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新入社員の意向尊重か?企業の人員充足か? 人事担当者の悩み「配属先の伝達時期」...入社後4割も、改革進む企業続出

J-CASTニュース / 2024年6月7日 19時47分

新入社員の意向尊重か?企業の人員充足か? 人事担当者の悩み「配属先の伝達時期」...入社後4割も、改革進む企業続出

同期入社の仲間たち

運しだいの配属を「配属ガチャ」と不安視する就活生が増えたこともあり、選考過程で本人の希望を重視する取り組みをする企業が増えている。

そんななか、リクルートの就職・採用関連の研究機関「就職みらい研究所」が2024年5月30日、企業の人事担当者を対象にした調査「新入社員の入社後の配属について」を発表した。

就活生にいつ配属先を伝えるかなど、企業の各部署との調整に悩む姿が浮き彫りになった。

「学生の適性見極め困難」「確約しないと、内定辞退怖い」

就職みらい研究所の調査(2024年2月16日~19日)は、全国の従業員規模100人以上の企業で、2024年卒の新入社員(正社員)の採用業務に就いた人事担当者812人が対象だ。

まず、新入社員に配属先を伝達した時期を聞くと、「内定承諾前」が34.6%、「内定承諾後~入社前」が24.4%、「入社時以降」が41.1%と、入社後が一番多い結果となった【図表1】。

就活生は、内定を決める前に配属先の確約を希望する人が多いが、人事担当者としては、それが難しい事情がある。フリーコメントではこんな意見が相次いだ。

「1つの職種や勤務地に希望が集中した場合はどうするか」(機械器具製造)
「その学生に合っていて、より長く活躍できるか見極めるのが難しい」(同)
「各部署との連携や、望まれる人材の提案とすり合わせるのが困難」(同)
「専門的業務のため、学生がどの部門が自分に合うかの希望を出すのが難しいし、会社としても学生本人をよく把握してから配属先を決めたい」(情報通信業)

また、「希望と合っていない時に、入社辞退がある」(同)など、確約することが逆に内定辞退につながる懸念を指摘する意見もあった。

背景には、「学生が希望する部署への配属」を前提とした採用選考ではなく、「企業の人員充足中心の配属」を想定している企業が一定数存在する。

一方、新入社員の配属に関し、従来の人事制度や選考方法を見直す必要性を感じている企業は半数以上(51.8%)いる。【図表2】は、人事担当者に見直し状況を聞いたグラフだが、3割~5割が「見直しができていない」と答えている。

フリーコメントから、こんな危機感あふれる意見が聞かれた。

「従来のやり方、考え方では、将来的に人的資産が枯渇するのが目に見えて いる」(教育・学習支援業)
「新入社員と面談をして納得のいく配属をすべき。働く意欲向上と離職防止のために必須だ。会社がどういう目的で配属を決定したか知ってもらい、お互いの情報交換が必要」(卸売業)。
「個人に合った配置の見直しができていないため、離職率の高さに繋がっている」(運輸業)

このように、離職率の高さを懸念する声が多く寄せられた。

実際、新入社員の3年以内の離職率(2021年卒入社者)を聞くと、「見直しできていない企業」のほうが、「見直しできている企業」より、約10ポイント高かった【図表3】。

「希望通りでないと、断られる心配」の裏にある企業の自己都合

J-CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった就職みらい研究所所長の栗田貴祥さんに話を聞いた。

――人事担当者が新入社員に配属先を知らせた時期をみると、結局入社後が約4割になりました。この結果をどうみますか。就活生の希望を考えると、もっと早く知らせるべきでしょうか。それとも企業側の事情を考えると、やむを得ないでしょうか。

栗田貴祥さん 当研究所の別の調査で学生に聴取したところ、学生が希望する配属先確定時期としては、入社時以降はわずか約12%で、「入社を決める前まで」が約4割、「入社を決めた後~入社前まで」が約3割となっており、それに比べると入社後に配属先を知らされる割合が高いと感じます。

企業側にもさまざまな事情があるとは思いますが、配属確約の応募ルートを設ける、選考中に配属先について可能な範囲で明示するなど、多様化する個人の志向や価値観に合わせて、配属先に対する不安を取り除くための柔軟な対応をとっていくことが、採用戦略実現に向けた一手となり得るのではと考えています。

――人事担当者が、内定承諾前に配属先を確約する難しさを示したフリーコメントが興味深いです。「学生の適性の見極めが難しい」とか、「各部署との人材のすり合わせが困難」といった苦悩が浮き彫りになっています。栗田所長が特に注目した意見はなんでしょうか。

