若き日の陛下、英国留学で君主のあり方学ぶ…「孫に接するような」エリザベス女王から薫陶
読売新聞 / 2024年6月19日 5時0分
[令和の天皇 日英の絆]<上>
天皇、皇后両陛下は22日から8日間の日程で、英国を訪問される。当初は令和初の公式訪問として2020年に計画されたが、新型コロナウイルスの感染拡大や招待者のエリザベス女王の死去で延期されていた。チャールズ国王の新たな招待で、5年越しで実現する親善訪問。そこに込められた陛下の思いや皇室と英王室の交流の歴史をたどる。
1983年5月下旬。英留学出発を翌月に控えた天皇陛下は、お住まいの東宮御所で、英米法と憲法の権威、伊藤正己・東京大学名誉教授の講義を受けられた。テーマは憲法の第1章「天皇」と第2章「戦争の放棄」だった。上皇さまも同席された。
陛下は当時23歳。侍従として陪席した手塚英臣さん(90)は「平和憲法が定める象徴天皇制を理解した上で、英国の立憲君主制度を学んできてほしいという、上皇さまの父親としての配慮を感じた」と証言する。
ロンドンに降り立った翌日、陛下は英国議会の開会式を見学された。陛下は留学記「テムズとともに」で、エリザベス女王が臨んだ儀式の描写と、<一連の所作に、ピューリタン革命にまで遡る、王権から自立した、議会を主体とする政治の理念が表されている>という考察をつづられた。
陛下は留学中、女王からバッキンガム宮殿の茶会や園遊会に誘われた。静養先のバルモラル城で一緒に過ごされた84年夏には、ピクニックやバーベキューを楽しみ、女王の運転する車の助手席にも乗られた。
女王の元侍従は、陛下を迎えるため、こまやかに指示する女王の姿を覚えている。「陛下に接する態度は、祖母が孫に接するような愛情を感じさせた」という。
皇室と英王室の交流は、明治政府が1869年、ビクトリア女王の次男アルフレッド王子を初の国賓として迎えたことに始まる。
昭和天皇が1921年、20歳で訪英すると、ジョージ5世は第1次大戦後の国内の窮状も視察して研究するよう勧めた。昭和天皇はその半世紀後、「ジョージ5世から立憲政治のあり方を聞いたことが、終生の考えの根本にある」と語った。
上皇さまは53年、エリザベス女王の
天皇陛下が女王と最後に会われたのは、2001年の訪英だった。ウィンザー城で日英交流の歴史を伝えるコレクションの説明を受けられた。今月下旬の公式訪問では、城内の女王の墓への供花を強く望まれた。
陛下は女王の悲報に接した時、親しみやすさと威厳をもって務め抜いた女王への敬意を口にされたという。公私にわたりその薫陶を受けた留学は、祖父や父の若き日の訪英のように重要な意味を持つことになる。
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