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自民執行部内に溝、首相は維新に「譲歩」決断できず…幹部「麻生氏がさらに怒ると考えたのでは」

読売新聞 / 2024年6月19日 6時50分

 政治資金規正法改正案の採決を巡り、自民党は衆院で共同歩調を取った日本維新の会と参院で決裂した。異例の展開となった背景には、自民執行部内に生じた他党との交渉姿勢に関する食い違いを岸田首相(自民総裁)が埋められず、維新に踏み込んだ対応が取れなかったことがある。

関係悪化

 採決に先立つ18日の参院政治改革特別委員会の質疑。維新の音喜多政調会長は、自民、維新両党の党首間合意である調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)改革について、今国会の実現を見送った自民を「裏切り」と厳しく批判した。首相は「改革を進めたい。この思いは全く偽りはない」と釈明したが、維新は採決で反対に回った。

 改正案に維新を抱き込む戦略は、衆院段階では自民執行部の共通認識だった。5月29日夜、首相は麻生副総裁、茂木幹事長と会食し、維新の協力を得る方針を確認。茂木氏は「公明党が採決で反対しても、維新を巻き込めば法案は通せる」と主張し、その場で首相最側近の木原誠二・幹事長代理に電話をかけ、維新との交渉を指示した。

 当時、公明は政治資金パーティー券購入者の公開基準額の大幅引き下げを自民に迫っていた。麻生、茂木両氏は公明への譲歩に反対で、維新の抱き込みには、公明に「決裂も辞さず」との姿勢を見せて揺さぶる狙いがあったとみられる。

 ただ、首相は「連立政権の基盤はゆるがせにできない」として公明に譲歩した。その後、麻生氏は公然と不満を漏らすようになり、首相は後見役との関係悪化という問題を抱えた。

首相、孤立も

 参院に審議が移ると、維新は旧文通費改革の今国会中の断行を自民に強く要求した。維新以外の主要政党は改革に腰が重く、会期内の決着が困難な中、会期延長に否定的な首相は「(自民と維新の)合意文書には実施時期が書かれていない」として、改革の実現時期を明言しなかった。

 衆院側だけで一定程度議論を進める案も浮上したが、麻生、茂木両氏は事態を静観。代わって維新と調整に当たったのが、森山総務会長と渡海政調会長だった。

 両氏は「維新の要求通り進めた方が支持率は上がる」との立場で、森山氏は首相が外遊から帰国した16日に面会を調整。しかし、面会はかなわず、電話での説得も不調に終わった。森山氏はパーティー券購入者の公開基準額の引き下げを巡っても、公明への配慮を求めていた。自民幹部は、「麻生氏との関係悪化に悩んでいた首相は、森山氏の主張を取り入れれば麻生氏がさらに怒ると考えたのだろう」と推測する。

 維新との調整に奔走した森山、渡海両氏は首相に失望しているとされ、党内では「首相が今後、執行部内で孤立するのではないか」と見る向きもある。

維新幹部に批判 「詰め甘かった」

 日本維新の会は、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)改革を最優先に自民党への圧力をかけたが、不発に終わった。維新は自民批判を強めるが、党内外からは「維新執行部の詰めが甘かっただけだ」との見方も出ている。

 維新の馬場代表は18日の党会合で、「我々が垂らした『くもの糸』を岸田首相が自ら切った」として、決裂の原因はあくまで自民側にあると強調した。

 両党関係者によると、自民の交渉窓口は木原誠二・幹事長代理らで、合意文書の原案には旧文通費の改革について「今国会中に結論を得る」との記述があった。実際の合意文書では期日が削られたが、馬場氏は「(自民側が)『信用してくれ』ということで一歩引きさがった」と説明する。藤田幹事長は18日、国会内で記者団に「前提が変われば態度が変わるのは当然だ」と述べ、衆参で賛否が異なった対応に理解を求めた。

 一方、党内からは「結果的に抜け穴だらけの自民案を容認してしまった」(中堅)として、執行部の対応を疑問視する声が出ている。吉村洋文共同代表(大阪府知事)は18日、大阪府庁で記者団に「今回の件は維新内部で総括した方がいい」と述べた。

 他党も冷ややかだ。国民民主党の玉木代表は18日の記者会見で「(合意を)文書で結んだ以上、文言が全てだ」と指摘。立憲民主党幹部は「衆院で賛成に回ったことが世論から予想以上に批判され、慌てて方針転換したように見える」と突き放した。

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