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女性へ性別変更後に子が出生、最高裁が法的な親子関係認める…東京高裁判決を破棄

読売新聞 / 2024年6月21日 15時50分

最高裁

 性同一性障害特例法に基づき女性に性別変更した元男性が、自分の凍結精子で女性パートナーとの間にもうけた次女を認知できるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(尾島明裁判長)は21日、「認知できる」との初判断を示し、認知はできないとした2審・東京高裁判決を破棄し、法的な親子関係を認めた。

 性同一性障害で女性に性別変更した元男性が、自分の凍結精子で女性パートナーとの間にもうけた次女を認知できるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(尾島明裁判長)は21日、「血縁上の父親の認知が認められなければ子どもの福祉に反する」と述べ、「認知できる」との初判断を示した。認知を認めなかった2審・東京高裁判決を破棄し、元男性と次女の法的な父子関係を認定した。

 4人の裁判官全員一致の判断。生物学上の父親が性別変更後に子どもをもうけた場合にも、親子関係が成立するとの司法判断が確定した。

 40歳代の元男性は性別適合手術を受け、2018年11月、性同一性障害特例法に基づき戸籍上の性別を女性に変更した。手術前に保存した自身の凍結精子を使い、性別変更前の同年夏にパートナーの30歳代女性との間に長女をもうけ、変更後の20年に次女を授かった。

 元男性は同年、自身を「父親」として娘2人の認知届を自治体に提出したが、法的な性別が女性であることを理由に受理されなかった。そのため、娘2人を原告、元男性を被告とする形で、認知を求める訴訟を21年6月に起こした。

 この日の判決はまず、「親子に関する法律や制度は、血縁上の親子関係を基礎にしている」と指摘。血縁上の父子関係があるのに、戸籍上の性別が女性という理由で認知されなければ、子どもが養育を受けたり、相続人となったりすることができないとし、「子どもの福祉や利益に反するのは明らかだ」と述べた。

 その上で、婚姻関係にない男女の子どもについては、生物学上の父親の戸籍上の性別にかかわらず、認知を求められると判断し、元男性は次女を認知できると結論付けた。

 判決は、特例法が戸籍上の性別変更の要件として「未成年の子どもがいない」と規定している点について言及。規定の趣旨は「未成年の子どもの福祉に対する配慮だ」とし、法的な性別を理由に父子関係を認めない根拠とはならないとの見解を示した。

 22年2月の1審・東京家裁判決は娘2人の請求を棄却。同年8月の高裁判決は、戸籍上も男性だった当時に生まれた長女の認知は認めたが、次女の請求については性別変更を理由に退けたため、次女のみが上告していた。

 最高裁判決を受け、次女側の代理人弁護士が大阪市内で記者会見。「セクシュアルマイノリティーの当事者や、当事者を親に持つ子どもの権利が認められた。今の時代にアップデートされた判決で、うれしく思う」とする元男性らのメッセージが読み上げられた。仲岡しゅん弁護士は「子どもの福祉を考えた常識的な判断だ」と評価した。

「法整備より現実先行」補足意見2人

 今回の判決では、4人の裁判官のうち2人が補足意見を述べた。

 尾島裁判長(裁判官出身)は、特例法の「未成年の子どもがいない」との規定は「あくまで性別を変更する際の要件だ」とした上で、「特例法は、性別変更後に生殖補助医療を用いて子どもをもうけることを禁じてはいない」と指摘。家族秩序の混乱を防ぐという趣旨や目的があったとしても、「子の福祉を犠牲にしてまで確保されなければならないものではない」とした。

 三浦守裁判官(検察官出身)は、生殖補助医療技術を利用して子どもを育てたいと考えるカップルがいる一方、親子関係の法制度には生命倫理や家族のあり方を巡って様々な議論があり、法整備には一定の時間を要すると言及。ただ、「法整備の必要性が認識されながら20年超の年月が経過する中で、既に現実が先行している」と述べ、早期の法整備の重要性をにじませた。

 上智大の羽生香織教授(家族法)は判決について「様々な価値観が対立しうる議論ではあるが、今回のようなケースで現に子どもが誕生している以上、生物学上の『父母』と法律上の『男女』の不一致よりも、子どもの福祉を優先したのだろう」と語った。

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