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規正法成立 ルール順守は最低限の責務だ

読売新聞 / 2024年6月20日 5時0分

◆積み残した課題の解決を急げ◆

 自民党の政治資金パーティーを巡る事件で、今国会最大の焦点となっていた改正政治資金規正法がようやく成立した。

 先送りした課題の結論を早急に出すとともに、この半年間の混乱で浮き彫りになった様々な反省点をしっかり確認することが、信頼回復の前提となる。

 政治活動を国民の不断の監視と批判の下に置く、という政治資金規正法の理念に照らして、前進した点の一つは、違反した議員に対する罰則の強化だ。

◆議員本人の罰則を強化

 派閥の資金を巡っては安倍、二階、岸田の3派の会計責任者らが立件された一方、多くの議員は責任を問われず、批判を浴びた。

 これを踏まえ、議員に対して収支報告書に違反がないことの確認を義務づけて、会計責任者が処罰された場合には、確認が不十分だった議員の公民権を停止し、失職させることにした。

 また、政治資金の透明化を図るという点で、政治資金パーティー券の購入者の公開基準については、「20万円超」から「5万円超」に引き下げた。個人の寄付と同額とすることで、資金の出所をわかりやすくする狙いだ。

 これまで手を着けてこなかった政策活動費のあり方も見直した。政党から議員に渡される政策活動費は公開の義務がなかったが、今後は、政党が「組織活動」「選挙関係」など大まかな項目ごとに金額と使った年月を記載する。

 自民党は、年間10億円を超える政策活動費を選挙のてこ入れなどに使ってきた。概要の公開にとどまるとはいえ、使途を明らかにすることが前提となれば、従来のような 杜撰 ずさんな使い方はできまい。

◆政治不信払拭できるか

 今後は与党も野党も、カネのかからない政治や選挙を具体的にどう実現していくのか、知恵を絞る必要がある。

 一方で、今回積み残しとなった課題は多い。例えば、議員が規正法違反で処罰された場合の、政党に対する政党交付金を減額する措置や、政治資金を監視する第三者機関の設置などは付則に記され、今後の検討に委ねられた。

 こうした論点を放置していたら、再び政治不信のタネとなってしまう。過ちを繰り返さないよう、結論を出すことが急務だ。

 それにも増して大切なのは、議員自らが決めた法律やルールをきちんと守ることだ。

 そもそも今回の事件は、政治団体や議員が資金の流れを収支報告書に正直に記載する、という当たり前のことを、派閥も議員も怠ったことが発端となった。

 パーティーの開催や、議員が売った派閥のパーティー券収入のノルマ超過分を議員に配分すること自体は違法ではないのに、安倍派では、この措置を派閥も議員も収支報告書に記していなかった。

 その結果、政治不信が高まり、パーティーの開催禁止や、企業・団体献金の禁止といった議論にまで発展してしまった。

 さらに安倍派では、会計責任者の証言と、派閥幹部が衆参の政治倫理審査会で述べた発言の矛盾が明らかになった。

 安倍派から所属議員への資金の還流が再開された経緯について、幹部は一様に関与を否定した。だが会計責任者は公判で「ある幹部」からの要望を受け、幹部間の会議で還流の再開が決まった、と述べた。

 責任の所在を曖昧にしたままでは、政治不信は 払拭 ふっしょくできない。

 また、与野党協議や国会の議論の過程では、自民党の機能不全ぶりが露呈した。

 自民、公明両党の実務者による修正協議はまとまらず、岸田首相が公明党の山口代表、日本維新の会の馬場代表と個別に会談し、両党の案をほぼ丸のみした。

◆自民の迷走ぶり目立つ

 ところが、衆院で賛成した維新は、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開など党首会談での約束が 反故 ほごにされたとし、参院では反対に回った。

 首相がまとめた公党間の約束が実行されないのは、自民党内での首相の求心力が低下しているからではないのか。

 首相と、後見役である麻生副総裁との関係も悪化した。

 麻生氏は、浄財を集める手段を制限すれば、政治を志せるのは資産のある人に限られ、若手議員も資金不足に陥ってしまう、と首相に進言していたが、首相はパーティー券購入者の公開基準引き下げという公明党の主張をのんだ。

 法整備は実現したが、首相の党内指導力の回復は一段と困難な状況となっている。

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