北村朋幹がリスト「巡礼の年」全曲録音…ピアノと一体に、誠実で入念な読み込み
読売新聞 / 2024年6月20日 17時27分
今、最も注目すべき実力派ピアニスト、北村
3年前に20世紀の作曲家ジョン・ケージに取り組んだ後、目を向けたのは、敬遠していた19世紀ロマン派のリスト。コロナ禍による活動制約で時間はたっぷりあった。「リストの音楽は、シューマンやワーグナーと違ってわかりやすい分、自己顕示的で内容に乏しく、強烈な個性に欠ける――そんなふうに誤解していたところがあった」と振り返る。
フォンテックから発売された「巡礼の年」のCDは、作品への誠実な態度と、微に入り細をうがつ入念な読み込みで作曲家の真影に迫っている。
「20代終わりに書かれた『第1年 スイス』は作曲家の素直な感性がよく現れている。続く『第2年 イタリア』は超絶技巧を駆使した名手ならではのきらびやかさがある。晩年の『第3年』は健康不安などを抱えたリストの空虚な心象がうかがえる」
言葉での説明は陳腐だと断りつつ、各曲集の特徴を的確に説明する。一緒に収められているグリーグやドビュッシー、ワーグナーの小品の選曲もよく考えられていて、エコーのようにリストの音楽と共鳴する。特に現代作曲家ノーノの「…苦悩に満ちながらも晴朗な波…」は、北村ならではの世界観を提示する。
もっとも、音楽の本質は瞬間ごとに生起する身体と感情の高ぶりがもたらす快感にある。記者は3月に埼玉・所沢市民文化センターで開かれたリサイタルで「巡礼の年」全曲を実演で聴き、ダイナミックで激しい表現に驚かされた。分析的で整った印象のCDとはかなり違う演奏だった。
「録音はすでに終わったもの。演奏は常に移り変わっていく」と話し、こう続ける。「リストの音楽の本質は、ピアノとの一体感とそこから生まれる高揚感にある。それはピアニストにとってかけがえのない体験で、ほかの作曲家からは得られない」
直観を信じ、知性と感情のバランスを取りながら音楽との一体感を究める。着実に成長し続ける演奏家は、次にどこへ向かうのだろうか。
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