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彼氏に、兄に勧められ…太宰作品と過ごした青春の日々

読売新聞 / 2024年6月26日 17時30分

サクランボが埋め込まれた墓石

 6月19日は桜桃忌です。作家・太宰治をしのぶ日です。太宰が東京・三鷹の玉川上水に入水自殺し、遺体が発見されたのは1948年6月19日でした。39歳の誕生日でもあり、死の直前の名作「桜桃」にちなんで名付けられました。墓のある三鷹市の禅林寺には毎年、全国から大勢の太宰ファンが訪れます。読売新聞朝刊の投書欄「気流」には、太宰に関する投書が寄せられてきました。記者の心に刺さった投書を紹介する「ササる投書」、今回のテーマは「太宰治」です。(※投稿者の年齢や職業などは掲載当時。紙面では実名で掲載)

先生には止められたが…中学時代に愛読「人間失格」

 太宰治没後50年を前に、代表作「人間失格」の草稿が大量に見つかったという記事を読み、たまらなく懐かしくなった。

 40年以上も前、私立の女子中の3年生のときだ。初恋の彼が太宰に傾倒し、「人間失格」を貸してくれたのだ。主人公と彼を重ね合わせながら、夢中で読みふけった。

 夫人の名前が私と同じ美知子であることにも親近感を覚え、次から次へと太宰の作品を読みあさった。

 しかし、当時の国語の先生には、そういう本は読まない方がいいとまゆをひそめながら忠告された。「花嫁学校」の女子生徒が読むには退廃的過ぎると思われたのかもしれない。

 それから20数年後、息子の中学の教科書に太宰治の「走れメロス」が収録されているのを見つけたときは、なつかしいやら、驚くやら……。今はすっかり太宰を卒業しており、ただひたすら甘酸っぱい思い出だけが残っている。(57歳・自営業=神奈川県、1998年5月30日掲載)

生家、疎開先…青森で「太宰の夏」経験

 昨年夏、青森県を訪ね、太宰治の足跡をたどった。学生の頃、太宰の作品をたくさん読み、作品を通して見える彼の人柄にひかれた。いつか訪れたいと思い続け、ようやく夢がかなった。

 太宰の生家、戦時中の疎開先、よく通っていたという喫茶店……。どこを訪れても、彼がそこにいるような気がした。真夏の青森は意外なことにとても暑かったが、「きっと太宰も同じように暑いと感じたのだろう」と思えば味わいがあった。

 同行した夫は、太宰の作品を読んだことがないといい、あまりピンと来ていないようだった。しかし私は、「太宰の夏」を経験したので、次は「太宰の冬」を経験したいと、冬の青森旅行に誘うことを計画している。(46歳・パート=千葉県、2022年10月23日掲載)

愛読した本に亡き兄の思い出

 出版各社の夏の文庫フェアで異色カバーが目立っているという記事(9日)を読んだ。集英社文庫は昨年、太宰治の「人間失格」の表紙を漫画家のイラストに変えたという。

 私が若いころに読んだ「人間失格」のカバーはどんなものだったのだろう。本棚から見つけ出し、見てみると、カバーはなく、表紙にユリやアジサイなどの花模様が描かれていた。

 その本に次兄の判子がついてあるのに気付き、驚いた。自分で買ったものと思い込んでいたが、文学青年だった兄に勧められて私も読んだのだと、わかった。

 次兄は5年前、55歳の若さでこの世を去った。元気であれば、今月、還暦を迎えていたと思うと、胸がつまった。新聞の記事がきっかけで、亡き兄をしのぶ一日となった。(56歳・主婦=埼玉県、2008年7月17日掲載)

担当記者から

 「人間失格」「斜陽」など太宰作品を読みましたが、一番好きなのは教科書に載っていた「走れメロス」です。メロスは間に合うのか、ハラハラしながらページをめくったのを覚えています。暴君を改心させた熱い友情に感動しました。暴君は今の世界にもいます。1人でも多くのメロスが必要だと感じています。(田渕)

 「ササる投書」を毎週掲載します。次回もお楽しみに!

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