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東京の高い生活費、晩婚化と育児の壁に…全国から若者流入しても衝撃の出生率「0・99」

読売新聞 / 2024年6月26日 5時0分

[都知事選2024 首都の課題]

 首都・東京のリーダーを選ぶ都知事選は7月7日の投開票に向け、熱い論戦が交わされている。国内最大の都市に山積する課題を現場からリポートする。

◆増える卵子凍結

 「将来を考えると時間が刻々と過ぎることに焦っていた」。東京都三鷹市の会社員女性(38)は昨年1月、都内のクリニックで、卵子を採取し、凍結保存した。

 女性は不妊治療や流産を経験し、30歳で念願の第1子を出産した。その後、離婚してシングルマザーに。新しいパートナーとの子どもがほしいと思うが、勤務先で担当業務を任せられる同僚が見当たらず、「いまは産むタイミングではない」と凍結を決断した。

 保険が適用されない自由診療のため、採卵には約50万円かかった。さらに月約1万円の凍結保管料を支払っており、女性は「卵子を保管しなくても、出産・育児と仕事の両立がしやすい社会になってほしい」とため息をつく。

 卵子の凍結保管事業を手がける「グレイスグループ」では、30歳代後半の女性会社員の利用が半数以上を占める。昨年の凍結件数は前年の2・5倍に増えたといい、担当者は「関心は年々高まっている」と話す。卵子凍結費用を1人最大30万円助成する都の事業も反響が多く、23年度の申請件数は1467件と想定の7倍を超え、24年度は2000件の申請を見込んでいる。

◆男性の育休妨げ

 婚活のマッチングアプリの開発、第2子以降の保育料無償化、18歳以下に月5000円を支給する「 018 ゼロイチハチサポート」――。都は結婚から出産、子育てまで切れ目のない少子化対策を打ち出してきた。

 それだけに、今月5日、1人の女性が生涯に産む子供の数を示す「合計特殊出生率」が23年に東京都で「0・99」になったと厚生労働省が発表した際は、都庁に衝撃が走った。人口の維持に必要な出生率は2・07。地方から人の流入が多い東京都でも、30年をピークに人口が減少に転じるとされる。ある都幹部は「地道に対策をとるほかない」と唇をかむ。

 都が23年に行ったアンケートでは、未婚の18〜29歳の7割が「結婚の意思がある」と答えた。しかし現実は、平均初婚年齢が男性32・3歳、女性30・7歳、50歳までに一度も結婚しない人の割合を表した「生涯未婚率」が男性32・15%、女性23・79%といずれも全国で最も高い。

 東京で晩婚化が進む背景には、暮らしや子育てにかかるコストの高さがある。

 総務省によると、都内の子育て世帯の平均家賃は11・3万円で、全国平均の1・6倍。東京23区の教育費は月約2万4000円と全国平均の2・4倍に達する。

 高い生活コストは男性の育児休業の取得をも妨げる。千代田区の給食会社「メリックス」は、育休取得で給与が3〜4割減ることを懸念し、育休を取る男性従業員はほぼいないという。大高絵梨社長は「中小企業に対する賃上げ支援につながるような包括的な対策をとってほしい」と訴える。

◆「日本全体のカギ」

 民間有識者らでつくる「人口戦略会議」は4月、子供の出生数が非常に少なく、人口の維持を他の地域からの流入に頼る25自治体を、周囲のものを吸い込む宇宙のブラックホールに例えて「ブラックホール型」と分類した。うち都内の自治体が17と半数以上を占めた。

 23年の都の人口移動をみると、転入者が転出者を上回る「転入超過」が5万8489人。年代別では、20歳代が8万2479人の転入超過だった一方、30歳代以上の各年代は全て転出超過だった。地方から若者が大量に流入しても、東京で結婚・育児しづらいことが少子化に拍車をかけている構図が浮かぶ。

 「経済的な理由で結婚や出産を諦めることのない社会を作らなければ、根本的な解決にならない。東京の対策が日本全体の少子化問題のカギを握る」。子育て政策に詳しい日本総合研究所の池本美香・上席主任研究員は、そう強調する。(水戸部絵美)

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