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新紙幣発行まで1週間、券売機更新に「時間もお金も取られる」と悲鳴…完全キャッシュレス移行の店も

読売新聞 / 2024年6月26日 13時40分

 7月3日に発行される新紙幣を巡り、飲食店や鉄道などの事業者が対応に追われている。物価高騰で苦しむ中小企業からは券売機の改修や交換といった新たな負担に悲鳴が上がる。キャッシュレス決済が広がる中、新紙幣の対応だけでなく現金決済自体をやめる店舗も出ている。(田中浩司)

1台20万円

 「低価格帯で商売しているだけにたまらないですよ」。福岡県内を中心に十数店のラーメン店を展開する会社で営業責任者を務める60歳代男性は、ため息をついた。計25台ある券売機は新紙幣に対応するためには改修が必要で、費用は1台20万円。原材料費や光熱費の高騰分を転嫁させずに乗り切ろうとする中、新たな負担が重くのしかかる。

 新500円硬貨、インボイス(適格請求書)の導入……。国の施策に対応するため、設備投資などを余儀なくされてきた。券売機改修は8月頃を見込んでいたが、メーカー側から「2、3か月遅れる」との連絡があった。「対応に時間もお金も取られる」といら立ちを隠せない。

 九州の飲食店などで取り扱う券売機の販売やメンテナンスを行う会社は「駆け込み需要は想像以上。資材不足に人員不足も重なり、納期が遅れている」と話した。

 福岡市交通局は2年ほど前から券売機や精算機の更新を見送り、メンテナンスで寿命を延ばし、5月以降、新紙幣対応の計91台を導入。更新時期を迎えていない他の計110台は紙幣を読み取るセンサー部分の交換で対応するという。市の担当者は「更新を先送りにし、経費が抑えられた」としている。

現金とキャッシュレス、比率逆転の可能性

 国内のキャッシュレス決済の比率は2010年の13%から23年は39%と大きく伸びており、経済産業省も将来的には世界最高水準の80%を目指すとしている。こうした中、新紙幣発行を機に完全キャッシュレス化に踏み切るケースもある。

 人気ラーメン店「銀座  かがり」などを展開するアデッソ(東京)は新紙幣発行に伴い一部店舗で現金を扱わず、キャッシュレス決済一本にした。担当者は「売り上げの集計業務が簡略化され、集計ミスや盗難などの心配もなくなり、管理しやすくなった」と話す。

 明治大の飯田泰之教授(経済政策)は「QRコード決済の導入にかかる経費が安価になっており、今回の新紙幣発行を機に決済手段の基本が、現金からキャッシュレスに逆転する可能性がある」と指摘する。

50億枚で流通準備

 今回発行される新紙幣は、1万円札、5千円札、千円札。図柄は、1万円札が「近代日本経済の父」と呼ばれる渋沢栄一、5千円札は津田塾大創設者の津田梅子、千円札は熊本県小国町出身の細菌学者・北里柴三郎だ。

 新紙幣は今年3月までで45億3000万枚が刷り上がった。その後も印刷は続いており、発行開始前の枚数は前回の刷新時(2004年)の約50億枚とほぼ同じ規模になるという。世の中に出回っている紙幣は2010年の77兆円に対し、昨年は124兆円に増えている。日本銀行は「現金の需要は根強く、誰でも、いつでも、どこでも安心して使える現金は、引き続き決済手段として大きな役割を果たすと考えられる」としている。

北里柴三郎の出身地「商機」に沸く

 北里柴三郎の出身地・熊本県小国町では、新紙幣発行を前に盛り上がりをみせている。

 同町の酒蔵「河津酒造」は商機につなげようと、日本酒「北里柴三郎」を販売。発行が決まった2019年に製造を始め、今春からは新千円札を模したラベルを付けて売り出した。720ミリ・リットルで、価格は新紙幣にちなんで1000円(税抜き)。同酒造は「これを機に柴三郎のことはもちろん、日本酒も好きになってほしい」と語った。

 発行日が近づくにつれて同町の「北里柴三郎記念館」の来場者も増加。記念館によると、1〜5月の来館者は計1万9906人で、前年同期比2・5倍に上る。

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