「上司の指導が理解できない!」正社員登用の女性が悲鳴 その「ダメ出し」連続が意図したことは
J-CASTニュース / 2024年5月25日 12時0分
![写真](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/jcast/20240525jcast20242483817_0-small.jpg)
若手部下を育てるには
上司の言葉がけひとつで、モチベーションが高まった経験はありませんか?
実際のエピソードや感動的なエピソードを取り上げ、人材育成支援企業FeelWorks代表の前川孝雄さんが「上司力」を発揮するヒントを解説していきます。
今回は、正社員に抜擢登用した若手部下を後継者へ厳しく育て上げた上司のエピソードです。
契約社員を正社員に抜擢登用した理由とは
ある中堅メーカー企業で、新設された広報部の課長に就任した30代のKさん。
ユニークな製品を生み出し成長する同社で、広報部門を新たに立ち上げ、軌道に乗せる重責を担いました。
Kさんは、マーケティング先進企業の広報手法をベンチ―マークし、さまざまな広報媒体や制作物を調べるなどしながら、前例のないPR戦略を模索し始めました。
そんなKさんのもとに、契約社員として入社してきた20代女性のYさん。
文書やデータの入力作業など事務アシスタントを務める役割で、広報の仕事は全くの門外漢。しかし、Kさんは、Yさんの半年ほどの仕事ぶりから広報の素養と可能性を感じ、彼女を正社員にしたいと上層部にかけ合い、抜擢登用しました。
Kさんは、Yさん抜擢の理由を次のように語っています。
「社内外で、日々さまざまな人と接する広報では、人柄やコミュニケーション能力がとりわけ重要です。Yさんは即戦力となるスキルや知識は乏しいものの、そんなものは後から身につければなんとかなります。もっとも重視したのは、柔軟性と人一倍素直な気質。指摘されたことを素直に吸収して成長する、言ってみれば『すくすく系』です」(Kさん)
Kさんは、そんなYさんの長所を、彼女が働き始めてほんの数日で見抜いたといいます。
「Yさんのような真っすぐな性格の人は、育てれば真っすぐ上に伸びていきます。周囲の指摘を卑屈に受け止めたり素直になれない人は、曲がった方向に育ってしまう。その点、Yさんは上司として鍛えがいのある人材でした」(Kさん)
「私の仕事って、いったい何?!」
上司のKさんいわく「赤ちゃんのように日々目覚ましく成長する」Yさんでした。もっとも、Yさん本人にとって、最初は苦戦の連続でした。
たとえば、新製品のニュースリリースを作成した時のことでした。
「K課長に提出すると、『このキャッチはインパクトがないから変えて』と戻されます。必死に考えて修正案を翌日見せに行くと、今度は昨日と違う意見を言われるんです。そんなことが何度もあり、何を言われているのかが理解できず、ワケがわからなくなりました。『私の仕事って、いったい何?! どうしたらいい?』って悩む毎日でした」(Yさん)
このやりとりについて、Kさんは次のように語っています。
「Yさんには、もっと広報の仕事の本質に目を向けてほしかったんです。キャッチコピー表現など細かい部分にばかりに目が行きがちですが、そんなことより、まず誰に何を伝えるかという明確な意図や目的を持ってほしかった。自分の中でそれさえしっかりすれば、社内調整で表面的な部分は状況に応じて変化させても内容はブレないはずです」(Kさん)
YさんがKさんのアドバイスを理解できなかったのは、Yさんが「仕事」ではなく、単に「作業」をしていたからだと、Kさんは言います。
「目的意識を持ち、それを成し遂げるために自分なりに創意工夫してこそ初めて『仕事』と呼べます。彼女の中に、何がしたいか、そのためには何をすべきか、という明確な意識を育んでほしかったんです」(Kさん)
「まずはやってみて! 失敗したら責任は取る」
契約社員時代とは難度の異なる厳しさに直面し、四苦八苦していたYさん。でも、そこはやはり「すくすく系」。受け手としてはコロコロ変わるように思えるKさんの指示に戸惑いながらも、「何か意図があるに違いない」と信じ、決して投げやりにはなりませんでした。
「上司のKさんを信頼していたので、どんな言葉も受け入れることができたんだと思います」と、Yさんは振り返ります。
「広報の基礎すら知らなかった私に、『まずはやってみて!』と、実践から入らせるのがK課長のスタンス。何も教えられないまま、駆け出しの私が新製品を持ってメディアの前でプレゼンするなんて、相当なプレッシャーです。でも、Kさんの『いくら練習しても、本番を経験しないと何もわからない。失敗したら私が責任を取るから』という懐の大きさを感じたので、不安を抱えながらも現場に飛び込んでいくことができましたし、失敗からもたくさん学べました」(Yさん)
時折くじけそうになりながらも、悪戦苦闘する日々。Yさんには、実は激務だった前職を1年ちょっとで辞めてしまった苦い経験がありました。
そこで、今度はとにかく3年は頑張ろうと決意します。その間には、苦しい状況を抜け出せるときが来ると信じて。
「そうしたら、2年で目の前がパッと開けた気がしました(笑)。なるほど!と思えることが増えたんです」(Yさん)
その後、YさんはKさんに見いだされた素直さと柔軟性を生かし、自分にしかできない仕事の仕方を模索していきます。
このエピソードは5月26日公開の<驚くほど細かい上司の指導も、いまは感謝 20代女性社員を成長させた「上司力」のポイントは>に続きます。
(紹介するエピソードは実際にあったものですが、プライバシー等に配慮し一部変更を加えています。)
【筆者プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授。人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。
近著に、『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)、『Z世代の早期離職は上司力で激減できる!』(FeelWorks、2024年4月)など。
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