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堀米雄斗にもきっとつながる、スケボーアイドルの「トリック」と積み重ね…清司麗菜の#skatelife

読売新聞 / 2024年6月28日 12時0分

スケートパークで練習する清司さん(村上市スケートパークで)

 アイドルグループ・NGT48の清司麗菜さんは、打ち込んでいるスケートボードで壁にぶつかっています。新しい技を習得するのに苦労していますが、かつての「先生」からあるアドバイスをもらいました。アイドルとして大きな舞台を控えている彼女。「積み重ねる」ことの重要性をひしひしと感じているのだとか……。「清司麗菜の#SkateLife〜continuity180〜」の第16回です。

 何をするのにも「始まり」っていうのがある。スケートボードを始めたのは、今から2年半前。東京五輪の女子パークに出場した、岡本 碧優 (みすぐ)さんの滑りに感動してボードを手にした。当時、オリンピックの直後で世間は「スケボー・フィーバー」に沸いていたし、ネタ作りに思われないかな……って 躊躇 (ためら)っていたことも今となっては懐かしい。

 NGT48は専用劇場で開かれる公演がある。ファンの方が会いに来てくださる公演に穴を開けることになるなんてありえないし、趣味でケガなんてもってのほかだ。

 たぶん、この辺の事情は、どんな仕事をしている人でも同じだと思う。いくらライフスタイルに近い趣味だと言っても、仕事に穴を開けることはできないって人は多いんじゃないかな。

プロへとつながる私のトリック

 友達との遊びの中でうまくなっていくのが、スケートボードの「王道」なのかもしれない。でも、私は所属事務所に許可を取ってからスケートボードを始めた。「レッスンから始めよう」と提案され、村上市スケートパーク(新潟県)で、コーチの平野英樹さんに教わったことが本格的なスタートになった。

 スケートボードの初心者は、だいたい「プッシュ」と「チックタック」という技(=トリック)から始める。プッシュは片足をボードに乗せて、もう片方の足で地面を蹴って進むトリック。チックタックというのは、ボードに乗った状態で、板を左右に振り、前に進むトリックだ。この二つができて、スケートボードを「乗り物」として楽しめるようになる。

 ちなみに、私ができるトリックでわかりやすいのは、ボードごとジャンプする「オーリー」、オーリーしながら体を180度回転させる「フロントサイド180」。あとは、平均台のようなレールと呼ばれるセクションにジャンプして飛び乗り、ボードの中心でレールを滑る「バックサイド・ボードスライド」の三つだ。

 プロのトリックは、かなり難しい。でも、私がやっているトリックの積み重ねの先にあるのは確かだ。

 例えば、堀米雄斗選手が披露したことで有名になった「ユウトルネード」。これはあくまでニックネームのようなもので、正式名称は「ノーリーバックサイド270ノーズスライド270アウト」という。これも、いろんなトリックが一つの流れの中で「合体」しているようなもの。詳しく見ていくとこんな感じだ。

 ・ノーリー=乗っているデッキの後ろの部分からジャンプ。

 ・バックサイド270=後ろ向きに270度回転させてレールに乗る

 ・ノーズスライド=ボードの先端部分で滑る 

 ・270アウト=レールから降りるときに270度さらに回転させる

 という感じ。これを一つの流れでやるからすごい。だけど、私のトリックも確実にプロの人たちのトリックへとつながっていくのだ。

毎日乗ることが大切

 「めちゃくちゃうまくなったね」

 久しぶりに会った英樹さんと話す機会があった。この日は、英樹さんがスケートフィルムの撮影をしていて、このコラムの取材を兼ねて村上市スケートパークに行ったときにお話を聞くことができた。

 もともと、フロントサイド180は、テレビで「1か月以内にマスターしよう」という企画で身に付けたトリックだ。なかなかメイク(=成功)することはなかったけれど、遅い時間まで事務所のスタッフさんに付き合ってもらったりして、なんとか完成した。

 でも、新しいトリックを習得するのは難しい。新潟市にあって、ホームの「エアーマンスケートパーク」は屋外がメインで、天気にも左右される。公演のレッスンもあるし、休みの日に毎日滑るのは体力的にもキツいし、自宅からパークに行く移動手段も限られている。

 プロスケーターなら、甘えたことは言っていられないのかも。だけど、私も多くのスケーターと同じ、仕事を抱えながら楽しんでいるローカルスケーターの一人。都合がつかないこともある。

 英樹さんは言う。「スケートボードは毎日乗ることが大切だ」って。今までは時間がたてばできるようになるトリックが増えるかと思ったけれど、プロから見ても重要なのは「毎日乗ること」だそう。私がその言葉に「ぐっ……」とたじろぐと、「毎日乗れないのなら、イメージトレーニングをすること。やってみたいトリックの動画を集めて、自分ならどうするかとイメージしてみる。俺もやっているよ」と言ってくれた。これならできそう。

 スケートボードのレベルは、近年すごく上がっている。例えば、東京オリンピックで金メダルを取った西矢 (もみじ)選手の「ビッグスピンボード」は、パリオリンピックに初出場を決めた14歳の吉沢 (ここ)選手も東京オリンピックの前からできた――というのはよく知られた話だ。

 誰かが開発した新しいトリックは、SNSに載って、世界中に瞬く間に拡散される。それを見て、新しい技ができる人がどんどん増えていく――というのがこのスポーツの特徴だ。SNSを見るだけなら、いつだってできる。私も、もっとうまくならなくちゃ。

積み重ねること

 積み重ねることって、なんでも難しいよね。なりたい姿を想像して、そこに向かって努力する。当然だけど、すぐにできたら苦労しない。

 AKB48グループのアイドルが参加する、「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」の個人戦の決勝大会へ出場が決まった。今回は海外グループも参加する厳しい戦いになるけれど、とりあえずやれることはやりたいというのが本音だ。

 選抜総選挙がなくなってから、グループ全体で競う大きな大会になった。私は、2019年の第1回大会から予選に出場している。

 第1回から第3回まではずっと予選敗退。第4回は心が折れて、出場すらしなかった。でも、NGT48のメンバーで、2期生の三村妃乃に誘われて、第5回に出場した。個人戦は予選で敗退したけれど、チームで出場するユニット戦では優勝することができた。そして、今回。個人戦で初めて決勝大会に進むことができたのだ。

 後輩に背中を押されて、もう一回立ち上がることができた。そして優勝。ちょっぴり情けないと思われるかもしれないけれど、それで自信がついて、今回も出ようって思えた。でも、そこには私のキャッチフレーズでもある「暇さえあれば歌っている」日々の努力が実った、というのもあるはずだ。

 どんなにその人が頑張っても、一人では立ち上がれないことがある。できないことがある。「諦めるな」「がんばれ」って言うことは簡単だけれど、一人では進めない時だってある。でも、ちっぽけなきっかけで踏み出した一歩が、大きく未来を切り開くことだってある。偶然が積み重なって、生活が続いていく。

 停滞気味の私のスケートボードも、今となっては仲間や理解してくれる人がずいぶん増えた。それに、トリックの完成度も上がってきている。アイドル活動でもそうだったように、スケートボードだって、ずっと積み重ねていこう。なりたい姿はきっと、次に踏み出す一歩から始まるんだから。

プロフィル

清司麗菜(せいじ・れいな)

 NGT48の1期生。埼玉県出身。「バイトAKB」としてアイドルキャリアをスタートさせ、2016年にNGT48に加入。趣味はスケボーのほか、歌うこと、筋トレ。Instagramは「@reinaseiji」、X(旧Twitter)は「@official_seiji」。

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