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故人の思いを乗せて、宇宙へ――。ベンチャー企業SPACE NTKが手がける日本初の宇宙葬

J-CAST会社ウォッチ / 2021年11月27日 11時45分

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来春、日本初の「宇宙葬」が実現する(写真は、「SPACE NTK」の葛西智子社長)

 2021年9月、初の民間人宇宙旅行が成功したというニュースはまだ記憶に新しい。一般人が宇宙へ行ける時代はすぐそこまで迫り、宇宙ビジネスへの注目度も年々高まっている。

そんななか、日本初の「宇宙葬(宇宙散骨)」がまもなく行われようとしている。手がけるのは、葬儀業界で長く経験を積んだ葛西智子(かさい・ともこ)氏が代表を務める株式会社SPACE NTK。アメリカの宇宙開発企業スペースX社と提携し、宇宙葬を専門とする会社として2017年に立ち上げられたベンチャー企業だ。

宇宙葬とはどういったものなのか。今後、葬祭と宇宙の関係はどのようになっていくのか。起業から4年を経て、記念すべき初回の打ち上げを来春に控えた葛西氏に聞いた。

「人は死んだら星になる」をずうっと夢見てきた

――まずは、葛西さんが宇宙葬ビジネスを手がけたいと思ったきっかけを教えてください。

葛西智子さん「ご縁があって20代で葬儀業界に入り、約30年間、さまざまな葬儀のプロデュースを行ってきました。亡くなった方やご遺族と関わる中で、ずうっと考えてきたのは、『故人の尊厳を形にするとはどういうことか』ということ。私自身がそもそも、お墓には入りたくないという気持ちが強くて......」

――「お墓に入りたくない」とは?

葛西さん「子どもの頃に祖母が亡くなり、そのとき初めてお墓に遺骨を入れるのを見ました。お墓に暗くてじめじめしていた印象を抱いて、子ども心に『あそこには入りたくない』と思ったんですよね。母からも『人は死んだらお星さまになるんだよ』と聞いていたので、『私はお墓には入らずに、死んだら星になりたい』とずうっと思ってきました」

――「星になりたい」という気持ちが「宇宙葬」に繋がったのですね。

葛西さん「私が葬儀の仕事を始めた頃はまだお墓での納骨がメジャーでしたが、だんだん海に遺灰をまく海洋散骨や、樹木を墓標とする樹木葬など、『お墓に入りたくない』という故人の意思を尊重した納骨方法が取り入れられるようになったんです。
ただ、『海』『陸』はあるのに『空』がない。そこで『空=宇宙葬だ!』と思いつきました。死んだら星になりたいという子どもの頃の夢がここで繋がり、残りの人生を宇宙葬の実現に賭けようと思い会社を立ち上げました」

――「宇宙葬(宇宙散骨)」は一般的にはまだあまりなじみのない言葉ですが、どのような方法で弔うのでしょうか。

葛西さん「宇宙葬は、カプセルに入ったご遺骨を人工衛星に乗せて宇宙空間へ打ち上げる散骨方法です。人工衛星はロケットで地球から約500?600キロメートルのところまで打ち上げられ、そこから5?6年ほど地球を周回します。最後は地球の引力に引き寄せられ、大気圏に突入して燃え尽きる。地球をしばらく回った衛星が最後は流れ星になる......というイメージです」

――まさに「星になる」。

葛西さん「宇宙葬をしたら、世界中どこにいても、お墓に行く時間がとれなくても、病気でベッドに伏していたとしても、夜空を見れば故人を思い出せます。遺された人がそうやって絶えず故人を思い出せるということが、故人の尊厳を形にすることだと私は考えています」

「日本では私のやりたいことはできない」と渡米

――打ち上げはどのように?

