完全個室で防犯対策は後回しだったネットカフェ、相次ぐ「人質立てこもり事件」受け実店舗で訓練
読売新聞 / 2024年6月15日 18時48分
インターネットカフェの防犯対策を強化する取り組みが続いている。埼玉県内では2021年6月と22年6月、ネットカフェの個室で店員が人質にとられる立てこもり事件があった。県警は14日、実際の店舗を使った訓練を行った。(宮川徹也、吉田恵実子)
訓練が行われた熊谷市新堀のネットカフェ「自遊空間 熊谷籠原店」には鍵付きの個室ブースが並ぶ。個室に誘い込もうと声をかける犯人役の男に対し、女性店員は「お客様と一緒に入れません」とはっきりと断った。それでもしつこく声をかけられると、店員は防犯ブザーを鳴らした。店長の田中史明さん(50)は「1人で室内に入らないことを徹底したい」と顔を引き締めた。
ネットカフェの多くは、外部と遮断された「完全個室」を売りにしてきた。その一方で、防犯対策は後回しにされてきた。県内で立て続けに2件の立てこもり事件が発生したことなどを受けて、防犯面での強化にむけた議論が始まった。
県は22年10月、「防犯のまちづくり推進条例」を改正し、23年4月には店舗整備に関する指針を策定した。指針では、客がいない個室に入る際も侵入防止のため施錠するなどの基準を設けた。ただ、利用客の確認については「会員制度の導入または利用者名簿の備え付けにより、本人確認に努めるものとする」と努力義務にとどめた。一方、東京都では条例により、店に本人確認の徹底を義務付けている。
業界団体「日本複合カフェ協会」(東京)は21年9月、店舗運営の指針を改定。鍵のある完全個室に店員が立ち入る必要があるトラブルの場合、利用客を個室外に誘導するなど、安全確保策を強化した。
県と県警は23年6月、県内の約80店舗を訪問。防犯対策や従業員の安全確保のために必要な措置が取られているかを確認した。県によると、「非常ボタンが作動しない」「本人確認が不十分」などの改善点があったという。県の担当者は「立てこもり事件に対する抑止力になれば」と、これからも指針の順守を働きかけていくという。
さいたま市内のネットカフェで働く女性店員は「事件があって、怖いとおもってきた。どんなに忙しくても、県や団体の指針を徹底していきたい」と話す。
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