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三菱UFJへの業務改善命令、金融庁が顧客軽視の姿勢を問題視…実効性ある防止策急務

読売新聞 / 2024年6月25日 10時52分

 金融庁が三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の銀行と証券2社に金融商品取引法(金商法)に基づく業務改善命令を出した。無断で情報共有を繰り返した3社の顧客軽視の姿勢を重くみた。国内トップの金融グループの信頼が揺らぐ事態で、実効性のある再発防止策が急務となる。(大塚健太郎、遠藤雅)

■幹部が関与

 「わが国を代表する金融グループで起きた顧客情報の不適切な授受であり、大変遺憾だ」。鈴木金融相は24日、3社の行政処分についてそう強調した。

 証券取引等監視委員会の検査で、顧客の非公開情報を無断共有することを禁じる「ファイアウォール(FW)規制」への違反行為が多数見つかった。

 一例が、三菱UFJ銀行の専務執行役員(当時)が株式の売り出しに関する非公開情報を三菱UFJモルガン・スタンレー証券側に提供した事実だ。証券側は情報に基づき事前に売り出しの準備ができ、グループで利益を上げられるためとみられる。

 金融庁は今回、FW規制を巡って銀行側の優越的地位の乱用こそ認定しなかったが、「勝手に情報共有したのは大きな問題」(担当者)と捉えている。法令順守や顧客情報の管理態勢に不備があると認定した。

■規制緩和

 FW規制を巡っては、証券会社を傘下に持つメガバンクなどが、グループの総合力を生かした提案ができるよう政府に規制の撤廃を求めてきた経緯がある。一方、野村証券や大和証券といった独立系証券会社は撤廃に反対してきた。

 それでも規制は段階的に緩和され、2022年6月からは上場企業に限り、金融機関のウェブサイト上で告知しておけば、顧客に説明しなくても情報共有できるようになった。ただし、顧客が拒否しないのが前提で、今回3社は拒否されていたにもかかわらず共有した点が問題となった。

 欧米などでは特段の規制なく銀行・証券業務が一体的に行える。「日本のFW規制では、結果的に顧客の利便性が損なわれている」(別の大手行首脳)との声も聞かれるが、今回の不祥事で規制緩和の議論が進まない可能性もある。

■法令理解不十分

 MUFGはFW規制が緩和された22年以降、社内で法令違反の有無を監視する取り組みを強めてきたという。情報管理研修を充実させ、AI(人工知能)を使って内部のメールのやり取りをチェックしてきた。そのさなかに今回の事態が起きたことで、対策の不十分さが浮き彫りになった。

 またMUFGは銀行員が顧客の同意の下で案件情報を共有し、系列証券会社で成約した際の収益を行員の営業実績として反映させる仕組みも導入していた。グループの一体経営を進める狙いがあったが、法令への理解が不十分な一部行員が規定に違反する有価証券業務にまで踏み込んでしまう事態を招いた。

 今後は不正を排除する仕組みづくりが焦点となる。MUFGや傘下3社は再発防止策と同時に、経営陣を含む責任の所在の明確化や経営陣の処分も検討する。

 ◆ファイアウォール(FW)規制=1993年、銀行と証券の相互参入解禁に伴い導入された。顧客の情報が特定の金融グループに集まる状態を防ぎ、公正な競争環境を維持する狙いがある。融資を通じて取引先企業に影響力を持つ銀行が強い立場を乱用しないようにするのも目的。

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