葛西さん「SPACE NTKでは、宇宙開発企業スペースX社(米国カリフォルニア州)のロケット『ファルコン9』を利用して打ち上げを予定しています。日本人宇宙飛行士の野口聡一さんの宇宙飛行でも使われたロケットなので、知っている方も多いかもしれません」

――提携先探しは、どのように進めたのでしょう。

葛西さん「宇宙葬の会社を立ち上げようといろいろ調べる中で、日本では私のやりたいことは実現できないとわかりました。宇宙葬をするには、アメリカのロケットを使うしかない。なのでまずは、情報収集や人脈づくりのためにアメリカを訪れました。2017年の初夏のことです」

――スペースX社以外にも提携先の候補があったのですか?

葛西さん「宇宙開発企業を回ったり国際宇宙開発会議に参加したりして、どこのロケット会社なら宇宙散骨ができるのかを調査し、コンタクトをとりました。中には技術の問題や宗教的な理由でお断りされた会社もあります。
その過程でスペースX社に日本人の社員がいると知りました。その方を通じてCEOのイーロン・マスク氏に相談を持ちかけ、契約を結ぶことができました」

――さまざまな宇宙開発企業があるなか、スペースX社を提携先に選んだ決め手はなんだったのでしょうか。

葛西さん「従来の方法では小指の先ほどの量の遺骨しか打ち上げられなかったのですが、スペースX社の技術なら50センチ四方の大きな人工衛星を打ち上げることができる、つまり一人分のご遺骨を乗せられるんです。また、人工衛星はロケットに搭載したまま地球を周回するため常にスペースX社の監視下にあり、宇宙ごみにならないというのもポイントでした」

――来春に初めての打ち上げを控えているそうですね。

葛西さん「第1回の打ち上げは、2022年の4月1日を予定しています。今回はペットを含む9人分のご遺骨、それから『MAGOKORO Xプロジェクト』で集めたメッセージカードをお預かりしていて、12月に私がアメリカへ行ってスペースX社に直接お渡しする予定です」

「ゆくゆくは月や火星での散骨を実現したい」

――「MAGOKORO Xプロジェクト」とは?

葛西さん「当初はご遺骨だけの打ち上げを想定していましたが、あるお子さまから『私の思いも一緒に打ち上げて欲しいな』と言われて。せっかく大きな人工衛星なので、ご遺骨だけではもったいないと思い、メッセージカードや自分のDNA(毛髪)を一緒に宇宙へ打ち上げるプロジェクトも同時に行うことにしました」

――どんな方がメッセージカードを寄せているのでしょうか。

葛西さん「日本国内だけでなく、アメリカや台湾の子どもたちや、NASAやJAXAの方、国や世代を問わずさまざまな方にカードを書いてもらいました。宇宙好きな方へのプレゼントとして活用してくださった方もいますね。現時点(2021年11月)で1500枚以上のカードが集まっています。
宇宙と関わりを持ちたいと思いながらも『そんなの夢のまた夢』と思っている方は多くいます。でもメッセージカードであればリーズナブルですし、気軽にトライしていただけるのかなと思います」

――宇宙散骨は、どのような目的で申し込む方が多いのでしょうか。

葛西さん「みなさま、それぞれいろんな思いを持っています。たとえば今回、お子さまを病気で亡くされたお父さまからの申し込みがありました。お子さまは生前『天の川に行きたい』と話していたそうで、少しでもその近くに連れていってあげたいと。お子さまのご遺骨と家族みなさまの毛髪を一緒に入れて、『家族で宇宙旅行をしたい』とご遺骨を託してくださいました。依頼者の方、それぞれのご経験や思いに触れ、一人ひとりの思いを大切にしなければという責任を感じています」

――これから手がけていきたいことや今後の展望について教えてください。

葛西さん「2022年4月の打ち上げ後、2023年秋に第2号、その後に第3号の打ち上げを予定しています。民間人が宇宙に行ける時代はすぐそこまで来ています。この先、宇宙は今よりもっと身近な存在になっていくはず。ゆくゆくは宇宙空間だけでなく、月や火星での散骨も実現したいですね。
散骨以外に、宇宙での生前葬も考えています。すでにお申し込みもいただいていて、当社では2025年に宇宙生前葬第1号のロケットを打ち上げる予定です」

(聞き手 鼈宮谷 千尋/べっくや ちひろ)

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