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臓器移植断念 病院の事情で機会逃さぬよう

読売新聞 / 2024年6月26日 5時0分

 脳死と判定された人の臓器を別の患者に移植する手術が、病院側の体制の不備で実施できない例が相次いでいる。病院の事情で機会を逃す患者がいる現状は改める必要がある。

 日本移植学会の調査によると、移植手術の実績が上位の東京大、京都大、東北大の3大学病院で、昨年1年間に手術の断念例が60件以上あった。集中治療室(ICU)の病床や人員の不足が理由だ。

 日本は脳死ドナー(提供者)が他国に比べ著しく少ない。そのため、外国で移植を受けようとする患者が後を絶たず、海外での臓器移植を巡って仲介者が逮捕される事件も起きている。

 一方で、この事件を契機に臓器移植への関心が高まり、昨年は脳死での臓器提供が過去最多の132件に上った。すると、今度は移植手術をする病院の体制が追いつかないという問題が浮上した。

 3病院以外にも同じような状況の病院があるのではないか。国は実態把握を急がねばならない。移植を担う病院の体制が不十分であるなら、拡充を検討すべきだ。

 ドナーの臓器は、日本臓器移植ネットワークが、患者の重症度などを考慮して提供の順位を決める。連絡を受けた病院側がすぐに移植手術をできない場合は、別の病院で移植の機会を待つ次の順位の患者に対象が移る。

 患者の病状が理由で手術できないならやむを得ないが、病床や人員の不足で、より切実な状態にある患者への移植が見送られるのでは患者も割り切れないだろう。

 患者が機会を逃さずに済むような仕組みも大切だ。

 病院の事情で臓器提供を受けられない事態を想定し、患者があらかじめ移植を受ける病院を複数選んでおけるようにできないか。

 あるいは、複数の病院が連携し、人手が足りない時に応援のスタッフを派遣し合えるようにすることも一案だろう。

 主要な病院で移植断念が相次ぐ一因には、実績のある病院に患者が集中しやすいという事情もある。移植に関する情報が乏しいため、患者が手術件数の多い病院を登録先に選ぶ傾向があるためだともいわれている。

 国は移植を行う病院別に、待機している患者数や移植後の生存率などのデータを公開する方針だという。治療成績に遜色がなければ、患者の選択が分散し、今より集中が緩和される可能性がある。

 医療側と患者との情報共有を進め、公正で信頼性の高い移植医療の体制づくりにつなげたい。

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