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ヒロシマの被爆樹木、海を渡った子孫も大規模森林火災を生き抜く…クスノキ6本とイチョウ13本

読売新聞 / 2024年6月22日 15時15分

 南米チリで今年2月に発生した大規模な森林火災により壊滅的な被害を受けた中部ビニャデルマルの国立植物園で、広島から贈られた「被爆樹木」の種から育てられたクスノキ6本とイチョウ13本が生き延びた。「ヒロシマの木」からは新しい葉が芽吹き、復興の象徴として地元住民らを勇気づけている。(チリ中部ビニャデルマル 大月美佳、写真も)

 火災では137人が死亡、1万6000人以上が避難を強いられた。地元消防士と森林公社元職員による放火だったとみられている。

 この植物園は敷地面積が約400ヘクタールと国内最大で、敷地の9割以上が炎に包まれた。園内の住居で生活していた職員のパトリシア・アラヤさんと母、孫2人の計4人が命を落とした。

 植物園を今月上旬に訪ねると、焦げた臭いが漂っていた。被災した木々は黒や茶に変色し、所々に倒れた老木の残骸が残っていた。

 緑が残ったのは中心部付近のわずか10ヘクタールだった。広島の原爆爆心地から半径約2キロ以内で被爆した「被爆樹木」の種から育てた木々が植えられている「平和の庭」と名付けられた一画も、この辺りにある。

 種は、核兵器廃絶のメッセージを世界に届けようと、広島市の市民団体「グリーン・レガシー・ヒロシマ」が2013年に贈った。園内で苗まで育て、22年に植樹された。地元の日系人協会によると、火災で死亡したパトリシアさんは種から苗に育てるまでの世話を担当した一人だったという。

 炎は庭のすぐ近くまで迫ったが、脇を流れる川が延焼を防いだとみられている。木々の葉は熱風で枯れてしまったが、職員が調べたところ、カキの木1本を除く19本は再生に不可欠な水分が残っていることが確認された。火災から4か月以上が経過し、クスノキからは若葉が芽吹いていた。

 「ヒロシマで生き残った木は助かった」――。植物園がインスタグラムなどで報告すると、「希望が新たに生まれた」「悲劇の中での朗報だ」と喜びの声がたくさん寄せられた。復興に向けた作業を手伝うボランティアが多く集まった。

 植物園では5月から再生に向け新たな苗を植える作業が始まった。学芸員のパメラ・ラミレスさん(41)は「パトリシアやその家族の死は何よりもつらい。ただヒロシマの木が生き残ったことで、『植物園は死んでいない』というメッセージになった。私たちもその生命力の強さに力をもらった」と話した。

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