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宮内庁から突然の依頼…復刊した天皇陛下の留学記「テムズとともに」、扉絵に施された小さなしかけ

読売新聞 / 2024年6月28日 17時35分

 天皇、皇后両陛下が22日から訪問中の英国は、それぞれが20歳代で留学された思い出の地だ。昨年4月に復刊した天皇陛下の留学記「テムズとともに」の扉絵には、青春の日々を過ごされたオックスフォードの風景が描かれている。陛下と交流があり、この絵を手がけた画家の藪野健さん(80)は、ある思いをこめて小さなしかけを施していた。(水野祥)

 藪野さんは早稲田大大学院で美術史を修了後の1970年、スペインの美術学校に留学した。休暇中には英国内も巡り、オックスフォードにもたびたび足を運んだ。古い街並みや美しい庭園に魅せられたからだ。

 陛下とは90年頃、美術や歴史の専門家が集まる勉強会で知り合った。藪野さんがかつてオックスフォードで描いた風景画を勉強会に持参するたびに、陛下はその絵の場所がどこかをすぐに言い当てられた。

 陛下はテムズ川の水運の研究資料を集めるため、古書店や図書館を自転車でよく回ったと明かし、「現代と古典の世界が一体になった街でした」と話された。「手間をいとわず資料を探すうちに街を知り、魅了されたのではないか」。藪野さんはそう振り返る。

 藪野さんは、陛下から思い出の場所を聞き取り、自作の絵地図に位置を落としてまとめたことがある。実際の地図と比べてみると、ほぼ一致していた。

 勉強会は2010年頃を最後に開かれなくなったが、22年12月、宮内庁から突然、連絡があった。留学記の復刊にあたり扉絵を描いてほしいという依頼だった。藪野さんは快諾し、オックスフォードを描いた20〜30枚のスケッチを見ながら、2〜3か月かけて扉絵(縦18センチ、横24センチ)を仕上げた。

 陛下が学んだ大学のマートン・カレッジを描き、右下の木陰には小さな人影を三つ添えた。復刊本のあとがきで、陛下が皇后さまとともに英国を再訪できることを願っていると知り、ご一家で訪ねられる姿を想像して制作した。

 原画はこの春、宮内庁を通じて献上された。後日、「陛下が自室に飾られている」と側近から聞いた。陛下は三つの人影にも気付き、「私たちですね」とにこやかに話されたという。

 両陛下は今回、滞在最終日の28日にオックスフォードを再訪される。藪野さんは「いつかお目にかかる機会があれば、久しぶりの街はどうでしたかと尋ねてみたい」と笑顔を見せた。

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