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上高地のイワナ減少、大正から昭和に放流された外来種が影響…研究者「絶滅防ぐ対策を」

読売新聞 / 2024年6月24日 8時44分

 イワナは、カワマスとはエサを巡り競争する関係にあり、ブラウントラウトからは捕食される――。北アルプス・上高地(長野県松本市)の在来イワナの減少に外来マスが影響している詳しい実態が、筑波大や県環境保全研究所などのチームの研究で明らかになった。論文が国際学術誌に掲載された。(野口賢志)

 研究は筑波大山岳科学センター菅平高原実験所のピーターソン・マイルズ・イサオさん(32)=現・富山大助教=や、県環境保全研究所の北野聡さん(57)=現・諏訪湖環境研究センター調査研究部長=らが、2021年6〜9月に上高地・梓川上流域の河童橋から明神池周辺の支流6本で実施。計291匹の生息域やエサの種類を水中観察や胃の内容分析で調べた。

 その結果、イワナとカワマスは、川の中間層や、川底からエサを取ることが多く、餌場が重なっていた。主にトビケラやカワゲラなどの水生生物を食べる点も似通っており、エサを奪い合う食性の競合関係がわかった。

 ブラウントラウトがエサを取る場所は川の中間層と表層で、主にカメムシやチョウをエサにしていた。大型のものはイワナやカワマスなどの魚や、カエルやサンショウウオなどの大型陸生生物も捕食しており、渓流の生態系全体に影響している可能性が示された。

 魚種の内訳は、ブラウントラウト130匹、カワマス141匹に対し、イワナは雑種を含めて20匹しか確認されなかった。40年前の調査では、イワナは雑種を除いても半数近くを占めており、減少ぶりが改めて浮き彫りになった。

 北米原産のカワマスと欧州原産のブラウントラウトは、イワナと同じサケ科の魚で、19世紀末頃に水産資源として国内に持ち込まれた。上高地にも大正時代から昭和にかけて放流されている。

 カワマスはイワナと極めて近縁で交雑しやすく、ブラウントラウトは大型のものだとイワナやカワマスの約2倍の体長1メートルほどに成長する。これまでにも上高地のイワナの減少に生存競争の脅威となる外来マスの影響があると考えられていたが、詳しい実態は分かっていなかった。

 上高地は国立公園の特別保護地区であることから、ピーターソン助教は「在来イワナの絶滅を防ぐ対策が求められる」と強調する。今後は遺伝子分析による生息分布調査などを通して、イワナの保全管理に取り組む考えという。

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