シルクロードのブーム去った中国・敦煌、日本人観光客を熱望…邦人拘束など日中関係ネックに
読売新聞 / 2024年6月23日 13時30分
世界遺産・
「天井と壁全体に色鮮やかな宗教画が残っています」
12日、莫高窟の第285窟。地元の「敦煌研究院」研究員が、視察に訪れた金杉憲治・駐中国大使に
シルクロードの要衝だった敦煌は、井上靖氏の小説「敦煌」や画家の平山郁夫氏の作品で有名だ。1980年代にはNHKのドキュメンタリー番組が一大ブームとなった。文化財保護で日中協力も進み、日本政府も約10億円の無償資金協力で支援した。
敦煌市によると、80、90年代は観光客のほとんどが日本人だった。ブームは去り、2000年代以降は徐々に減少した。コロナ後も回復していない。23年の日本人訪問は600人台で、90年代の1%程度にとどまるという。
市政府は、国際的な観光地として発展するため、日本からの観光客回復に期待を寄せる。金杉氏と会談した市トップの石琳・市共産党委員会書記は平山氏らの名前に触れつつ「日本との交流を大切にしている」と強調した。日本とのチャーター便の年内就航を計画していることも明かした。
莫高窟を研究する敦煌研究院トップの趙声良・党委書記も「歴史的に敦煌と日本には密接な関係がある。ぜひ日本の皆さんに来てほしい」と日本語で呼びかけた。
課題は多い。コロナ禍前に認められていた日本人への短期査証(ビザ)免除は再開されておらず、中国観光のハードルは高い。邦人拘束など日中間の懸案もある。金杉氏は地元政府との会談で、ビザ免除など環境整備への協力を求めた。
◆莫高窟=4世紀から14世紀にかけて現在の敦煌市郊外の断崖に造られた仏教遺跡。492か所の石窟に壁画と塑像が残されている。1900年、蔵経洞(第17窟)から数万点の経典や絵画など「敦煌文書」と呼ばれる文化財が発見された。87年、世界遺産に登録。
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