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「推しが尊い」ってどういう感情なの? 2人の"推し本"著者が語り合ったこと。

東京バーゲンマニア / 2024年4月9日 18時0分

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今、「推し」をテーマとした本が目白押しです。2024年3月21日、『推し問答! あなたにとって「推し活」ってなんですか?』(東京ニュース通信社)の著者・藤谷千明さんと、『「推し」で心はみたされる? 21世紀心理的充足のトレンド』(大和書房)の著者・熊代亨さんのW刊行記念トークイベントが、東京都・下北沢の本屋B&Bでおこなわれました。

藤谷さんは、東京バーゲンマニアのインタビュー連載「好きってなんなん?」の第3回に、熊代さんは第4回に登場し、それぞれ「推し」や「好き」について語っていただきました。そんな2人の化学反応を見逃すわけにはいきません。編集部員も会場に駆けつけました。

この2人での対談は初めてとのことですが、関心のある話題が似ているからか、抜群のコンビネーションで2時間たっぷり語り尽くしました。その模様を一部お届けします。

「推し」という言葉に戸惑いも

ライターの藤谷さんは、25年以上ヴィジュアル系バンドのファンで、『推し問答!~』ではアイドルやお笑いなどさまざまなジャンルのオタクの話を聞いています。一方の熊代さんは、精神科医として働くかたわら、ゲームやアニメのオタクとしての発信をブログで続けています。

イベントのテーマは、「よく推し、よく推され、よく生きる」。対談は、それぞれの本の中で使われている「推し」という言葉の意味が違うのでは? という話題から始まりました。熊代さんの『「推し」で心はみたされる?』には、上司など身の回りの人も推してみると、人間関係がよくなったり自分が成長できたりすると書かれています。ところが藤谷さんは、身の回りの人に「推し」という言葉を使うことにピンとこないそう。

「自分と違うフィールドにいる人を、対価を払って推すというのが自分のイメージに近いです。『バイト先の推しが~』なんて言葉を聞くと、それはただの好きな人では? と思うんですよ」(藤谷さん)

とはいえ現に、身の回りの人に「推し」という言葉を使っている人も少なくありません。それだけ「推し」という言葉が広がっているのだろうという流れで、2人が「推し」という言葉に出合った頃の話へ。2人とも「推し」が使われるようになる前からそれぞれのオタクコミュニティにいて、特に熊代さんは「萌え」という言葉を使っていたといいます。

もともとアイドルオタクの間で使われていた「推し」という言葉を、ゲームやアニメのオタクが使っているのを熊代さんが見聞きするようになったのが、2010年代の半ば以降。「あれっ、萌えてたんじゃないの......?」と戸惑ったといいます。個人的な感情を指す「萌え」と、今の「推し」はニュアンスが違うのだとか。

「若い人たちって、『みんなで推してるな』と思ったんですよ。『推し』の時代のオタクは、ゲームの界隈でもアニメの界隈でも息が合ってるというか、ある程度の共通のリテラシーのもとでキャラクターやコンテンツを推しているという雰囲気が強くなってきたなと感じます」(熊代さん)

藤谷さんも、ヴィジュアル系バンドのファンの間で好きな対象を指す「本命」という言葉が、SNSの広がりに合わせて「推し」に置き換わっていく様子を見ていたといいます。戸惑いがありつつも、「今でも本命を使う人も当然いるけど、私は便利なのでついつい『推し』を使っちゃう」。「オタク」は自分自身を指す一方、「推し」は行為を指す言葉なので、気軽に使いやすいのではと考察していました。

イベントの中盤では、熊代さんから藤谷さんへ「推しは尊いと思いますか?」という質問が。主に女性のオタクの間で「推しが尊い」というフレーズがよく使われますが、これについても藤谷さんなりの考察がありました。

「推しそのものが尊いと思う人もいるし、推しが頑張っている姿が尊いと思う人もいるし、推しとメンバーとの関係性が尊いと思う人もいるわけじゃないですか。尊さっていうのは永遠じゃなくて、偶発的にパッと出るものを尊いと思うんじゃないかなと私は思います」(藤谷さん)

藤谷さんは熊代さんに、『「推し」で心はみたされる?~』をなぜ「推しを通して成長しよう」という自己啓発的なテーマで書いたのかと質問しました。このテーマの背景には、熊代さんが中学時代に経験した不登校があるそう。数年に一度古傷がうずき、「どうにかしなければ」と社会適応について書くのだといいます。

一方で、社会適応しすぎることもいいことばかりではないと考えているそう。その危険性を書いたのが、著書『人間はどこまで家畜か 現代人の精神構造』(早川書房)です。「2つの顔がそのまま2つの本になっちゃった」と熊代さん。

「『「推し」で心はみたされる?~』では、推しを社会適応に役立てる方法がありますよと書いていますが、それだけで推しを推しはかるのはダメだとも思うんですよね。もっと推しには面白いことがあるし、推しを推す中で、それだけでははかり知れない体験がある。それは藤谷さんの本に語っていただくのがいいんじゃないかと思います」(熊代さん)

2人の本をそれぞれ読んで、違った角度から「推し」を見てみると、新たな発見が生まれそうです。

(東京バーゲンマニア編集部)

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