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天皇陛下のテムズ川研究に伴走した教授「陛下は粘り強く向き合われた」…造詣の深さに「音楽史の研究をすべきだ」と思った場面も

読売新聞 / 2024年6月25日 7時16分

陛下の留学記の英訳版を手に、研究を補佐した当時を懐かしむモーガン教授(5月21日、ロンドンで)=沖村豪撮影

 天皇陛下はオックスフォード大学に留学中、「テムズ川の水運史」の研究に取り組まれた。その土台となる史料調査の方法論を伝授したのが、ロンドン・ブルネル大学のケネス・モーガン教授(海洋史)だった。

 <顔つきも少しばかりいかめしく、取っつきにくい感じ>。陛下は留学記「テムズとともに」で、モーガンさんの第一印象をそう描写された。それには理由があった。

 少し年上のモーガンさんが補佐役を任された時、2年目に入っていた陛下の研究は、かなり遅れていた。陛下の指導教官からは「特別な方だから失敗は許されない」とプレッシャーをかけられていた。

 研究対象とした18世紀の英文史料の解読は簡単ではない。博士号を取得して当時、英国西部で教員をしていたモーガンさんは、残り1年余りで成果を得てもらおうと、約100キロ離れたオックスフォード大学に週3回通い、自らが主体となって調査を進めた。

 しばらくして陛下が不満げなことに気づいた。調査を進展させ、陛下を助けようという考えだったが、やはり話し合いながら進めようと思い直した。

 「各時代の史料の形式に慣れる」「一次史料の情報を他の印刷物と照合して確認する」などのコツを伝授すると、陛下の調査は少しずつ前に進み始めた。

 休息中には音楽の話題になり、2人の距離は縮まった。自身はファゴットを、陛下はビオラを演奏する。陛下の音楽への造詣は深く、「音楽史の研究をすべきだ」と思うほどだった。

 研究中の笑い話がある。ある図書館で職員が誤って陛下の請求史料を別の日本人に渡してしまった。「ミスター・ナルヒト」と呼ばれたその日本人は大慌てで、館内がざわついたという。この時、陛下から「皇族には姓がないので、ナルヒトと名だけ書く日本人は私だけなのです」と教わった。

 「陛下は言葉の壁にぶつかっても情熱を失わず、粘り強く研究に向き合われた」とモーガンさんはふり返る。陛下は留学を終えて4年後、史料調査の成果を英文書籍で発表された。その知らせを聞いた時、「日英の名誉は守られた」と喜び、ほっとしたという。

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