栗田貴祥さん 「希望通りでないと、断られる心配」というコメントが複数寄せられた点が、注目すべきポイントの1つだと考えています。

こちらの質問を設定した際には、昨今の配属確約採用の事例などを踏まえ、学生が希望する部署への配属確定を内定承諾前に行うことの難しさについて回答いただくことを想定していました。

こちらの質問を設定した際には、昨今の配属確約採用の事例等を踏まえ、学生が希望する部署への配属確定を内定承諾前に行うことの難しさについて回答いただくことを想定していました。

しかし、「希望通りでないと、断られる心配」という回答から読み取れるのは、企業の都合で決定した配属先を、内定承諾前に伝えることを想定して、その際の課題を回答いただいたのだと理解しております。

そもそもの新入社員の配属にあたっての前提の考え方には、企業によって大きなギャップがあることが改めてわかりました。

ご指摘のとおり、社内の関連部署との調整が難しいといった点などが背景にあると思いますが、新入社員の配属を、企業都合の人員充足観点のみで検討するのが当たり前だという考えを改める必要があると考えています。

単なる人員充足ではなく、適性と志向を尊重した配属コミュを

――なるほど。企業都合か、新入社員中心の考え方か、という点のギャップですね。ところで、新入社員の配属について従来の方針を見直す企業が増えています。人事担当者のフリーコメントでは、見直しをしないと「会社の存続にかかわる」といった危機感が伝わってきます。

栗田貴祥さん 構造的な人手不足を背景に、新入社員の配属についても見直す必要性を感じている企業が半数以上という結果になりました。

具体的には、当研究所の『就職白書2024』の採用活動の振り返り調査では、2024年卒の採用活動では、採用充足企業の割合は36.1%と、調査開始の2012年卒以来で最低値を更新し、厳しい状況が続いています。

激しい採用競争の中、新入社員の早期退職は、以前に比べより一層深刻な問題になっており、社員により長く活躍してもらう必要があると、多くの企業が考えている結果の数字だと捉えています。

――たしかに、見直しが実施できているかどうかで、「3年以内の早期離職率」に大きな差がありますね。「就活生・新入社員の希望が重視される」ことと「なぜそのポジションに配属されるのかの説明・納得感」が大事だとリポートでは報告しています。

栗田貴祥さん 「希望が重視される」ことの差が大きい背景には「人員充足観点」のみで配属を決定する企業が一定数存在することが考えられます。

同様に、「説明する・納得感を確認する」ことについても「人員充足観点」のみで配属を決定した場合に、配属理由の説明や本人の納得感の確認が難しいという事情があると推察します。

いずれについても、本人の希望を叶えることができるか否かに関わらず、企業として従業員のキャリア形成を支援する姿勢を伝えるなど、単なる人員充足ではなく、新入社員の適性と志向を尊重した配属コミュニケーションを行うことが重要だと考えています。

総合商社でも進む、選考コースの多様化

――報道によると、総合商社でも配属先を採用時に確約したり(住友商事)、志望する分野を選べる「部門別選考」と「通常選考」を用意したり(三井物産)、また、パナソニックHDは約150の選考コースを用意したりするなど、大きな変化が起こっています。栗田所長から企業への具体的なアドバイスをお願いします。

栗田貴祥さん 学生の志向や価値観が多様化する中で、それぞれの志向に応じて選べる採用の在り方が重要であると考えています。

配属確約の応募ルートを設ける、選考中に配属先について可能な範囲で明示するなど、多様化する個人の志向や価値観に合わせて、配属先に対する不安を取り除くための柔軟な対応をとっていくことが、採用戦略実現に向けた一手となり得るのではと考えています 。

――今回の調査で、特に強調しておきたいことがありますか。

栗田貴祥さん 企業は、配属を必ずしも学生の内定承諾前に確定すべきであると主張したいわけではありません。配属確約にあたっての課題などをお示しすると、配属を入社前や内定承諾前に配属先を伝えなければならないのかという疑問を持たれる企業の方もいらっしゃると思います。

もちろん配属先が早めに分かることは学生にとっても好ましいことだと思います。しかし、配属を入社前に確定させること以上に、なぜここで働いてもらいたいのかを、企業の人員充足の都合だけではなく、本人の適性や意向を踏まえたコミュニケーションを取ることが非常に重要です。その前提があった上での、配属確約だと考えています。

個人にとってよりよい職場づくりをすること、そしてそれを学生に解像度高く伝えていくことが、企業が選ばれるために重要なポイントだと考えています。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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