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「お菓子型業界を助けてください」 かっぱ橋の菓子道具店がSOS コロナ特需じゃなかった? 投稿者に聞いた

J-CAST会社ウォッチ / 2021年4月10日 11時45分

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馬嶋屋菓子道具店の櫻井裕さん(編集部撮影)

「お菓子型業界を助けてください」......。東京・浅草のかっぱ橋道具街(台東区)にある「馬嶋屋菓子道具店」が公式ツイッターで、こんな投稿を寄せた。

「コロナの影響で町工場さんの閉鎖が相次いでいます。そんな町工場さんの高い技術を『お菓子型作り』に注いでくれませんか? お菓子型は需要があるのに、工場は高齢化で年々閉鎖に追い込まれています」

創業70年の菓子道具店によるSOS。投稿は反響を呼び、4000件以上リツイートされている。

投稿した馬嶋屋でWEB統括責任者を務める櫻井裕さん(38)。2020年10月15日のことだ。櫻井さんによれば、お菓子型もそうだが、特に危機に瀕しているのが、食パンを作るための「食パン型」だという。

会社ウォッチ編集部は21年3月22日、お菓子型・食パン型の業界の「リアル」を櫻井さんに聞いた。

コロナ禍で供給が追い付かなくなり...

馬嶋屋は製菓・製パン道具と型を、主に販売。櫻井さんは、なぜ今回のような投稿をしたのだろうか――。

「お菓子型・食パン型づくりの職人は高年齢化し、工場は年々廃業しています。現在、当店で仕入れている工場は、お菓子型が2社、食パン型が1社しかありません。
工場によっては『子どもには継がせない』と考えているところもあり、今後工場がなくなっていくことを重く受け止めた結果、今回の投稿に至りました」

かねてより課題であった職人の高齢化による工場の廃業に加え、コロナ禍の影響で、自宅でお菓子やパン作りをする人が急増。特に食パン型の供給がまったく追いつかない状況になったという。

お菓子型・食パン型は、工場だけでなくメーカーでも販売している。ただ、工場製品はプロ、メーカー製品は一般の人が使うことが多いそうで、工場が廃業することでプロに製品が行き渡らなくなることを、櫻井さんは懸念している。

「馬嶋屋がある『かっぱ橋道具街』は、プロの方を相手にしている商店街なので、その方たちに道具が行き渡らないのはとても大きな課題です。なかには『特注の食パン型を作りたい』という依頼も来ますが、今は通常扱ってる商品でさえ入荷されないので対応できません」

日本の工場製品の供給がなくなれば、自動的にメーカー製品に頼らざるを得ない。しかし櫻井さんによれば、メーカー製品の中には中国製もあり、モノによってはパーツのサイズミスなどの不具合が見られるという。

「食パン型はフタをスライドさせる形状ですが、フタがフィットしないんですよね。図面に表せない『職人の技』というのができないようです。クオリティは日本の工場で作ったモノのほうが全然いいですね。価格も、たとえば100個のうち20個が不良品だったら、その20個分を残りの80個で調整しなければならないので、当然影響してきます」

「日本の食パン型は安すぎる」

別業種の工場でもいいからお菓子型・食パン型を作ってほしい――。そんな櫻井さんの投稿は大きな反響は大きかったが、実際に町工場から申し出はあったのだろうか。

「ツイートを見た数社から声をかけてもらいましたが、うち1社にはすでに断られました。今、販売されているお菓子型やパン型が、金属板金のモノづくりの価格にしては安すぎるというのが理由です。そこは他業種の工場でしたが、見積もりをしたら採算が合わなかったのです」

馬嶋屋で販売している食パン型は1つ1000円。しかし、他業種の工場が作るとなった場合、仕入れ値は6000円で販売価格は1万円ほどになることが判明した。「1万円のパン型はさすがにプロの職人さんも買わないので...」と櫻井さんは嘆く。

「型づくりが分業制になっているのも、他業種が入り込めない理由の一つです。たとえば、食パン型を作るのに『折る』という工程がありますが、折る前の『板をカットする』業者が見つかりません。業者が見つかっても、材料が重いので運送コストがかなりかかってしまいます」

他業種の工場での製作は、実現のメドがたたない。日本の工場で製品を作り続けるためにじゃ、「今、稼働している工場をなくさないようにすること」だと櫻井さんは話す。

今後は販売店と工場が協力して、後継者を探すという話も出ているそうだが......。

櫻井さんは、

「この先どうなるかなって不安はやっぱりありますね。プロが使う食パン型とお菓子型をどうやって残していくかというのは、先が見えない課題です」

と話している。

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