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30代上司を「ふつうやりづらい」50代部下が徹底サポートしたのはなぜ 接待ノウハウ、強気の顧客交渉まで指南

J-CASTニュース / 2024年6月9日 12時0分

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「上司力」を発揮するには

上司の言葉がけひとつで、モチベーションが高まった経験はありませんか?

実際のエピソードや感動的なエピソードを取り上げ、人材育成支援企業FeelWorks代表の前川孝雄さんが「上司力」を発揮するヒントを解説していきます。

今回は、若手社員が失敗から学び、リーダーへと成長することを支えてくれた先輩たちとのエピソードです。

チームには親子ほど年齢が離れた年上部下が!

<深夜、顧客企業からクレーム電話! 「大失敗の原因は自分なのに...」無言の先輩、叱られなかったのはなぜか>の続きです。

その後、順調にステップアップを重ねたMさん。

入社から3年間のプログラマー経験を積み、4年目にはお客様と直接やりとりをするコンサルタントに。そして、5年目にしてチームリーダーに抜擢され、約20人のチームを束ねる立場になったのです。

そのチームには、数々の現場経験や海外勤務経験もこなしてきた、生き字引的存在の大先輩Tさんがいました。

Tさんは、ある大型顧客に提供していた旧システムの開発・保守を長らく担当。これからMさんのチームで開発する後継の新システムへの橋渡し役をするために、同じチームに配属になったのでした。

Tさんは間もなく定年を迎える世代で、Mさんとは親子ほどの年齢差。一般的には、やりづらいとされる年上部下。

入社5年目の若手リーダーのMさんにとっては、さぞかしコミュニケーションに苦心する存在になるかと思いきや...幸運なことに、とても相性が合ったのです。

Tさんは、Mさんをリーダーとして認め、こう語っています。

「Mさんは、メンバーを束ねるリーダーとして、非常に落ち着いていて、『なめらか』でした。普通はリーダーになったばかりの頃はしんどい思いをし、余裕がないものです。

でも、Mさんは仕事や人間関係の本質がわかっているし、視野も広いと感じました。リーダーの素養があると思います。私としては、職場で自分の子どもを応援するような気持ちも半分ありました(笑)」(Tさん)

丁寧語、強気メールの出し方まで、教えてもらう

Tさんの言葉通り、Mさんは若手リーダーに欠かせない、ある利点を備えていたと言えそうです。

それは、人生の先輩の懐に素直に飛び込んでいく姿勢。

生来のものか、意識して心がけたものかに関わらず大事な点です。

当時を振り返るMさんの言葉からもうかがえます。

「私は、社会的な素養がないうちにチームリーダーになってしまいました。そこで、言葉使いから何からTさんに手取り足とり教えていただきました。お客さまに外国語で送るメールが失礼な内容になっていないか。『強気のメール』を出すときにいかに柔らかく見せるかなど(笑)。落としどころに持っていくためには、どうすればいいか。経験豊富なTさんのアドバイスは、本当に助かりました」(Mさん)

つまり、リーダーだからといって決して年上メンバーに対して高圧的な態度に出ることなく、むしろ自分にない経験を尊重し、その知恵に頼っていたのです。

頼られればメンバーは意気に感じ、力を貸してくれるもの。リーダーの仕事は、メンバー一人ひとりの強みを活かして組織のパフォーマンスを最大化すること。Mさんはそれを心得ていたのです。

「自分にできないことは、何でもTさんに訊こうと考えました。おかげで、ほんとに細かいことまで、いろいろ教えていただきました。会社や仕事のこれまでの経緯を詳しく教えてもらえるのは、とても助かりました。

お酒の席では、ビールはラベルを上にして注ぐんだよとか、日本酒のお銚子は右手で必ず注ぐものとか(笑)。お客様とのコミュニケーションには細かい配慮が大事な時もあるので、マナーも勉強になりました」(Mさん)

必要なのは、自分で試行錯誤して学ぶ経験を積むこと

以上のMさんと2人の先輩とのエピソードには、それぞれから預かった振り返りのコメントがあります。それを紹介しながら、いくつか気づいた点を書き留めておきましょう。

Mさんが入社2年目の大失敗で、先輩のKさんから学んだのは、仕事やお客様に向き合う姿勢といえるでしょう。あえてMさんを叱らなかったKさんは、その時を振り返り、次のように語っています。

「あれは、確かに大きな失敗でした。しかし、大事なのは、何が原因かを確認して、システムを使っているユーザーのサービスをできるだけ早く改善すること。まずそれに全力で取り組むことが、お客様と仕事に対して一番大事です。それをきちんと分かってほしかった。

それに、若手とはいえ大人ですから、ミスが発覚した時点で本人はもう自分の責任だったと反省していますよ。取りたてて言わなくても、真摯に今後に備えるはず。Mさんはそれができる人だと信じていました。将来リーダーになる素養もあった。だから必要なのは、自分で試行錯誤して学ぶ経験をたくさん積むことだったんです」(Kさん)

「先輩力」は、次世代に引き継がれていくもの

また、Mさんは入社5年目でリーダーに抜擢された後も、部下の大先輩Tさんから大いに学びました。

Mさんが自分のリーダーの肩書や立場にこだわらず、Tさんを仕事と人生の先輩としてリスペクトしていることがTさんにも伝わり、フランクで良好な関係になった様子がわかります。

大先輩Tさんは、Mさんについて次のように話しています。

「うちの会社はIT企業ということもあり、技術は日進月歩です。エンジニアとしてベテランだから最先端の技術に通じているというわけではありません。

また、私のようにバブル期に大量に入社した定年間近の50代後半が沢山いる一方で、Mさんのようにチームリーダーを担う30代が少ない。当然年功序列ではない組織が多くなり、20代半ばまでのZ世代は増えつつあるので教える負荷も大きく、管理職になりたがらない人も多いんです。

だから、Mさんのように求められる役割から逃げず、前向きに取り組む人は応援したいんです。何かと頼られると嬉しいですし、私が経験してきたことで、役立つことなら何でも伝えておきたいと考えているんです」(Tさん)

最後に、Mさんのコメントです。

「先輩たちのおかげで、私はとても良好な職場環境で働き成長できて本当に幸運です。だから、これからはメンバーにとって働きがいのある環境を、自分がつくっていく番だと考えています。リモートワークも多く、働き方改革で余裕のない現状ですが、そのなかでも、後輩たちにチームで働く楽しさを伝えていきたいと思います」(Mさん)

職場の人間関係は、難しい場合が多いもの。Mさんが言うように、幸運なケースなのかもしれません。

しかし、良好な人間関係をMさん自らが作り出している側面も大きいはず。あなたも、仕事と後輩を大切に思う先輩に出会い、心を動かされた経験があるのではないでしょうか。

そんな「先輩力」は、順送りに受け継がれていくものでしょう。

私たち一人ひとりが、チームで働く楽しさを次世代に伝えていきたいものです。

(紹介するエピソードは実際にあったものですが、プライバシー等に配慮し一部変更を加えています。)



【筆者プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授。人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。
近著に、『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)、『Z世代の早期離職は上司力で激減できる!』(FeelWorks、2024年4月)など。

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