性犯罪歴の照会期間が課題…執行猶予つけば判決確定から10年まで
読売新聞 / 2024年6月23日 1時24分
許すな子ども性暴力…日本版DBS・上
子どもを性暴力から守る新制度「日本版DBS」が2026年度をめどに創設される。過去に性犯罪を起こした人を、子どもと接する職場から遠ざける仕組みだ。対策の切り札となるのか。課題を探る。
広島市の20歳代の会社員女性は、小学校高学年の頃に通い始めた学習塾の男性講師から約10年間、性被害を受けた。
講師数人ほどの小規模の塾。男性講師の一人に「勉強をみてあげる」と声をかけられ、講師宅で下半身を触られた。女性は塾をやめた後も講師宅に呼ばれ、「愛しているから」となだめすかされ、裸の動画を撮影された。
関係は20歳頃まで続いた。その後、突然涙が出たり、眠れなくなったりするようになった。女性は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとして、昨年2月に、すでに塾をやめていた講師を相手取り損害賠償を求めて提訴。元講師が性加害を認めて謝罪し、慰謝料を支払うことなどで同年6月、和解した。
女性は「塾の先生という立場に従っていたが、わいせつ目的で子どもを手なずける『グルーミング』だった」と振り返る。
日本版DBS制度は、子どもと接する職場で働く人の性犯罪歴の有無を確認し、あった場合に就業制限を可能とする。学校や保育所などには確認を義務付けた一方、民間の学習塾などの制度参加は任意とした。
学習塾を経営する民間の大手事業者の多くは保護者の安心や信頼を高めるため、参加するとみられる。だが、小規模事業者にまで広がるかは未知数だ。
小規模の塾などでは指導者と教え子の距離感が近く、人目にもつきにくいとの指摘もあり、女性は「個人塾や小規模も含め、塾全体にDBSへの参加を義務化すべきだ」と訴える。
◎
日本版DBS制度の設計では、性犯罪歴を確認できる期間をどうするかが争点の一つとなった。こども家庭庁によると、性犯罪で禁錮刑以上となった人の判決が確定してから「再犯」で判決が確定するまでの期間は、9割超が20年に収まっていた。これを根拠に、拘禁刑(懲役と禁錮の両刑を25年に一本化)では刑の執行終了から「20年」、執行猶予がついた場合は判決確定日から「10年」を確認可能とした。
3年前、北関東の学習塾で、「教室長」だった50歳代の男が、通っていた10歳未満の女児の身体を触るなどして強制わいせつ罪で逮捕、起訴された。
この塾を経営していた男性によると、男は採用時の面接で小中学校や個別指導塾での勤務経験があるとアピールした。新規開校で人手が必要だったため、採用。勤務態度はまじめで、指導も熱心だったという。
だが男の逮捕後、以前勤めていた中学校で教え子にわいせつな行為をし、自治体の条例違反で執行猶予付きの判決を受けていたことが判明した。
このケースでは、男が学習塾に求職したのは判決確定日から10年と6日後だった。6日の差で、DBS制度の網はかからなくなる。
男性は「中学の退職理由を聞いたが、ごまかされた。一定期間しか犯罪歴をチェックできないDBS制度では、完全に防ぐことができない」と危惧する。
こうした例では、国が「お墨付き」を与えることになりかねない。国会の審議過程では、照会可能な期間の延長について検討を求める付帯決議が採択された。
性犯罪被害に詳しい上谷さくら弁護士は「制度創設は大きな一歩だが、課題も多い。社会全体での問題意識を高め、より有効な制度となるよう議論を続けることが求められる」と話す。
学習塾や学童保育で被害相次ぐ
放課後の子どもたちの居場所となっている学習塾や学童保育などは滞在時間が長い上、学校と同様に大人が指導的立場を利用し、性暴力が起きやすい構造となっている。
今年3月には大手学習塾「四谷大塚」の元講師と「明光義塾」の元教室長が、盗撮事件でそれぞれ有罪判決を受けた。
首都圏で学童保育を多数展開する「ウィズダムアカデミー」(東京)の施設で、小学校低学年の息子が性被害に遭った40歳代の会社員女性は「信用していたのに」と憤る。
この施設の元職員の男は男児3人の下半身を触るなどしたとして、昨年5月以降に強制わいせつなどの罪で順次起訴された。男は公判で、男児へのわいせつ行為を認めた。
女性がウィズダムアカデミーに息子を預けたのは、プログラミングや英語、スポーツや音楽など様々な習い事があり、送迎サービスが充実していたからだ。
今は選んだことを悔やみ、女性は「子どもが通う施設の業者を選ぶ上で、防犯意識が高いかは重要だ。日本版DBS制度がそれを知る手がかりになれば」と話した。
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