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日本はなぜトップから転落したのか? 統計データが示した「キツイ」現実

J-CAST会社ウォッチ / 2021年6月13日 17時15分

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非正規労働者は正社員と比べて年収で60%低い

日本は今、世界でどれくらいの位置にいるのか?

さっぱり進まない新型コロナウイルスのワクチン接種の状況に、苛立ちながら、国力の低下を憂えている人もいるだろう。本書「日本の構造 50の統計データで読む国のかたち」は、副題にあるように、さまざまな統計データから、日本の「実力」を検証した。

我々の仕事と生活の実態を知ることが、すべての議論の土台になるだろう。

「日本の構造 50の統計データで読む国のかたち」(橘木俊詔著)講談社

非正規社員は正社員より年収が60%低い

著者の橘木俊詔さんは京都大学教授などを経て、現在、京都女子大学客員教授。専門は労働経済学。著書「格差社会」(岩波新書)のタイトルが流行語になったことで知られる。

日本経済、労働と賃金、生活などの8章からなり、50の項目で構成されている。各項目のタイトルは、「格差」を意識したものが多い。

たとえば、「男性の賃金、大企業では39万円、小企業では29万円」という項目は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(2018年)による。当たり前のように思うが、「企業規模間賃金格差の国際比較」(労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2017」)という国際比較したデータも示している。大企業を100としたときの中小企業値は、デンマークで100.4、イギリスで99.0、イタリアで92.0などとなっており、遜色があまりない。

「規模間格差は容認されるべきではない」という規範が社会にある、と指摘している。イギリス以外では賃金は経営者、労働組合、政府の三者で全国一律に、中央で決定される、という。逆に規模間格差が目立つのは、日本、ドイツ、アメリカだ。

労働生産性の違いなどを理由に挙げているが、そうではない国も多いことを知ると、なんなんだろうか? と考えてしまう。

「非正規社員は、正規より年収が60%低い」という項目でも、うっすらと感じていたことが予想以上の厳しい現実として突き付けられる。国税庁の「民間給与実態統計調査」(2019年)によると、男性の正規労働者(正社員)で年収が561万円、非正規労働者で226万円、女性の正社員で389万円、非正規労働者で152万円である。男女計にするとそれぞれが503万円と175万円となる。非正規の人は正規の人と比較して、年収で男性も女性も60%近くも低いのだ。

正社員は賃金と昇進における年功制がまだかなり残っていて、働き続ければ賃金増加があるが、非正規労働者では昇給がほとんどないことが、もっとも大きな理由だ。 賃金格差のほかにも、社会保険制度に加入できない、雇用打ち切りの対象になるなど、非正規労働者の格差は深刻だ。

年収300万円未満の男性は、交際経験なしが33.6%

「格差社会」の著者だけあって、経済以外の生活の分野でも、しっかり目配りしている。その一つが「結婚格差」だ。

「年収300万円未満の男性は、交際経験なしが33.6%」という項目がある。「年収別にみた30代男女の婚姻・交際状況」というデータが興味深いことを示している。出所は内閣府「平成22年度結婚・家族形成に関する調査報告書」だ。

男性の年収300万円未満では、既婚者は10%を切る。さらに恋人なしが38.8%、女性との交際経験なしが33.6%と高い比率を占めている。「年収が300万円未満の男性は、70%ほどが女性と縁のない人生を送っているという悲惨な状況にいる」と書いている。

年収が増えると、既婚者の比率も高くなる。600万円以上になると既婚者は40%弱に達する。

一方、女性では既婚者の割合が一番多いのが300万円未満の人で、年収による差はあまりない。「男性と異なって300万円未満の女性でも結婚できるのは、夫の稼ぎが多ければ結婚できるか、本人がパートなどで働く可能性もあることを暗示している」と見ている。

むしろ、600万円以上の高所得者は既婚者が16%と、かなり低いことに注目している。「自分の稼ぎだけで十分生活できるので、結婚しなくともよいのか、一方で、恋人ありが40%近くもいる。自由な恋愛生活を楽しんでいる『独身貴族』の女性である、としておこうか」と書いている。

さらに、結婚している共稼ぎ夫婦でも、夫の年間所得が300万円未満であれば、妻も200万円未満というのが70%を占めているので、夫婦ともに低い所得の組み合わせが多いという。

これとは逆に、夫婦ともに高所得の夫婦も存在し、「パワーカップル」と名付けている。「似た者夫婦の所得版」と書いている。

メディアやドラマで、「湾岸のタワーマンション」に住み、子供の「お受験」に奔走する夫婦が取り上げられることがあるが、それは一部の「パワーカップル」の現象に過ぎない。

日本経済は復活するか?

「日本では必要な人の10~20%しか生活保護を申請しない」、「東京都の一人あたり所得は543万円、沖縄県は235万円」など、ほかにも気になる項目があった。それぞれの項目で日本が豊かになるヒントを示しているが、努力してガムシャラに働き日本経済を復活させよ、という方向性には懐疑的だ。

日本人の勤労意欲の低下が目立ち、働くこと以外に価値を見出している人が増えているからだ。本書にはそうしたデータも提示されている。

1980年代には国民一人あたりのGDPは世界のトップクラスにいたが、2019年には25位まで低下した。なぜ、そうなったのか? 本書を読むと、納得する。コロナ禍がさらに国際的な地位の低下に拍車をかけるのでは、と心配するのは杞憂だろうか。

「日本の構造 50の統計データで読む国のかたち」
橘木俊詔著
講談社
990円(税込)

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