大きく「バズる」と、数字にとらわれてしまいがちなSNSの世界。それでも、Akineさんは「ある程度のクオリティは大事にしたいですが、数字だけに囚われるのはよくないと感じています」と語る。

「『バズる』ことはもちろん嬉しいです。でも、自分の世界観を大事にしていきたい、というのが一番の思いです」

抱き続けてきた「都会への思い」、それでも「福井に住んでいてよかった」

生まれてからずっと福井県で暮らしてきたというAkineさん。SNSに投稿された写真のほとんどが、福井県で撮られた写真だ。地元を走る「えちぜん鉄道」や大型商業施設「ユニー」など、地方都市ならではの暮らしぶりを感じさせる写真も多くあり、実際に「『地方っぽさ』にノスタルジーを感じてもらえる人も多い」という。

ただ、Akineさんは写真を始める前、地元に対して複雑な思いを持っていたという。

「こうして生活しているから言えることですが、正直、福井ってなにもないんですよね(笑)。『都道府県魅力度ランキング』でも、下から数えた方が早いくらい(20年は44位)。やっぱり、『都会がうらやましい』と思うこと、都会への憧れを抱くことはありました」

GoToトラベルキャンペーンの実施で一時的に観光への機運は高まったものの、基本的には県外への移動がしづらい空気があるコロナ禍の日本。Akineさんは「地元で写真を撮り続けているのは、実際のところ『コロナの影響』だからというのもあります。都会へ写真を撮りに行きたいと思っても、行けない。県外に行くとしても、なるべく人の少ないところに行くしかないという状況です」と話す。

それでも、今の状況を決して悲観しない。

「地元で写真を撮り、発信し続けることで得られた気づきもあります。それは、ありふれた、何気ない風景こそが『地元の魅力』なのだということ。写真を始める前の自分には、気づけなかったことです。今はむしろ『福井に住んでいてよかった』と思っています」

Akineさんは「まだ表に出していない写真も沢山あります。今後は『新たな表現』も模索していけたらと考えています」と展望を語る。全国、そして世界へ向けて、今日も地元の「ありふれた」景色を発信し続ける。

(J-CASTニュース記者 佐藤庄之介)

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