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「オンライン面接では、面接官を見るな!」 カメラ見て話したほうが評価大幅アップ...広島大学の研究で明らかに

J-CASTニュース / 2024年6月12日 19時37分

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オンライン面接では、視線が大切

大学生の就職活動で、最終選考の前にオンライン面接でふるいをかける企業が増えている。

広島大学大学院の研究グループは、オンライン面接では、受験者の視線がカメラ方向を向いていない場合、評価が大幅に低下することを明らかにした。

パソコン画面の面接官ではなく、パソコン上部のカメラに視線を合わせることが高評価を得る秘訣だと、研究者は語る。

画面に映る面接官と、お互いの視線がずれている

この研究報告「オンライン面接では、カメラを見て話したほうが高評価」(2024年6月3日付)を発表したのは、広島大学大学院人間社会科学研究科の山根典子教授(言語学・音声学)と、同研究科の進矢(しんや)正宏准教授(スポーツバイオメカニクス)の研究グループだ。

オンライン通話では、多くの場合、カメラはコンピュータスクリーンの上にあり、画面に映る会話の相手の顔とは位置がずれており、お互いが視線を合わせることができない。画面に映る相手に、自分を見ているようにするには、カメラを見る必要がある【図表1】。

そこで研究グループは、オンラインの就職面接で、受験者の視線方向が面接での評価にどのような影響を与えるかを検証した。大学生12人(男女各6人ずつ)に自己アピール映像を作成。

視線がカメラ方向(CAM条件=視線が相手と合う)と、画面方向(SKW条件=視線が下向き)の2つの条件で、60~90秒程度の模擬面接映像を録画した。また、その映像から音声のみを抜き出した動画(VO条件)も用意した。これら3つの映像および音声を、面接官役の社会人38人に視聴評価してもらった。

その結果、採用可能性スコアの点で、視線が合う映像や音声だけの動画に比べ、視線が下向きの映像の評価は低かった【図表2】。これは統計的に意味がある結果だという。

つまり、オンライン面接では、つねに視線が逸(そ)れている場合は、否定的に評価される可能性が高いのだ。

また、興味深いことに音声だけの動画も、視線が合う映像と同程度に評価がたかかった。さらに、評価される側と、評価する側の男女別の違いを分析すると、女性の受験者や面接官では、この視線の影響が男性より顕著に出る可能性が見られた【図表3】。

これはいったいどういうことだろうか。

対面面接の作法は熟知、しかしオンラインに疎い学生

J‐CASTニュースBiz編集部は、研究を行なった広島大学大学院の山根典子教授(言語学・音声学)に話を聞いた。

――そもそも研究を始めたきっかけは何ですか

山根典子さん 広島大学大学院では学際的研究(専門分野を越えた共同研究)を奨励していまして、私の言語学のゼミでも何かやろうと、スポーツ統計に詳しい進矢正弘宏准教授(スポーツバイオメカニクス)に声をかけました。言語学と統計で何かできないかと。

ゼミの学生も3年生になって就職活動を始めると、オンライン面接がよくあります。学生たちは中学、高校、大学受験を通して対面面接の際の作法はよく叩き込まれているのです。ドアの開け閉めはこうするとか、お辞儀の角度は何度にするとよいとか。

しかし、たとえば目線はどうするかといった、オンライン面接の作法はどうしたらよいのかがよくわからず、練習ができていない学生が多いのです。

――コロナ禍の時に、オンライン授業はよくやったのではないですか。

山根典子さん 英語のスピーキング授業をよくやりました。しかし、みんなパソコン画面の私に向かって話すから、私から見ると、うつむいて話すばかりで、せっかく英語のコミュニケーション力がある学生でも伝わっていないと感じました。これは、目線が非常に大事なのだなと。

そこで、進矢先生と相談し、オンライン就職面接で受験者の視線が面接官の評価に与える影響を科学的に検証する方法を考案したのです。ちょうど、ゼミの学生で人材派遣会社に内定した学生がいたので、面接のプロの社会人38人に面接映像を評価する面接官になってもらいました。

面接では、時々アイコンタクトを心掛ける

――格好の協力者が得られたわけですね。その結果、やはりカメラのほうをしっかり見て、相手と視線を合わせたほうが高い評価が得られるということですが、その理由は何ですか。

山根典子さん 専門用語では、「ノンバーバル(非言語的)コミュニケーション」と言います。たとえば、文章や言葉だけより、顔の表情や声の大きさ、身振り手振り、ジェスチャーなどによるコミュニケーションを加えると、相手に訴える力がさらに強くなります。

視線もその大切な1つで、相手と目線をしっかり合わせたほうが、好印象を与えることが先行研究で明らかになっています。顔写真でも、視線がこちらを向いていたほうが強い印象を残しますね。

――それはわかりますが、カメラ目線で面接官としっかり視線を合わせたケースと、映像を消して音声だけにしたケースとで、全く同じ評価だったのはどういうわけでしょうか。

山根典子さん 正直、この結果には私も驚きました。目の前に受験者がいなくても、音声で話す内容だけでプロの面接官は同じ評価を下したわけですから。つまり、受験生が何を喋っているのか、その内容をしっかり判断して正当に評価しているということです。

――それならば、就活生がスクリーンを注視して、視線が下を向いている状態でも同じではないでしょうか。話す内容が同じわけですから。

山根典子さん いいえ。そこが違う点が、今回の研究では重要なポイントになります。面接官からは受験生が下を向いているように見えると、視線方向によるバイアスがかかり、評価を落としてしまうのです。

つまり、視線を合わせると、音声だけの場合と全く同じだから、特にプラスの評価になるわけではないが、好印象を与える。しかし、うつむき加減になると印象が悪くなり、マイナスの評価になりかねない、というわけです。

就活生にとって損ですから、それを避けるために、ぜひ、時々アイコンタクトをすることを心掛けてください。画面上の相手を見ている時は、相手からは視線が合ってないように見られていることを、常に意識しましょう。

視線を合わせることが、男性より女性に重要な理由

――なるほど。ところで視線方向による評価への影響は、男性に比べて女性の受験生や評価者に特に顕著とあります。なぜ女性に多いのでしょうか。

山根典子さん これも正直、わかりません。ただ、先行研究では、女性は赤ちゃんの時から相手と視線を合わせる傾向が強いことがわかっています。たとえば、男性がそっぽを向いて話す場合でも、女性は面と向かって話す場合が多いとされています。

親密性や共感性の面で、女性には視線の影響が大きいのかもしれません。ぜひ、人間学や人類学の専門家の研究に期待したいです。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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