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水素・アンモニア利用拡大へ、大手商社が拠点整備を本格化…「輸入頼み」経済安保上の課題残る

読売新聞 / 2024年6月27日 7時25分

 燃やしても二酸化炭素(CO2)が出ない水素・アンモニアの利用拡大に向け、大手商社が供給拠点の整備を本格化させている。政府は今夏にも新たな補助金の公募を始め、産業界の脱炭素化を後押しする。ただ、水素の大半を輸入に頼っているのが現状で、経済安全保障上の課題は残る。(金井智彦)

全国で

 三菱商事は今年に入り、拠点整備に向けた動きを加速させている。出光興産などと組んで米国からアンモニアを輸入する計画を進めており、愛媛県今治市の子会社「 波方 なみかたターミナル」のガス貯蔵施設を輸入拠点とする。マツダの工場や化学工場など、中国・四国地方の工業地帯へ年間100万トン超の供給を目指す。

 担当者は「周辺地域の取引先のエネルギーをアンモニアに転換し、小規模な事業者にもすそ野を広げていきたい」と話す。

 伊藤忠商事は6月、九州電力などと共同で、北九州市で水素・アンモニアの輸入、供給拠点の整備に向けた調査を始めた。海外から輸入したアンモニアを火力発電用の燃料として供給するほか、水素を周辺の工場に供給することも検討している。

 三井物産は、化学大手や電力大手と協力し、北海道苫小牧市などで発電所や化学工場に供給する拠点をつくる計画。5月にはアラブ首長国連邦(UAE)でアンモニア製造プラントの建設を開始した。2027年に製造を始め、日本にも供給する。

 大手商社がこうした事業を進めるのは、産業用に利用する水素やアンモニアは天然ガスなどの化石燃料から生成するケースが多く、資源の権益を持っているからだ。脱炭素に向けた需要を見据え、供給網の中核を担おうとしている。

15年3兆円

 水素やアンモニアは工場の熱源や、火力発電所での燃料などに使われる。アンモニアは輸送しやすく、分解すれば水素を取り出すことができる。政府は50年までに温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」とする目標を掲げており、その活用に期待が寄せられている。

 ただ、実質ゼロの達成に向け、水素の供給量を現在の年200万トンから50年には10倍の2000万トンまで増やす必要があるとされ、道のりは長い。天然ガスなどの化石燃料に比べて調達費用が大幅に高いことも課題だ。このため、政府は今夏にも、化石燃料との価格差を埋める補助金の拠出に向け、希望する事業者の公募を始める。15年間で計3兆円の支援を検討している。商社関係者は「民間だけでは整備費用は到底、賄えない。事業化には国の支援が欠かせない」と話す。

需要創出

 水素の製造では、国内で水を電気分解してつくる方法も検討されているが、大量の電力が必要で、現状では輸入に頼らざるを得ない。既存の化石燃料と同様に、輸入に依存する構造となる。「水素社会が実現してもエネルギー安全保障上の課題は残る」(商社幹部)との指摘もある。

 需要の創出も不可欠となる。製鉄業界は石炭の代わりに水素を使って鉄鉱石から酸素を取り除く「水素還元製鉄」を目指すが、技術面でのハードルは高い。日本政策投資銀行の梅津 ひろき氏は「価格差や拠点整備の補助だけでなく、水素を使う事業者側にも継続的な政府支援が必要だ」と指摘している。

製造現場、徐々に動き…化粧品・コーヒー・ウイスキー

 国内の製造現場では、水素を活用する動きが徐々に広がっている。

 コーセーが2026年に稼働する山梨県南アルプス市の化粧品製造工場では、熱源の燃料として水素を利用する予定だ。原料となる水や油を混ぜ合わせる時に加熱する必要があり、現在の工場では都市ガスを使っていた。

 太陽光発電で水を分解して水素を発生させる仕組みで、小林一俊社長は「水素の利活用拡大などを通じ、社会課題の解決につなげたい」と話す。

 UCCも静岡県富士市のコーヒー製造工場で、水素で豆を 焙煎 ばいせんする機械を導入する。

 サントリーホールディングスは、ウイスキーを蒸留する工程での活用を目指している。

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