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プロアマ問わずの文学の祭典「文学フリマ」の成長続く……短歌や俳句の文芸サークル、老舗文芸誌の参加も

読売新聞 / 2024年6月24日 15時30分

 小説やエッセーをはじめ文学作品を展示販売する「文学フリマ東京38」が今年も東京都大田区の東京流通センターで開催され、1万2200人が訪れた。2002年に始まり、近年は短歌や俳句などの短詩サークルや出版社の出店が増えた。文学の世界で定着するとともに、交流の場として成長を続ける。(池田創)

開催22年 短歌・俳句も続々

 各ブースの長机の上に、小説、旅行記、詩集などがずらりと並ぶ。表紙を大きく印刷したポスターが目を引く。5月19日の会場では、開場間もない昼過ぎの時点で、来場者の肩が触れ合うほどのにぎわいだった。

 文学フリマは2000年前後に巻き起こった「純文学論争」がきっかけとなり、既成の文壇や文芸誌の枠にとらわれず〈文学〉を発表でき、プロ・アマの垣根も取り払い、すべての人が〈文学〉の担い手となれるイベントとして構想された。文芸評論家の大塚英志さんの呼びかけで第1回は2002年に開催され、その後、規模を拡大しながら年に複数回、東京だけでなく大阪や福岡、岩手など地方でも開催されている。

 「自分が〈文学〉と信じるもの」と文学を定義し、出店者が自らの手で作品を販売する。作品は小説、詩、エッセー、アニメの研究書など多岐にわたり、一般流通に乗らない自費出版の作品が多く、ここでしか手に入らない冊子もある。

 出店者数は増え続けており、東京会場は、開催当初(02年)の70から、今回は1878に増えた。芥川賞作家の高瀬隼子さんなど、文学フリマで出店の経験を持つプロ作家も出ている。

 短歌や俳句に親しむ人の出店も目立ち、今回は約120の出店があった。

 俳人の (とき) ()智哉さん(55)は「書店で売っていない、思わぬ本に出会えるのが魅力です」と語る。今回は俳句同人誌「オルガン」で参加し、作品や座談会を収録した冊子を販売した。「短詩系は作品を手に取って、ぱっと見て内容や雰囲気をつかみやすいので相性がいい」と感じている。

 現代俳句協会は今回初めて参加し、若手俳人の句集を中心に販売した。大石雄鬼事務局長(65)は「若い方に足をとめてもらい、完売となる本が出るなど予想以上の盛況ぶりだった」と話す。句集は書店に並ぶことが少なく、手に取ってもらえる貴重な場だという。

 出版社のブースが増えているのも近年の特徴だ。老舗文芸誌「文学界」も今回初めて参加した。文学界新人賞の受賞者インタビューなどを掲載した小冊子、作家のサイン入りバックナンバーなどを販売した。同編集部は「普段は読者と直接交流することがあまりないので、新鮮で楽しかった」と話す。

来場1万人超

 文学フリマ事務局によると、ここ数年で東京開催の来場者数は1万人を超えており、経費の増大を受け、5月開催は一般入場を有料化(1000円)した。有料化により、来場者数が減少するのではないかとの懸念もあったが、結果は前回とほぼ横ばいだった。望月倫彦代表(43)は「前回とほぼ遜色ない数字が出てホッとしている」と振り返った。ある出店者は「(入場料がかかる分)もとを取って帰ろうという雰囲気を感じた」と話す。

 増え続ける来場者数に対応するため、12月の東京開催は東京ビッグサイトに会場を移すという。7月には四国で初開催となる文学フリマ香川も予定している。望月代表は「全国で文学フリマを安定して続けていくことで、文学の世界への人材輩出や、本を読むという文化が広がるなど、良い影響が出てほしい」と語る。

 日本の文学はかつて「白樺」をはじめとする同人誌から多くの作家が出発した。文学を楽しむ人々が集まる場所がどのような成長を続けていくか、今後見守る楽しみが一層広がりそうだ。

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