トラブル続きのJAL、パイロット・CAに5年半ぶり「滞在先禁酒令」 前回は解除まで5か月
J-CASTニュース / 2024年6月13日 16時34分
![写真](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/jcast/20240613jcast20242485929_0-small.jpg)
飲酒トラブルを起こしたパイロットはボーイング777-300ER型機に乗務していた(写真は同型機)
日本航空(JAL)で安全をめぐるトラブルが相次ぎ、国交省が2024年5月、行政指導にあたる厳重注意を行った。注意の対象になったトラブルは5件。そのうちの1件が、パイロットが滞在先の米国で飲酒トラブルを起こし、その影響で折り返し便が欠航になった事案だ。
JALが6月11日に国交省に提出した再発防止策では、運航乗務員(パイロット)や客室乗務員(CA)に対して、滞在先での「禁酒令」が出ていたことが明らかになった。同様の禁酒令は18年11月以来5年半ぶりで、この時は解除まで5か月かかっている。
滞在先のホテルで酔って騒ぎ、警察に通報される
問題になった事案は、羽田発ダラス・フォートワース空港行きの便を運航したJAL機長が4月22日夕方から翌23日未明(現地時間)にかけて滞在先のホテルで酔って騒ぎ、警察に通報された影響で折り返し便が欠航になった、というもの。宴会は深夜2時まで続いたが、乗務予定の便までは丸1日以上間隔があり、JALのアルコールに関する規定に抵触したわけではなかった。ただ、JALとしては「心身の状態を確認する必要がある」として乗務から外すことを決めた。
これ以外に厳重注意の対象になった事案は、福岡、米シアトル、サンディエゴで起きた滑走路誤進入や停止線越え計3件、羽田空港で隣り合っていたJAL機同士の翼が接触した事案。報告書では、これらの事案に共通する要因を2つ挙げている。ひとつは「現場が安全を大前提とし立ち止まれる環境がつくれていない」点。これは「重要なタイミング(滑走路停止線の通過、航空機のプッシュバック開始等)で十分な注意が向けられていない」事実が認められたことによる。
もうひとつが「リスクマネジメントが十分に機能していない」点で、「過去および至近で類似事例が発生していた」ことが、その理由だとされた。
報告書では事案ごとの対応策も列挙。「緊急対応」「短期対応」「中長期対応」の3つの段階があり、飲酒事案では「緊急対応」のひとつとして
「運航乗務員、客室乗務員の当面の滞在先での禁酒」
がある。禁酒令が出たのは4月26日。事案の発生が発表された日だ。立花宗和常務は記者会見で、
「(アルコールの)検知事例ではない、という前提はあるものの、社会にご迷惑をおかけした要因そのものがアルコールに起因している」
などと説明した。
対策浸透には「皆様が想像されているよりも、はるかに時間がかかる」
短期の対応として、7月末までにパイロットとCAに対して「理解度および定着度の確認」を行い、中長期対応として10月末までに全社員を対象に規程や大量飲酒の危険性に関する教育など行う、としている。
禁酒令解除のメドについては次のように話し、ある程度時間がかかるという見通しを示した。
「対策の進捗等をモニターしながら、かつ、現場に知識、考え方、あるいは社員同士の声のかけ方といったものが、ある程度浸透したであろうということを前提に、そういったところ(解除)に向かっていくのではないか」
「客室乗務員や運航乗務員は、上長と会うタイミングすら、ほとんどないような、常に出入りしている状態。こういった人たちに、しっかりとこういったもの(対策)を打ち込んでいくというのは、皆様が想像されているよりも、はるかに時間がかかる」
直近でJALのパイロットやCAに対して同様の禁酒令が出たのは18年11月1日。18年10月に副操縦士から基準値を大幅に超えるアルコールが検出され、英国当局に逮捕・起訴された事案がきっかけだ。解除されたのは5か月後の19年3月31日のことだった。JAL広報部は、このタイミングでの解除になった経緯を
「飲酒に関する知識強化や意識改革等の取り組みを進めてきたことに加え、2019年4月1日の通達改正に伴うアルコール検査の義務化に向けて新しいルールと運用体制が整ったことから、当該措置を解除すると判断いたしました」
と説明している。
(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)
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