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三菱電機、絶つことできない不正の根 悪質で深刻、自浄作用なし!

J-CAST会社ウォッチ / 2021年7月21日 16時45分

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どうなる!? 三菱電機(写真はイメージ)

三菱電機が鉄道車両向け空調機器などの製造過程で、長年にわたって出荷前に必要な検査を怠ったり架空のデータを記入したりしていたことが発覚した。35年以上前から繰り返されてきた組織的な不正で、杉山武史社長が辞意を表明する事態に発展した。

同社では近年、他にも同様の不正が相次いで発覚している。旧財閥グループの名門企業は、なぜ不正の根を絶てなかったのか――。

安全性は「法令違反にはならない」!?

今回の不正は2021年6月29日、一部の報道で明らかになった。問題の空調機器は、長崎製作所(長崎県時津町)で製造し、1985~2020年に約80社に出荷した約8万4600台。国内ではJRや私鉄など全国の鉄道会社納入していたほか、全体の約2割が海外向けだった。

こうした空調機器は快適な温度、湿度を保つための制御機能や省エネ性能のほか、防水や電圧の変動などへの耐久性も求められる。

長崎製作所は、出荷前に顧客が指定する方法で検査をする契約を交わしていたが、実際は指定された方法とは異なる条件で検査したり、一部の検査をしないまま架空の検査結果を成績書に記入するなどしていた。

その後、空調機器に加え、鉄道車両向け空気圧縮機ユニットの一部でも検査不正があったと発表した。同ユニットは鉄道のドアの開閉やブレーキの操作で使われており、一部の検査で、前の機種の検査結果を流用していたという。この15年で国内に約1500台を約20社に納入したという。

ただし、今回の不正が検査を取り決めたユーザーとの契約に違反することは認めつつ、「安全性に関する『法令違反』にはならない」(品質担当の福嶋秀樹常務執行役)と説明している。

この一連の不正発覚を受け、杉山武史社長が7月2日になってようやく会見し、「鉄道事業者、利用者にご迷惑とご心配をかけて申し訳ない」と謝罪した。そのうえで、再発防止に向けて「社長の職を辞し、新たな体制で信頼回復に取り組んでいくことが必要」と引責辞任するとともに、同日付で外部弁護士を委員長とする調査委員会を設置し、9月までに調査結果と再発防止策を公表すると表明した。辞任時期については、7月中をめどに後任を決める考えを示した。

消極的な情報開示、責任をとらない......

今回明らかになった検査の不正については、以上のようなことだが、三菱電機の体質、企業としての姿勢に関しては、問題が幾層にも重なっていて、悪質性、深刻さが際立つ。過去にもさまざまな不正、不祥事がありながら、情報開示には消極的な姿勢に終始し、対応も甘く、問題を一掃できなかったのだ。

まず2018年以降、ゴム製品や半導体製品などで検査不正や品質問題が相次ぎ発覚したが、背景として、同社の構造的な問題が指摘されてきた。家電から防衛装備まで幅広く扱い、それぞれ各地の事業所で開発、製造している。

このため、事業所ごとに専門的な人材が求められ、分野をまたいだ異動は限られていたことから、他の部署の情報は把握しにくいとされる。18~19年度に全社的な総点検をして客観的に検証したというが、今回の不正も見抜けなかったように、組織の問題点は、解消にはほど遠かった。

19年8月、20代の新入社員がパワハラを受けて自殺した問題も起きた。この問題では21年3月、杉山社長を含む役員の報酬減額を発表したが、他の一連の不祥事でも社内処分は担当役員の報酬の一部返納程度にとどまり、責任を取って辞任した役員はいない。

20年1月には、サイバー攻撃によって政府機関とのやりとりなどが流出したとされる問題が明らかになった。この時は、問題を認識してから半年以上経過してようやく発表おり、当時の閣僚などから「速やかに公表すべきだった」と批判された。

ちなみに、問題続発の一方で、21年3月期の役員報酬は杉山社長の2億円をはじめ1億円プレーヤーが7人にのぼり、人数の多い企業ランキングでトヨタ自動車などと並び7位タイになっているのは、皮肉でさえある。

過去の不祥事の問題が、今回も引き継がれた。空調機などの不正では、データ偽装のプログラムも作成され、1990年から使われていたことが確認されている。実際はやっていない検査を適正に実施したように装うため、検査成績書に別の検査データを自動転載するものだったという。

杉山社長は「組織的な不正だったと認めざるを得ない」と述べたが、過去の不祥事の対応の甘さが、続発する不正の背景にあり、また組織の自浄作用をマヒさせていたということだろう。

お上の指示待ち、株主総会での報告はスルー

そして、今回も発表が遅れた。社内調査で空調機器の検査不正が判明したのは2021年6月14日、空気圧縮機ユニットの検査不正が見つかったのが28日だが、すぐ事実を公表せず、29日の株主総会でも言及は一切なかった。

29日夜に一部で報道され、翌30日、国土交通省や経済産業省が同社に対応を指示。それにより、ようやく不正を説明した1ページだけの文書を公表した。杉山社長は株主総会で説明しなかったことに、「(事実確認が)不十分な状態で話すことは逆に不安感を与える」と釈明。「株主との年に1度の対話の機会に出せなかったのは反省すべき点で、改善を図りたい」と述べたが、積年の隠ぺい体質がなせる業ということだろう。

ちなみに、過去の不祥事を受け、三菱電機は社外取締役の監視機能強化に取り組んできたはずだった。藪中三十二・元外務次官、大林宏・元検事総長、小山田隆・元三菱UFJ銀行頭取らそうそうたる顔ぶれが名を連ねる。今回、社外取締役は総会前に問題の説明を受けていたといい、また、いずれも今総会で再任されている。今回の株主総会の運営を見ると、社会取締役も十分機能しなかったといわざるを得ない。

三菱電機は電機メーカーとしてはソニーグループ、日立製作所、パナソニックに次ぐ売上高を誇り、足元の業績も堅調。コロナ禍の影響で21年3月期は減収減益だったが、22年3月期の見通しは、連結売上高が前期比7%増の4兆4700億円、営業利益は13%増の2600億円、純利益は9%増の2100億円と、4期ぶりの最終増益を見込む。

一方で、7月2日の会見で杉山社長は、不正の背景について、想像だと前置きしたうえで「業務負荷が非常に高かったという背景があったのではないか」と述べている。品質はもちろん、納期、コストなど製造業の現場は常に尻を叩かれる。

業績優先のために現場への圧力が行き過ぎた時、それをマネジメント側が適切に把握できる組織風土に生まれ変われるか。まさにここが問われている。(ジャーナリスト 済田経夫)

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