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総選挙で国民的アイドル「ゆきりん」が振り返るAKB48「ずっと青春が続いているグループ」

読売新聞 / 2024年7月5日 15時30分

17年間在籍したAKB48を卒業した柏木由紀さん

 来年20周年のAKB48が大きな節目を迎えた。4月末、17年間在籍した“グループの顔”柏木由紀さん(32)が卒業し、 揺籃 (ようらん)期から国民的存在に駆け上った時代を知るメンバーがいなくなったのだ。そこで彼女たちのこれまでと今を書いてみたい。卒業コンサートについて柏木さんに話を聞いた。(編集委員・祐成秀樹)

在籍17年、卒業コンサートにOG15人

 整った顔立ちに長い髪、愛らしい立ち居振る舞い。「ゆきりん」は正統派アイドルとして親しまれ、歴代メンバーとも気さくに接した。それだけに3月16日に横浜市のぴあアリーナMMで開かれた卒業コンサートには現役メンバー46人の出演に加え、OG15人も祝福に駆け付けた。

 1曲目は「火山灰」。アイドルを目指して故郷・鹿児島を離れた心境を歌う曲だ。柏木さんは子供の頃からアイドルが大好き。特にモーニング娘。の石川梨華さん(39)に憧れた。「かわいいだけでなく、どんな時も一生懸命でニコニコしていて、見ていると元気になれる。私もそうなれたらいいなと思いました」

 中学生になって目指したのはAKB48劇場。毎日ステージに立てるという環境に憧れて、2006年に第3期生オーディションに合格して上京。翌年にチームBの一員としてデビューした。ただ、客席と距離が近い定員250人の小空間でのパフォーマンスは気を抜けない。「自分を応援してくれている人が、違うメンバーを見ていることが分かるぐらい近い。私を見て好きになってほしいと必死にアピールしました」

 今回は1万人以上が入る大会場だが、3、4階席にも常に視線を送っていたのが印象的。披露された計32曲の中で、いちばん印象に残った曲として「RIVER」を挙げた。09年に発表され、グループとして初めてオリコン週間チャートで1位を獲得した記念碑的な曲だ。この日は、先輩の高橋みなみさん(33)と声を合わせた。「あの頃、端っこにいた自分が、たかみなさんと先頭で歌えるとは。グッと来ました」

ファンに丁寧に接する姿、人気急上昇

 柏木さんをスターの座に押し上げたのは、社会現象にもなった「選抜総選挙」だった。彼女はCD購入者対象の握手会などでファンと丁寧に接し続けた結果、人気が上昇。11年の総選挙で3位になった。「上に前田敦子さんと大島優子さんしかいない位置にポンと入り、AKB48の一員になれたと自信を持って活動できるようになりました」

 そして、姉妹グループでの活動が自身の生き方を変えた。コンサート中盤では、ゆかりの人々のビデオメッセージが披露された。その中で大阪を拠点とするNMB48の元メンバー・山本 (さやか)さん(30)が「柏木さんから学んだ子は本当にたくさんいる」と感慨深げに語った。柏木さんはNMB48や、15年の発足時から新潟のNGT48のメンバーも兼任した。「NGT48では初めてこの仕事をする子の不安や疑問が分かり、どう教えたらいいかを学べました。その経験をAKB48に還元しないと意味がない。だからAKB48にいる期間が長くなったのだと思います」

姉妹グループで成長、仲間一人一人から花

 一方、グループの躍進を支えた先輩や同期、後輩も卒業した。「『どうしようか』という気持ちは何十回も味わった」と話す。現役メンバーの中で3期の柏木さんに続く年次のメンバーは13期。最年少は15歳。しかし、キャリアの差をものともせず柏木さんは楽しそうに歌い続けた。「私は色んなAKB48にいましたが、その時々のAKB48が一番いいと思ってやってきた。だから今のAKB48が一番好き。メンバーは色んなアイドルが世にあふれる中、入ってきたのだからグループ愛が伝わってくる。一緒に歌うことで今のメンバーを知ってもらいたいと思いました」

 また、この公演を最後に約5年間グループ総監督を務めた向井地美音さん(26)が退任した。本番では柏木さんが彼女と、共にグループを支えた村山 彩希 (ゆいり)さん(26)をねぎらう手紙が披露され、3人で「思い出のほとんど」を心を込めて歌った。「ゆきりんさんは一番近いところで私を見守り、何かある度に相談に乗ってくださった。みんなにも節目節目でステージ上での心がけからスタッフさんとの接し方まで貴重なアドバイスもいただいた。大きな舞台で卒業を見送るのが最後の使命だと思いました」と向井地さん。

 全曲歌い終えるとメンバー一人一人が花を贈呈。最後に「私は世界で一番幸せものです」と笑顔を見せた。「ゆきりんさんは誰よりも楽しそうにアイドルをやられていた。私もそうなりたいと思いました」と向井地さん。

 柏木さんが「自分の人生」と言い切るほど全てを注いだAKB48とは何なのだろう? 「何事にも一生懸命汗をかいてチャレンジし、キレイにカッコ良くでなく自分のありのままを見せる。ずっと青春が続いているグループだと思います」

アイドルの進化、ファンと直接交流して絆

 「アイドル進化論」(筑摩書房)の著者、社会学者・太田省一氏は、現在に至るアイドル歌手の特徴として、〈1〉未完成の魅力〈2〉 ()られる存在〈3〉ファンが批評できることを挙げる。

 発生は1970年代初頭で、その頃オーディション番組「スター誕生!」が始まった。「歌がうまくなくても人間的な魅力を持つ人を合格させ、デビューまでの過程を見せた。するとファンも『こうすれば売れる』などとプロデューサーのように考えるようになった」と太田氏。同番組は山口百恵、桜田淳子、ピンク・レディーらを輩出。一方で等身大の曲を歌った南沙織、振り付けが魅力的な麻丘めぐみらも人気を集めた。

 AKB48の原型と言えるのは、85年開始のテレビ番組「夕やけニャンニャン」から生まれたおニャン子クラブだ。画期的だったのは「卒業」というシステム。大人数のため、人気者が卒業してもオーディションで補充すればグループは存続する。その形は90年代にテレビ番組から誕生したモーニング娘。も踏襲した。

 AKB48の斬新さは始動時にテレビと距離を置いたこと。代わりに専用劇場、握手会、ソーシャルメディアでファンと交流して絆を築いた。「AKB48が確立したのはファンが直接参加するアイドル文化。だからこそ選抜総選挙も盛り上がった」と太田氏は話す。

〈AKB48〉 作詞家の秋元康さんが総合プロデューサーを務める女性アイドルグループ。2005年12月結成。「会いに行けるアイドル」というファンとの距離の近さが特色で、東京・秋葉原の専用劇場を拠点にしている。07年に「NHK紅白歌合戦」初出場。09年に始めた、新曲を歌うメンバーをファンが選ぶ「選抜総選挙」は話題を呼んだ。国内五つ、海外六つの姉妹グループも活動する。

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