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富士山はいつ噴火してもおかしくない! 火山灰に埋もれた遺跡が証言【防災を知る一冊】

J-CAST会社ウォッチ / 2021年9月29日 12時15分

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もし富士山が噴火したら、新幹線は寸断されてしまう(写真はイメージ)

9月1日は「防災の日」。1923(大正12)年9月1日に関東大震災が起きてから、もうすぐ100年になろうとしている。また、近年は9月に大型台風が上陸したり、長雨が続いたりして、各地で風水害も発生している。9月は防災、自然災害、気候変動、地球温暖化をテーマにした本を随時、紹介していこう。

東日本大震災の後、日本列島の下では地震や火山活動が活発化している。1000年ぶりの「大地変動の時代」に入ったと見る専門家も多い。富士山は大丈夫なのか? と、心配になる。

本書「富士山噴火の考古学」(吉川弘文館)は、古来噴火を繰り返してきた富士山が、縄文時代以来の遺跡にどんな影響を与えてきたかを考古学的に検証した本だ。いつ噴火してもおかしくないことがわかる。

「富士山噴火の考古学」(富士山考古学研究会編)吉川弘文館

富士山噴火に人文科学、自然科学から振り返った

本書を編集した富士山考古学研究会は、富士山周辺の自治体の文化財に関わる考古学関係者、火山学者らが集まり、2016年に立ち上げた。富士山の噴火に起源をもつテフラ(火山灰やスコリア=礫)や土石流や溶岩流などの堆積物について多くの研究がされてきたが、十分に活用されてこなかったという反省があったという。

それは「同じフィールドサイエンスながらも、考古学と火山学との間の風通しが良くなかったため」と杉山浩平氏(東京大学大学院総合文化研究科)は書いている。富士山のテフラは、その多くが玄武岩質であるため、国内のほかの火山で行われるような化学組成に基づいたテフラの同定が難しいことも理由の一つだという。

第1部では、富士山の火山噴火史について、人文科学、自然科学の両面から振り返っている。1960年代になると富士山の噴火で埋没した遺跡が開発工事に伴い発見されるようになった。

山梨県では河口湖の船津浅川宮の近くで、ホテル建設の工事の際に、弥生時代末から古墳時代前期の土器が火山礫で満たされていたことから、火山被害があったことがわかった。また、静岡県では御殿場市の長坂遺跡は噴火によって埋没した集落があったことが考古学的に裏付けられた。さらに、テフラの層の上下関係が明らかになり、考古学と火山学の接点が生まれた。

文献には富士山噴火の記述が繰り返し出てくる。天応元年(781)、続日本紀に噴火の記述が初めて登場。奈良時代において、朝廷はその動向を重視した。平安時代末の永保3年(1083)まで7回噴火の記事は出ており、火山活動が活発だったようだ。朝廷は、その自然災害に対して鎮静化を図る方策として、祭祀儀礼を行う浅間大社(静岡県富士宮市)を位置づけている。

飛鳥、奈良、平安時代にはほぼ数十年おきに噴火

その後、静穏期に入るが、江戸時代に宝永火山が噴火。多くの文献資料が残っている。噴火の4年前の元禄16(1703)年11月に房総半島近海を震源に起きた元禄大地震、噴火49日の10月に南海トラフを震源に起きた宝永大地震を一連の現象とすれば、さらに多くの記録が残っているという。

宝永の噴火は、富士山で最も新しい噴火で、宝永4(1707)年11月23日に、南東山腹(現在の宝永火口)から噴火を開始し、翌年の1月1日まで16日間続いた。この噴火で放出されたマグマの総量は7億立法メートルで、噴煙は最大で標高2万3000メートルに達した。

火山灰は東山麓の小山町須走では2メートルに達し、集落は埋没。厚木で約30センチ、横浜で約20センチ、江戸の町にも数センチ降り積もった。

第2部に富士山噴火による罹災遺跡の記録が載っている。ある意味で、研究書である本書のキモの部分である。

富士山や箱根などの活発な噴火活動により、テフラが降り積もり、現代より寒冷だった旧石器時代、人々は食料と資源を求めて移動。富士山の姿が今の姿になったころ、温暖化とともに定住が始まるのが縄文時代である。そして約5600年前、富士山の火山活動は活発化した。周辺の多くの縄文遺跡が罹災した。

時代ごとに特徴的なテフラの堆積が確認された、山梨県で71、静岡県で52、神奈川県で260の遺跡一覧が掲載されているとともに、主要な遺跡は地図や出土品の写真付きで紹介している。

これを見ると、いかに多くの遺跡が富士山の火山の影響を受けたかがわかる。時代も縄文、弥生、古墳、平安、江戸と分散している。距離的に離れている神奈川県でも多いのは、遠くまで飛散するテフラの影響だろう。

次期噴火はいつになるのか? 飛鳥、奈良、平安時代にはほぼ数十年おきに噴火が発生してきた。史上最大規模とされる貞観噴火もこの時期である。ところが、中世には噴火の記述がなく、約350年の空白がある。最新の噴火である宝永噴火からすでに320年が経過している。「富士山の平均噴火間隔の10倍ほどの期間、噴火がなかったことからすると、次の噴火はいつ発生してもおかしくないと思われる」と書いている。

宝永噴火がもし現代で起きれば、新幹線や首都圏の鉄道、高速道路は寸断される。また、降灰により電子機器は使えなくなり、都市機能は壊滅的被害を受けるのではないだろうか。

首都直下型地震や南海トラフ地震による被害も大きいことが予想されるが、それらと連動して富士山噴火が起きれば、ダメ押しとなり、日本という国は壊滅するのではないだろうか。そんな心配を避けるため、首都移転など抜本的な対策が必要ではないだろうか。(渡辺淳悦)

「富士山噴火の考古学」
富士山考古学研究会編
吉川弘文館
4950円(税込)

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